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今年のプロ野球も、両リーグの日本シリーズ出場チームが決まり、いよいよ大詰めになってきました。セ・リーグは25年ぶりリーグ優勝の広島、パ・リーグは最大11.5ゲーム差を逆転した日本ハムが、22日から雌雄を決します。

巨人・阪神といった人気チームが出場しないとはいえ、今年の日本シリーズは見どころが満載です。その中でも最大のものは、日本ハムの大谷翔平選手がどのような活躍を見せてくれるかでしょう。

大谷選手は今季、同一シーズンで投手として10勝、打者として20本塁打という史上初の離れ業をやってのけました。この活躍を受けて、気の早いメディアの中には大谷選手の来季年俸を予想、というか憶測した記事を載せているものもあります。その多くは、過去の事例やチーム内のバランスを考慮して、今季推定2億円からの倍増あたりが落としどころと見ているようです。

しかし私は、まったく違う観点から、大谷選手の適正年俸はこんな額ではないと考えています。今回はその根拠をご説明します。

■大谷選手は“優良投資資産”
ご存知の方も多いと思いますが、大谷選手はもともとアメリカ・メジャーリーグでのプレーを希望していた選手です。今年の活躍で自信を深め、その思いはますます大きくなっているのではないでしょうか。

日本のプロ野球選手がメジャー球団と交渉するためには、海外フリー・エージェント(FA)権を取るか、ポスティング(入札)制度を利用するしかありません。大谷選手にとっては、取得に時間のかかるFAよりポスティングの方がはるかに魅力的な制度でしょう。また、球団にとっても選手を取られるだけのFAより、譲渡金という名の移籍料を設定できるポスティングの方が好都合です。

これらを合わせて考えると、来年開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で華々しく大谷選手を活躍させ、市場価値を高めた上で来オフにポスティング――という一部で囁かれている流れは、かなり実現性の高いシナリオだと思います。

現在のポスティング制度は2012年に制度変更があり、それまで自由に設定できた譲渡金に2,000万ドル(約20億円)という上限が設けられました。この新制度になってからポスティング移籍したヤンキースの田中将大投手、ドジャースの前田健太投手は、いずれも上限いっぱいの2,000万ドルで契約成立していますので、よほどのことがない限り、大谷選手も2,000万ドルで契約成立になる可能性が濃厚です。

これをビジネス的に見ると、大谷選手は、「1年後に20億円で売却できることが確実な投資資産」と考えることができます。

■投資家が日本ハムに求めるリターンはどれくらい?
大谷選手を、「日本ハムという企業の投資資産」と見た場合、その資産が生むキャッシュ・フローが投資家と債権者の期待収益率を上回る必要があります。

期待収益率の算出法として、資本コストという考え方があります。これは、企業が資金の出し手である投資家や債権者にどの程度のリターンを返さなければいけないかの指標で、投資家は配当率、債権者は金利で示されます。

日本ハム株式会社の財務諸表から、配当率(=現金配当額÷純資産×100)は2.6%、金利(=支払利息÷有利子負債×100)は0.9%と計算できます。この両者を金利の節税効果も考慮して加重平均すると約2%になります。つまり、日本ハムの投資家は、日本ハムの事業や投資案件に対し、年率平均2%のリターンを求めている、ということになります。

■栗山監督には特別ボーナスを!
これを、大谷翔平という“投資物件”に当てはめて考えてみましょう。確実に計算できるキャッシュ・フローは1年後のポスティング譲渡金の20億円ですから、現時点の投資額=来季年俸は、「利率2%で運用して1年後に20億円になる金額」ということになります。計算すると20億円÷1.02=19億6千万円、という結果が導き出されます。

投資経済性の観点から見れば、大谷選手の来季年俸は「19億6千万円」が妥当、ということになるのです。

とはいえ、実際の契約交渉では前述の4億円程度が交渉ラインになることは間違いないでしょう。はっきり言いますが、そうなれば日本ハム球団は大儲けです。私が日本ハムの社長なら、メジャー志向を翻意させて入団にこぎつけた担当スカウトと、ここまで育て上げた栗山監督には、特別ボーナスで1億円あげてもいいくらいです。

いずれにせよ、そのプレー内容に劣らず、お金の話題でも史上空前の大谷選手。来年のオフまで、まだまだ我々を驚かせてくれそうです。

【参考記事】
■PCデポ高額請求問題の背景を財務面から読み解く。(多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49372274-20160823.html
■伊藤忠商事が中国で病院経営に乗り出した理由。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49594165-20160920.html
■シン・ゴジラでビルを破壊された三菱地所のBCPを勝手に考える。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49222132-20160802.html
■『さんまのまんま』終了で考える、テレビ局の苦境と明石家さんまのこれから。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49277606-20160810.html
■「SMAP株式会社」という幻の選択肢を考えてみた。 (多田稔 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49326386-20160817.html

多田稔 中小企業診断士 多田稔中小企業診断士事務所代表




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