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最終回13%の視聴率で、有終の美を飾った「家売るオンナ」。

北川景子さんが演じる主人公の三軒家万智は、不動産売買のトップセールス。その決め台詞は、「私に売れない家はありません」。

売買の仲介業務を中心におこなう「テーコー不動産新宿営業所」の営業部管理職である三軒家の営業手法は、顧客の経済条件や性格などの属性と、顧客本人ですら気付いていない潜在ニーズを読み取り、最適な物件をピンポイントでマッチングするという高度なものだ。

三軒家のもとに家を求めて訪れる買い希望客は、ヒキコモリ息子を抱える初老の夫婦や、ゴミ屋敷に住む女と極度のミニマリストの男という組み合わせのカップルなど、家を探すには超高難度の状況にいる顧客が相次いで訪れる。

また売却の依頼を受ける家もそろって難易度が高く、狭小変形な間取りの家、殺人事件のあった家など、普通の不動産営業には忌避されるものばかりだが、三軒家チーフはそれらに最適な生活スタイルを顧客ごとに提案して、見事に売りさばく。

まさに彼女に売れない家はないと思われるが、実際の不動産流通業界は、顧客に合う合わない以前の重要な側面で、大きな変化の中にある。

■中古住宅の国内での流通事情と国の取り組み
国内の空き家問題は、人口減少や高齢化の進展等により管理されない空き家が増加していくにつれ、主に首都圏以外で今後ますます深刻化する。

具体的には、倒壊などの防災面、景観上の支障、ゴミなど衛生上の問題、防犯上の問題の発生などが危惧されている。

そこで国は、中古住宅の流通市場を活性化させるために、H28年3月に閣議決定された新たな住生活基本計画において、中古住宅流通の市場規模を、今後10年間で4兆円から8兆円に倍増させる目標を設定した。

今後は主に、インスペクション(建物状況調査)と瑕疵保険を活用して、中古住宅の資産としての品質確保が図られていく。

インスペクションとは、住生活基本計画において定められたガイドラインに基づいて、売り家の現況を把握する為に行なわれる調査のことで、①構造耐力上の安全性、②雨漏りの可能性、③設備配管の劣化、に関して、瑕疵(それらの不具合や欠陥)がないかを調べるものである。

■地方で古い家を買うリスク
「家売るオンナ」で三軒家万智が買い希望客に紹介した家は、主に都心の、どれも築年数の新しいものばかりで、耐震や雨漏り、あるいは給排水管や設備器機など、いわゆる住宅の性能に関しては心配のない物件がほとんどだと思われる。

そこで三軒家は、紹介の基準を生活スタイルの提案に収斂できたわけだが、地方で築年数が古い中古住宅を購入する者にとって重要な問題は、耐震や設備の老朽化など、そのほどんどが前述したような住宅の性能部分にある。

そのため、住生活基本計画の施策として概ね2年以内に施行される宅建業法の改正においては、不動産業者から売り希望客に対してはインスペクション業者のあっせんを説明し、買い希望客に対して中古住宅の重要事項説明をおこなう際にインスペクションに関する内容説明をすることが、義務化される。

買い希望客は、インスペクション結果の説明を聞くことで、建物の質を踏まえた購入判断が可能になるため、購入後に建物の不具合などによるトラブルを避けることが出来る。

■インスペクションでトラブルの不安は消えるのか?
インスペクションはあくまで現況調査の結果を報告するものであり、耐震の問題や雨漏りなど、物件の瑕疵が無いことを保証するものではない。

それでは消費者の保護にならないではないか、と思われそうだが、インスペクションを行うことで、その調査結果を活用した既存住宅売買瑕疵保険への加入が可能になる。

既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の売買に際して、住宅の隠れた瑕疵により生じた損害を補償する保険で、構造部分や雨漏り、給排水管のトラブルなどに対応が可能だ。

今後、築年数の古い空き家が増えてくる地方において中古住宅を購入する場合、これまでは性能面の確保が一定ではなかった。インスペクションと瑕疵保険が推進されることで、購入者は専門家の調査結果の内容を踏まえた上での判断が可能になる上、さらに隠れた不具合については保険でカバーできるようになり、より安心な住宅の購入が実現できる。

近い将来に家を買おうと考える方は、三軒家万智のような有能なセールスには出会えないかもしれないが、インスペクションと瑕疵保険を活用して、安心安全なマイホーム購入を行なって欲しい。

【参考記事】
■20代ゆとり世代を批判してきた 50代ゆでガエル世代の自分探し (玉木潤一郎 経営者)
http://sharescafe.net/49320038-20160816.html
■三菱自動車の不正問題に見る、下請け企業の自己防衛と金融機関の支援 (玉木潤一郎 経営者)
http://sharescafe.net/48497051-20160501.html
■中小零細企業に必要な「仕事がうまい」人材(玉木潤一郎 経営者)
http://sharescafe.net/48242519-20160331.html
■地方の中小企業経営者が現場から見た「女性活躍」のリアル(玉木潤一郎 経営者)
http://sharescafe.net/48171281-20160323.html
■せっかくの学びが、地方のビジネス現場で役に立たない理由(玉木潤一郎 経営者)
http://sharescafe.net/48339489-20160411.html

玉木潤一郎 経営者 株式会社Sweets Investment 代表取締役


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