第21弾写真

TBS番組「好きか嫌いか言う時間」が平成28年8月15日に放送されました。この番組は、当事者の前でハッキリものを言う辛口トーク番組で、出演者は坂上忍さんや吉田敬さん(ブラックマヨネーズ)など論客芸能人です。今回のテーマは現役介護福祉士に介護の仕事について激白してもらうというものでしたが、はっとさせられることばかりでした。

■世間一般の介護の仕事のイメージ
ご家族に介護が必要な方がいらっしゃる場合や介護の仕事に関わっている方を除いて、世間一般では、介護の仕事はよくわからないブラックボックスだと思います。介護の仕事とは何?と問われて、即答できる人は多くはないはずです。

番組ではブラックマヨネーズの吉田さんが介護の仕事のイメージについて、「お風呂に入れたり、パンツを替えたりとか」と回答されました。突然の振りであったにも関わらず、即答されたので感心いたしました。とは言え、テレビを見ている全国の介護福祉士からは突っ込みを受けていたかもしれません。

■はっとさせられた現役介護福祉士のコメント(1)
吉田さんの回答を受けて、出演者の一人である介護福祉士の中浜嵩之さんから、はっとさせられたコメントがありました。介護業界で働く一人ひとりの気持ちを代弁したと思えるほど明快で、そして、力強い意志が込められた内容でした。

その内容は、「(お風呂に入れたり、パンツを替えたりとか)、そこが介護の一般的なイメージですが、あくまでそれは生活の一部です。介護の仕事は、自分の人生を最後まで自分らしく生きる為に何をするべきか、どうやって死んでいきたいか、どういう姿で最後を迎えたいか、ご本人の思いとご家族の思いを実現するために、お風呂のお手伝いやリハビリのお手伝いをするというものです。介護や福祉の仕事をしている方々は、一人ひとりの思いが実現できるようにとモチベーションを高くして働いています。」というものでした。

テレビで見る限り、テレビスタジオ内の誰もがはっとさせられた印象を受けました。出演者の一人のりゅうちぇるさんは、「知らなかった凄い。」と発言されています。

テレビ報道では、介護の仕事はきつい、汚い、給料が安いなどマイナスのイメージで伝えられます。しかし、同じテレビでもこうしたケアスタッフの思いを伝えてくれる番組であれば、介護の仕事のイメージは好転するかもしれません。現場で働くケアスタッフは背中を押され、翌日はリフレッシュした気持ちで仕事ができたのではないでしょうか。

■はっとさせられた現役介護福祉士のコメント(2)
出演者の中浜嵩之さんは介護の仕事がネガティブに報道されていることに強い危機感を持っており、「現場で働いている人が感じていることを世の中に出していかないといけない。」とコメントされています。その顔には強い決意がにじみ出ていました。また、同じく出演者である介護福祉士の杉本浩司さんは、「介護職の存在自体が憧れる存在にならないと人は入ってこない。」と断言されています。

今回の番組ではたった5人の現役介護福祉士の登場でしたが、それでも、介護の現場はこんなにも志の高い、熱い思いを持ったケアスタッフに支えられていると改めて気付かされました。

■本当に怖いネガティブ報道
介護保険が始まってから5~6年間、介護の仕事はとてもポジティブに報道されていたと思います。そのおかげか就業希望者が本当に多い時代でした。私がいた事業所でもケアスタッフ1人の求人に対して10人程度の応募はあったように記憶しています。

介護業界は人も事業所も増え、まさに右肩上がりの業界でした。しかし、人や事業所が増えれば当然かもしれませんが、介護現場の事件や事故の報道が目立つようになりました。そして、株式会社コムスンの介護報酬不正請求事件が起きたことで介護業界のイメージが一気にネガティブの方向へ変わったのかもしれません。

福祉学校への進学希望者は減り、就職先の候補としても外されるようになるのは当然の結果です。介護現場の人手不足は深刻な問題となっていきました。あまり考えたくはありませんが、誰でもいいので来てくれれば採用するという介護事業所も実際あったと思います。現場を無視するこのような採用は、モチベーションの高いケアスタッフのやる気をなくすだけではなく疲弊させます。疲弊は離職へとつながり、人手不足がますます人手不足に陥ります。

■中浜さんに共感!ポジティブな情報を現場から発信
人手不足の解決策として、ロボットの導入が検討されています。ロボットに置き換わる業務は確かにあるかもしれません。それでもマンパワーは介護の仕事の大部分を担い続けます。介護現場で働きたいと思う人に集まってもらうためにもポジティブなイメージは必要不可欠です。

しかし、マスコミに対して、ポジティブな報道が増えてほしいと願っていても何も変わりません。それでしたら、正しい情報を知っている現場から発信するほかありません。変えようという強い気持ちと正しい情報発信の積み重ねで地域の人も気づく日がやってくるはずです。その日まで発信あるのみです。

【参考記事】
■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48977075-20160701.html
■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/35018841-20131120.html
■よくある選挙公約「介護施設を増やします」について真剣に考えてみた (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49098975-20160717.html
■介護が必要になった!どうする?(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49045000-20160709.html
■介護の問題を絶望にしない秘訣(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48944579-20160626.html

藤尾智之 税理士・介護福祉経営士

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