第26弾写真

介護保険制度改定の議論が急ピッチで行われています。先日も、40歳未満の世代に介護保険料を負担させてはどうかとのニュースが流れたところです。保険制度の存続と財政再建の号令がかかっているのはわかりますが、さらにおどろくニュースが配信されました。

■認定率が下がれば財政支援
時事通信の報道は次の通りです。
厚生労働省は16日、高齢者らの自立支援に取り組み、介護サービスを受けるのに必要な「要介護認定」を受けた人の割合(認定率)を下げた都道府県と市区町村に財政支援する方針を固めた。出典:<ヤフー> 認定率下がれば財政支援=介護費抑制で自治体に―厚労省 時事通信 2016/9/17

上記の方針は、都道府県と市町村が介護予防対策や要介護度が下がるような取り組みを行って、その結果、要介護者の数が減れば(=要介護認定率が下がれば)、国は都道府県と市町村に財政支援、つまり報奨金を支払う制度を導入しようというものです。詳細はわかりませんが、例えば65歳以上のうち要介護度1~5の高齢者の割合が前年同月比で減っていれば評価され、浮いた介護保険給付のうちいくらかが支払われるものと考えられます。

■要介護認定の流れのおさらい
高齢者やその家族が、介護が必要だと思っても、要介護認定を受ける必要があります。まず初めに、市町村に「要介護度・要支援認定申請」を行います。その後、訪問調査が行われ、その調査内容を元にコンピュータで一次判定を行います。そして、市町村が開催する介護認定審査会で二次判定が行われます。介護認定審査会は、保健・医療・福祉の学識経験者5名程度(医師、看護師、ケアマネジャー、社会福祉士など)で構成されている会議で、一次判定の結果に訪問調査の特記事項や主治医意見書を加味して最終的に要介護度や要支援、非該当の判定を行います。申請から認定まででおよそ30日かかります。

二次判定で決定された介護度に不服がある場合は、原則として都道府県に対して判定のやり直しを求める不服申立を行うことができます。その他、市区町村へ区分変更申請という方法もとれますが、これは、認定を受けた後に要介護度が大きく変わるくらい状態が異なる時に利用する制度です。いずれにしても、初めに相談された市区町村や地域包括ケアセンターの窓口や担当のケアマネジャーに相談されることをお勧めします。ただし、実際に不服申立や変更申請を行っても要介護度が変更されるかどうかはわかりません。

■すでに運動やリハビリ等は行なわれている
今までも市町村は、介護予防普及啓発事業や地域介護予防活動支援事業を行ってきました。介護予防普及啓発事業とは、介護予防の必要性や重要性を周知する講座を市町村自らが開催するというものです。地域介護予防活動支援事業とは、民間団体が行う腰痛予防・口腔ケア講座などへ活動費として市町村が補助する事業のことです。

要介護者や要支援者は、お一人おひとりが現在利用している介護サービスで機能訓練を受けています。たとえば特別養護老人ホームでは機能訓練が組み込まれています。デイサービスでも機能訓練を受けられます。訪問介護であっても、料理や掃除の補助を行うことで生活リハビリ(生活全般の日常動作をリハビリとする考え方)を高齢者自身で実施しています。

今よりもさらに効果的で結果の出せるリハビリや運動、講座があるのでしょうか。平成29年4月までに全国の市町村で「介護予防・日常生活支援総合事業(略して総合事業)」が開始されることになっていますが、隠し玉があるのでしょうか。何か特別なことがない限り、要介護度や要支援になられた方々の状態が急に改善に向かい、認定率が下がるとはとても思えません。

■水際作戦でないことを願いたい
要介護度や要支援の認定は、市町村に権限があります。もちろん、市町村の中に設置された認定審査会が、お一人おひとりの介護度を合議で決めます。過去に行われた審査会と同じように審査会が開催され、リハビリや運動の効果として要介護度が下がればそれにこしたことはないです。

問題となるのは、今までと同じような取り組みにも関わらず、要介護認定を受けた人の割合が下がった場合です。取り越し苦労ならば良いのですが、要介護認定基準が見直されて、要介護度が高くならないように判定され、その結果、認定率が下がったということだけは絶対にあってはなりません。

■私たちはこれからも介護保険改定の動きを注視しなければいけない
今回の認定率低下による財政支援の報道にあるように、介護保険改定の議論が活発になってきました。平成30年4月の改定実現のためには、制度自体の議論は平成28年11月がリミットです。

鳴りを潜めている見直し案はまだまだあります。すでに要支援は介護保険から外されましたが、要介護度1,2も実は軽度者と取り扱われる可能性は十分にあります。利用者負担額を3割にする案もなくなったわけではありません。その時になって知らなかったとならないように、私たちは改定内容を注視しておく必要があります。介護の問題は決して他人事ではないからです。

【参考記事】
■子育て世代直撃! 配偶者控除廃止? 介護保険料徴収? (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49467522-20160905.html
■配偶者控除の廃止について、税理士に聞いてみた。 シェアーズカフェ・オンライン編集部
http://sharescafe.net/38791870-20140513.html
■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48977075-20160701.html
■介護が必要になった!どうする?(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49045000-20160709.html
■介護の問題を絶望にしない秘訣(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48944579-20160626.html

藤尾智之 税理士・介護福祉経営士


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