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「ポケモン図鑑を完成させるまでは止められないな。」

公開当初の異様な盛り上がりが収まりつつある中、そんなことを考えながら、昨夜もポケモンGOをプレイしていました。

■終わりが見えない仕事はつらい
ポッポやコラッタのようなどこにでもいるポケモンを捕まえながらのんびりゲームを楽しめる人や、他プレイヤーとのバトルを中心にやっている人は別ですが、筆者がそうであるように、おそらく多くのプレイヤーにとっては「ポケモン図鑑の完成」という目標が、ポケモンGOを続ける大きなモチベーションとなっています。

流行に乗ってポケモンGOを始めたものの早々に止めてしまった人たちの中には、思うようにポケモンを集められないことに嫌気がさしたという方も少なからずいることでしょう。ポケモンを捕まえることを義務や作業のように感じてしまうと、捕まえても捕まえても終わりが見えない状況はまさに苦行です。

では、実際のところ、どのくらいポケモンを捕まえれば全種類集められるのでしょうか? ポケモンGOプレイヤーにとって重要なこの関心事を、証券分析に用いるシミュレーションの手法によって検討してみましょう。

■1万人分のシミュレーション結果
シミュレーションでは、仮想のプレイヤー1万人がポケモン図鑑を完成させるまでに、各々何匹のポケモンを捕まえたのかを計算しました。各ポケモンとの遭遇確率は、ポケモンGOに関する英語ニュースサイト「Pokemon GO Hub」の8/26付記事に掲載されたデータに独自の補正を加えた確率分布に基づいています。
(但し、「進化」による新たなポケモンの獲得は反映していますが、個人差が大きい「卵の孵化」によってポケモンが生まれる効果は反映させていません。最近リリースされた「相棒」機能についても同様です。)

シミュレーション結果は、図の通り。最頻値周辺(=捕獲数3万5千匹前後の山の高い部分)に集中する一方で、捕獲数が多くなる右方向に太く長いテールを持つ、いわゆる「ファットテール」と呼ばれる分布です。これは、プレイヤーの大部分が比較的リーズナブルな捕獲数で図鑑を完成させる一方、一部の人は気が遠くなるような数のポケモンを捕えなければならないことを意味しています。
ポケモン分布3

仮想の1万人の中で、最少捕獲数でポケモン図鑑を完成させた最も幸運なプレイヤーが捕えたポケモンの数は8,978匹でした。1万匹に満たない数のポケモンで図鑑をコンプリートした唯一のプレイヤーです。逆に、最も手間がかかってしまったケースでは、実に38万匹近くのポケモンを捕まえてようやく図鑑を完成させることができました。

ダメなときが物凄くダメで、且つ、そうなる確率が意外に高いのが、リーマンショックなどの金融危機でおなじみ「ファットテール」の特徴です。証券投資の世界では、ファットテールのハイリスクを理解して織り込むことがリスク管理の観点から重要なのですが、ポケモンGOの場合はどうなのでしょうか。

シミュレーションの結果をもう少し詳しく見ておきたいと思います。

1万人の仮想プレイヤーのちょうど真ん中、図鑑完成時の総捕獲数の中央値は38,343匹でした。3万8千匹ほど捕まえれば、2人に1人はポケモン図鑑を完成できるということです。また、概ね6万5千匹捕まえることで、5人中4人が図鑑を完成できます。その一方、ポケモンを10万匹捕まえても終われないプレイヤーも全体の7%程度おり、100人に1人は、ポケモンを16万匹以上捕まえても全種類をコンプリートできないのです。

■図鑑完成には、どのくらいの時間がかかるのか
「ポケモンを○万匹捕まえる」という表現では、それがどのくらいの労力なのか、ややイメージしにくいかもしれません。そこで、上にあげた主な数字を、大雑把に時間換算してみることにします。採用する換算レートは、

1時間 = ポケモン20匹

です。時間あたり何匹のポケモンを捕まえられるかは、アイテムの利用や特定の場所、移動方法等、様々な条件に影響されるのですが、ここは筆者の経験から、だいたい平均するとこのくらいかな、というところで決めました。人によって大きく異なるところではあります。

まず、最も捕獲数が少ないラッキーなケースで、約450時間。日本生産性本部による「日本の生産性の動向 2015年版」によれば、直近の一般労働者(フルタイムの労働者)の年間労働時間が2026.5時間ですので、この最も恵まれたケースでも、ポケモン図鑑完成に年間労働時間の1/5以上を費やしていることになります。また、最もアンラッキーな38万匹捕獲した人の場合は、年間労働時間の実に9倍もの時間を費やしたことになります。

これが、一万人のちょうど真ん中、中央値である3万8千匹余りを捕まえたごく普通のプレイヤーになると、およそ1,920時間です。あまり残業をしない人の一年間の総労働時間くらいでしょうか。ポケモン図鑑の完成を目指すというのは、知らない間に一年がかりのプロジェクトにフルタイムで参加するようなものなのかもしれません。

また、中央値ではなく平均で見ると、総捕獲数は約4万8千匹となり、時間に換算すると2,400時間。平均的な労働時間の約1.2倍です。かなりの頑張り屋さんにも思えますが、実はプレイヤー全体の3分の1は、これよりも重労働なのです。

■ポケモン図鑑完成まで頑張るべきか?
このように、ポケモンをひたすら捕まえ続けてポケモン図鑑を完成させるというのは、生半なことではありません。年間労働時間くらいでコンプリートできればマシなほうで、運が悪いと何年も働くぐらいの労力が必要というのは、目標への思いを挫くには十分すぎるレベルです。また、ポケモンの卵を孵化させることでポケモン集めを効率化できるようになってはいるものの、孵化を効果的に行うには孵化器をたくさん購入する必要がありますので、「そこまでしなくても…」と考える人も多いでしょう。

当初の爆発的な人気から一転、アクティブユーザーが減り続けている最近のトレンドは、このゲームを何となく続けているような人たちが離脱したというだけではなく、「ポケモン図鑑の完成」のようなはっきりとした目標を持った人たちが、「さすがにもう頑張れない」と、堪えきれず徐々に脱落していく状況を反映しているのでしょう。

結局のところ、ポケモンGOを本当に長く続けられる人というのは、目標に固執せずに、のんびり楽しめる人だけなのかもしれません。

注: ポケモン図鑑のうち、未だリリースされていない一部のポケモンについては考慮していない。

【参考記事】
■日本が先進国で最下級だという「幸福度」ランクについて、みんなが勘違いしていること。 (本田康博 証券アナリスト)
http://sharescafe.net/48183188-20160325.html
■日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。 (本田康博 証券アナリスト)
http://sharescafe.net/47352836-20151229.html
■報道の自由度ランキングは、どう偏っているのか。 (本田康博 証券アナリスト)
http://sharescafe.net/48670336-20160524.html
■映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。 (本田康博 証券アナリスト)
http://sharescafe.net/48046767-20160310.html
■日銀のマイナス金利政策は、大成功だが、大失敗だ。 (本田康博 証券アナリスト)
http://sharescafe.net/48977254-20160701.html

本田康博 証券アナリスト・馬主


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