UPQ


8月9日、家電ベンチャーであるアップ・キュー(以下、UPQ)は、この日から受付を開始した折りたたみ式電動バイク「UPQ BIKE me01」専用の牛革製バッグ「UPQ BIKE me01純正 2WAYレザーバッグ」を同日より発売すると発表した。

UPQ BIKEのサドル軸に取り付けることでフレームバッグとして利用できるとともに、簡単に脱着できため、バイクから降りた後は、ショルダーバッグとしても使えるようになっている。

このバッグは、バングラデシュやネパールでバッグなどを生産し、日本・台湾・香港で販売を展開しているファッション関連ブランド、株式会社マザーハウスとの共同開発によって生まれてきたものだ。

両社のコラボレーションを記念しマザーハウス本店で行われたイベント(マザーハウスカレッジ特別編)に、UPQの代表取締役社長である中澤優子さんが登壇し、講演と、マザーハウス副社長の山崎大祐氏との対談が行われた。

幸運にもその場に居合わせることができ、お話を伺うことができた。そこで、1年で急成長できた秘訣をいくつか感じることができた。

■冷静な判断力
「まずは法規制から調べます」

これはホスト役の山崎さんからの質問、
「製品を開発するとき、なにから始めますか?」
への答えである。

ベンチャーを立ち上げる人、デザイン志向の人は、どうしてもプロダクト中心にものを考えがちだ。それが悪いわけではない。「こんな製品を作りたい」という想いがなければ、ベンチャーを立ち上げても失敗に終わるだろう。

だから中澤さんが、想いだけでなく冷静な判断力を持っていることには不思議ではない。持っていて当たり前なのだ。しかし、メディアに流布している中澤社長のイメージは、気合と根性と感性で突っ走っている家電ベンチャーのアイドル、である。そのイメージに引きずられていたせいか、やはい驚いてしまったのである。

完成した「UPQ BIKE me01」を見ると、そんなことを考えて開発したとは想像できない。折り畳みできて家の中に保管できるバイクという斬新なアイデア、いままでにないデザイン、などに目がいくでしょう。ですが「バイク」である以上、さまざまな法律が関連してくる。UPQの主軸商品であるスマートフォンも通信機器だから、関わってくる法律は多い。どうやっても法律に規制されてしまう場面が出てくるだろう。

こうした場合、その法規制の中でなんとか製品化することを考える。形にして、使ってもらって、体感してもらうことが先である。便利さや楽しさを多くの人が知れば、お客様の声によって法規制が緩和されていくと考えているようだった。

「規制緩和」を叫ぶこともできる。政治家なら票になるかもしれない。評論家ならメディアからお声がかかる機会が増えるかもしれない。しかし、ビジネスの現場ではそんなことを言っても一ミリも前には進まない。まず、製品として世に送り出してマーケットに尋ねる。地に足を着けた考え方をする方だ、巷間言われているイメージとは違うと驚いたのである。

その落ち着き、冷静さは、開発についての考え方にも現れている。

「スペック競争はしない」との考えは、一貫していた。カシオで携帯電話の開発をされていた時代、こうした競争に違和感を覚えていたそうだ。次々と製品を投入していかなくてはいけないので、本当に必要かどうかわからないようなスペックにこだわってしまう。0.1ミリ薄くすることがお客様にどんな意味があるのか。そして、そのために価格も高くなってしまい、結果、売り上げも下がってしまう。型落ちになってしまう製品の中にも、良いものがたくさんある。なぜそこまで無理をしてスペックを競い、新製品を出し続けなくてはいけないのか。

こうした疑問から、自分が開発する製品はお客様目線を意識した。「スペック」「価格」「デザイン」の間でバランスを取り、お客様に価値を感じてもらえる製品にする。プラスそこに「遊び心」を入れて楽しんでもらえたり、驚いてもらえたりする製品を送り出していきたい、と考えているそうだ。

■現場主義
こうした製品を生み出すために、徹底的に現場にこだわっている。主に中国の工場で生産しているが、何かあればすぐに現地に飛び、ミーティングを繰り返す。

「中国製か」と思う人がいるかもしれない。しかし、それは損をする偏見だと私は思っている。製造業が中国から東南アジアにシフトしつつある現在、危機感を持っている中国人はたくさんいる。そうした人たちに、UPQが求める品質を繰り返し伝え、理解してもらってから製造に入るようにしている。

製造してみると、望んでいた品質に届かない場合もある。そのときは、ダメなものはダメと伝えて作り直してもらう。それを繰り返すうちに 「この会社のクオリティはこのレベル」と理解して、製造してくれるようになるということだ。

むろん全部の中国人がそうできるわけではない。だから理解してもらえない人や工場とは手を組まない。これははっきり決めている。ただどこの国にも、ちゃんとやる人もいれば、できない人もいる。それは日本も同じだ。理解しあえる人と、という考えに国境はないのだろう。

その品質レベルを理解してもらうためにも、とにかく現場に足を運ぶ。中澤さんは、過去の経験から、「中国で失敗して撤退していたった企業は、全然現場に来ていない」と感じていた。メールで指示を出し、うまくいかないと、「やっぱり中国はダメだ」と他責にしてしまう企業が多いのだ。

だからこそ、自らはすぐに現場に足を運ぶ。すべては現場から始まるのだ。本来の日本の強さは、こうした現場主義にあったのではないだろうか。

■ものづくりへの想い
こうした冷静で合理的な思考や行動を支えているのは、熱い想いである。中澤さんの場合それは、前職での経験によって生まれたものだろう。

カシオで携帯電話の開発に関わり、ヒット商品も世に送り出した。しかし、激しい開発競争の中、環境は厳しくなり、カシオも携帯電話事業から撤退する。所属していた部署は解散し、ともに開発に邁進していたチームメンバーはバラバラになってしまった。

先輩たちからモノづくりの素晴らしさを教えてもらって育ってきた。突然のチーム消滅で、そんな先輩たちの多くも、好きだったモノづくりが続けられなくなってしまった。不本意な異動や退職を余儀なくされた人もいる。そんな中で自分ができることを模索し、試行錯誤した結果がUPQだった。

「女性たった一人でも、ベンチャーを立ち上げてモノづくりはしていくことができる。それを皆が知ってくれたら、モノづくりに従事している人たちの勇気にもなるし、次なるアクションのヒントになるはず」

ベンチャーといえば、IT、金融とのイメージが強くある。ものづくりは元手が必要であるがゆえに、チャレンジしにくい分野なのかもしれない。だが、中澤さんの姿を見て、勇気づけられる人もいるはずだ。そうしてものづくりベンチャーに挑んでいく人が増えていくことを願っている。

UPQは創立してまだ1年、これからいままで以上の困難が待ち受けているに違いない。だが、中澤さんはその困難をも軽やかに突破し、ものづくりベンチャーの先頭を走り続けるに違いない。

<参考記事>
■「変わっていく力」を小泉今日子さんに学ぶ~(書評)小泉今日子はなぜいつも旬なのか(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49045435-20160711.html
■「町工場の星」に学ぶ 人の育て方、リーダーのあり方~【書評】ザ・町工場―「女将」がつくる最強の職人集団(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48530974-20160506.html 
■「トヨタ」から何を学べばいいのか?~【書評】どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力/原 マサヒコ(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47148390-20151211.html
■「反対するなら対案を出せ」は正論か? (中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/34779158-20131112.html
■【セミナー】マザーハウスカレッジ~創業1年で広がる家電ベンチャーUPQ。モノづくりにかける情熱と思い
http://blog.livedoor.jp/nakahisashi/archives/1060172855.html

中郡久雄 中小企業診断士


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