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老後資金というと、「良い運用方法は無いか?」といった事が話題になる事が多いのですが、それ以前に「多く働いて収入を増やす」「生活を見直して支出を抑える」ことが重要でしょう。1000万円を運用して2割増やすより、200万円稼ぐ方が確実で簡単ですから。


生活の見直しというと、「ビールを発泡酒で我慢する」といった節約を考える人が多いのですが、その前に、まずは支出項目を見直して、不要な出費を削りましょう。特に保険と自家用車は、金額が大きいので、要検討です。

■専業主婦は103万円、130万円の壁を忘れよう
専業主婦は、育児や家事の状況にもよりますが、可能なら働きましょう。年間103万円までなら、迷う必要はありません。働いただけ所得が増えます。

専業主婦の年収が103万円を超えると、本人に所得税などがかかる上に、夫が配偶者控除を受けられなくなるため、夫の所得税が増え、場合によっては夫の勤務先からの扶養手当が受け取れなくなったりしかねません。年収が130万円(一定の条件を満たした人は106万円、以下同様)を超えると、今度は社会保険料を徴収されることになります。年金保険料、健康保険料等々、合計で年間20万円程度です。

そこで、103万円直前、130万円直前で働く量を調節している人が多いのですが(103万円の壁、130万円の壁)、気にせず働きましょう。150万円働いてしまえば、手取りが減らずに老後の保証だけを得ることができますから、思い切って150万円以上働きましょう。それが無理でも、むしろ積極的に130万円を超えて、厚生年金保険料を支払いましょう。

年金保険料は、現役時代のキャッシュフローにはマイナスですが、厚生年金に加入して保険料を支払うことは、平均寿命まで生きれば生涯所得的には決して損ではない設計になっています。加えて、長生きとインフレのリスクへの備えとして大変心強い存在です。

夫婦合計で何円、という計算以外に、専業主婦自身の保身という意味でも、働いて厚生年金保険料を支払っておくことは重要です。夫がリストラされた、早死にした、離婚した、といった場合に、女性が1人で生活していくのは容易なことではありません。仕事を持ち、厚生年金の権利も持っておくことが、万一の場合の安心につながるのです。

定年退職後の夫も、元気な間は働きましょう。収入を得ることは勿論重要ですが、それのみならず、社会と接点を持ち、社会に必要とされているという実感を持ち続けることが出来る方が、急にヒマになって家で時間を持て余して妻から「濡れ落ち葉」などと呼ばれるより、遥かに良いでしょう。

■生命保険は期待値がマイナスだから、必要な場合のみ加入する
日本人は保険が好きで、深く考えずに「保険に加入しておけば安心だ」と考えて加入する人も多いようですが、ここは真剣に考えましょう。保険というのは、万が一の事があった人に支払われる保険金と、保険会社の諸費用の合計を保険料として客から集めている商品です。つまり、期待値としては大幅なマイナスなのです。

専業主婦と幼児を養っているサラリーマンが生命保険に入るのは、当然でしょう。自分に万が一のことがあった時に、遺された妻と子が非常に困った事態に陥りかねないからです。しかし、独身者、共働きで子どもがいない夫婦、退職金を受け取った高齢者に生命保険は必要でしょうか。万が一の事があっても、悲しむ人はいるでしょうが、路頭に迷う人がいないのであれば、生命保険は不要でしょう。生命保険会社のコストを寄付しているようなものですから。

生命保険自体は必要でも、附属している疾病保障などは不要かも知れません。日本の健康保険は「高額療養費制度」により、どんなに高額な医療費がかかっても健康保険内治療であれば自己負担額には上限があるのです。まずは制度を調べてから、疾病保障が必要か否か、検討してみましょう。

■損害保険も、本当に必要か否か見直してみる
都会に暮らすサラリーマンは、自家用車が必要でしょうか?自家用車のコストは様々で、合計すると高額になりかねないので、「普段は公共交通機関を利用して、時にタクシーやレンタカーなどを利用する」ことも検討してみましょう。公共交通機関を利用するようになると、自然と歩く距離が増えて健康にもプラスですから、一石二鳥でしょう。

火災保険も、通常は加入するでしょうが、親の家を相続して空き家になっている場合などには、不要でしょう。親の加入していた火災保険の名義を引き継ぐ必要はありません。郊外の広い家に住んでいて、子供の独立を機に都心の小さなマンションに引越を考えている場合には、自宅であっても火災保険は不要かも知れません。

■支出項目を洗い出してみる
「支出項目を洗い出そう」と言われると、「家計簿を付けるのは面倒」と考える読者も多いでしょうが、家計簿を付けなくても、銀行の通帳を見れば自動引き落としの項目はわかりますし、クレジットカードの利用明細を見れば、内容がわかります。あとは、何ヶ月かレシートを保管しておいて、大雑把に食料品購入費等々を把握すれば良いでしょう。昨今では、レシートをスマホで読み取る家計簿アプリがあるので、これの利用も検討してみましょう。

毎月払っている支出項目で、たとえば最近読んでいない雑誌の定期購読等々、惰性で払い続けているものがあるかも知れません。特に、クレジットカードの引き落としになっていると、支払いのたびに「無駄か否かを考える」チャンスが無いので、要注意です。

支出の見直しは、夫婦で行なうと良いかもしれません。自分では必要だと思っていても、相手に必要性が説明できないようであれば、削る余地があるかも知れないからです。もっとも、その際に重要なことは、相手を攻撃する事や喧嘩をする事が目的ではないので、あくまでも夫婦円満に協力し合いながら支出の削減に努めて下さい。拙稿のせいで夫婦喧嘩が増えたりしては、申し訳ありませんから(笑)。


【参考記事】
■老後の生活は1億円必用だが、普通のサラリーマンは何とかなる (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49185650-20160728.html
■今の若者たちも、年金保険料を払った方が得な理由(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49711266-20161012.html
■少子高齢化による労働力不足で日本経済は黄金時代へ(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49220219-20160809.html
■労働力不足でインフレの時代が来る (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49018387-20160708.html
■国債暴落シミュレーション:日銀の債務超過(塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12199547792.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授


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