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住宅リフォーム番組「大改造!劇的ビフォーアフター」で、工事費の未払いがあるとして裁判となったというニュースがあった。

リフォーム番組、追加工事の支払いを求め提訴 読売新聞 2016/7/27


住宅のリフォームや注文住宅などの契約においては、まずは設計を行い、その設計に従って建築工事を行うという流れになるので、今回のようなトラブルは起こりえないようにも思われがちだ。

しかし、工事の内容が元々の契約の中に含まれていたのか、追加工事として別に費用が発生するのかということでトラブルになるケースはとても多い。建築にまつわる典型的なトラブルの一つだ。

■どのようにしてトラブルとなるか
通常、設計を行う際は、依頼人からの要望を聴きながら、それを具体化する方法を設計に反映させていき、それをもとに依頼人との打ち合わせするという作業を繰り返す。

打ち合わせの中では、細かな点で言えば壁紙の色や仕様に至るまで、サンプルなどをもとに一つずつ決定をしていくのだが、あくまでサンプルによるイメージでしかないので、実際に完成した段階で見るのと想像したものが大きく異なって見えることも少なくない。

こうなると、依頼人としてはちゃんとイメージを伝えていたのにそれを実現できていないと感じるケースも出てくる。

依頼人はイメージの実現をするために工事個所をやり直して欲しい、それは元々の注文の範囲だと考えるわけだが、施工をした業者としてはあくまで設計の通り実現しているのでやり直すのであれば費用は別にかかると考える。こうして意見の食い違いからトラブルとなるのだ。

■原因は確認不足?
「大改造!劇的ビフォーアフター」とはテレビ朝日の人気番組で、「こんな生活を長年続けてきたのか…」と驚くような問題を抱えた住宅を設計の妙で劇的に解決するというものだ。

番組の最後には、新しくなった住宅の変貌ぶりに驚嘆する依頼人が涙するシーンが出てくることもあってとても感動的だ。そのような仕掛けがあるので、当然、どのような仕上がりになるのかは完成してからお楽しみということになっている。

そのような意味で通常のリフォーム工事とは大きく異なるプロセスをたどる。

注文者としては不便に感じている点や困っている点を設計者である匠に伝えるだけで、最後まで完成形を知ることはできないので、あとは匠の手腕に任せるしかない。

注文者にとっては著名な設計者を自己負担なしで利用できるというメリットはあるが、高額な工事費は自己負担であるわけだから、仕上がりはお任せという、ある意味ではリスクのある契約となっている。

ニュースでは施工業者が「耐震補強や床暖房などの追加工事を指示された」とある。今回裁判となったケースがどのような経緯で意見の食い違いが出たかはニュースでは明らかとされていない。

設計が終わり、ある程度施工が進んだ段階で注文者から追加で要望がでたということかもしれないし、一方、もともとの依頼主の要望がうまく設計に反映されていなかったということも考えられる。

耐震や床暖房といった、一見、テレビでの見た目では変化が分かりにくい部分であっても、実際にそこで生活をする依頼人としては重要視していたということは十分ありえることだ。

もともと依頼主としては建築のプロではない。どのような工事を希望するか、要望をうまく伝えることができないということもあるので、設計の内容については慎重な確認が必要だ。番組の企画のように完成形が見えない状況では、よりいっそう慎重になる必要がある。

■依頼をする側もある程度の情報収集は必要
今回のケースは、テレビ番組の企画がら、完成形が最後までわからないという特殊な形態であったが、確認を慎重に進める必要があるということで言えば、一般的なリフォームや注文住宅などのケースでも言えることだ。

建築に関する契約は日頃体験することが滅多にない契約であるからこそ、依頼をする側としてもある程度の知識を持って業者選びや契約に入ることが望ましい。

日頃、住宅にまつわる相談を受けることがあるが、注文住宅のケースで、設計段階で業者と折り合いが悪く契約を断念したら、具体的な工事に入っているわけでもないのに工事代金を含んだ違約金を請求されたというトラブルの相談を受けたことがあった。建築に関しては施工内容だけでなく契約内容にもしっかり気を配っておく必要がある。

マイホームでのよりよい生活のために行う工事だ。トラブルにまきこまれ、残念な結果となることは避けたいところだ。できるだけリスクの芽を摘んでおくためには、まずは自分でしっかりとした情報収集をして慎重に契約をするところから始めなければならない。

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及川修平 司法書士

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