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8月14日、人気アイドルグループのSMAPが今年12月をもって解散する、と所属のジャニーズ事務所が発表しました。1月の独立騒動後、いったんは沈静化したかに見えた問題はここにきて急展開し、おそらくファンも本人たちも望まなかった最悪の結末を迎えてしまいました。

報道によると、一連の混乱の原因はジャニーズ事務所の副社長母娘と、SMAPを育てたマネージャー・飯島三智氏との勢力争いにあるとのことです。実際、1月には事務所がFAXの中で「SMAPの一部メンバーの独立問題と担当マネージャーの取締役辞任等に関する報道がなされました。たしかに、この件について協議・交渉がなされている事実は存します」とコメントし、独立問題と飯島氏の関連を暗に認めています。

私はこれを聞いたとき、「それなら解決は簡単だ」と思いました。ジャニーズ事務所が出資してSMAPのマネジメント専門の子会社を作り、その社長に飯島氏を据えるのです。

このプランが検討されたかどうかは確認のしようもありません。分かることは、結果としてメンバー5人は所属を変えないままグループだけ解散、という道を選んだことです。そうなってしまった以上、何を言っても詮無いことかもしれませんが、組織論のひとつの材料として、今回は幻の“SMAP子会社化”スキームを考えてみます。

■子会社化のメリット
飯島氏を社長にしてSMAPを子会社化するメリットを、各ステークホルダー別にまとめると以下のようになります。

・企業としてのジャニーズ事務所のメリット:
 100億円~200億円ともいわれるSMAPの売上高をグループ内に留めることができる。
・創業家一族のメリット:
 飯島氏を子会社に出すことで、グループ内の序列を明確にできる。
・飯島氏のメリット:
 ほぼ独立に近い形で事業ができる。また、SMAPのプロデュースやマネジメントに専念できる。
・SMAPメンバーのメリット:
 「SMAP」というブランドの価値を棄損せずに芸能活動を継続できる。
・ファンのメリット
 引き続きSMAPのパフォーマンスを楽しむことができる。

新会社はマネジメント専門会社ですので、基本的に設備投資は不要です。よって、親会社のジャニーズ事務所の出資額は少額で良いでしょう。当面の運転資金として1,000万円ほどあれば、数カ月もたたないうちに国民的スターが巨額のキャッシュを稼ぎ出してくれます。

ちなみに、株主構成は100%出資の完全子会社でも良いですが、一部の株をテレビ局や広告代理店などの関係先に持ってもらうのも手かもしれません。これは、飯島氏が外部スポンサーの協力を得て再び独立を模索することのないよう、業界全体で牽制機能を働かせるための措置です。

■新会社の命脈は「共通目的」
しかしながら、このスキームが成功するか否かのカギは、上述のようなテクニカルなことではありません。親会社のジャニーズ事務所と、飯島氏、SMAPのメンバー、および新会社に集まる人々が共通の目的を持てるかどうかが決定的に重要なことです。

一般の企業でも、新規事業を行う際、子会社を作って本体とは切り離す形で展開するケースがよくあります。その理由は、新しい市場開拓にこれまでの企業風土が邪魔になるとか、新技術の応用に高度な専門性が必要になる、といったことです。ここをきちんと理解して、子会社を作った目的や使命を社内で共有しておかないと、「子会社に飛ばされた」「事業の本流から外された」という感情面の軋轢につながるおそれがあります。

仮に、SMAPをマネジメントする専門会社ができたとして、その会社の目的、使命は何でしょうか。私は、「SMAPを生涯現役のアイドルにする」ことだと思います。これこそが、従来の常識を打ち破って40歳を過ぎた今でもアイドルとして活躍するという、芸能界におけるイノベーションを成し遂げた彼らにふさわしい目標ではないでしょうか。

これまでまだ誰もやったことのないその目標を達成するため、芸能界にさらなるイノベーションを起こすため、新会社に集まる人材には自由な発想が求められる。だから組織は専門化する必要がある。子会社化はその環境を整えるために不可欠な要素だ…。このストーリーをいかに関係者が共有し、貢献意欲を持てるか。ここが一番大事なところです。

■しかし、もう時計の針は戻せない…
…と、私がいかに力説したところで、解散が決定した今となっては何を言っても虚しさが募るだけです。

今回の騒動が持ち上がってから、一番苦悩したのは、当然ながら当事者であるSMAPの5人でしょう。彼らが長い時間をかけて出した解散という結論を、今は尊重して静かに受け入れ、彼らの今後の活躍を祈りたいと思います。

【参考記事】
■しまむら株が10年ぶりの高値をつけた本当の理由 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48990151-20160702.html
■せたが屋買収に見る、吉野家の長期戦略 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49065861-20160712.html
■船井電機は、本当はVHSをやめたくなかった? (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49109674-20160718.html
■シン・ゴジラでビルを破壊された三菱地所のBCPを勝手に考える。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49222132-20160802.html
■『さんまのまんま』終了で考える、テレビ局の苦境と明石家さんまのこれから。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49277606-20160810.html

多田稔 中小企業診断士 多田稔中小企業診断士事務所代表


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