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かつてテレビ業界の王者として君臨したフジテレビ。しかし、今、かつての勢いはなくなり、ドラマの代名詞であった「月9」の視聴率も振るわず、直近の2016年3月期の決算におけるメインの放送事業では、売上高3,189億円(前年比▲6.7%)、営業利益807億円(前年比▲39.4%)という厳しい結果に終わっています。なぜ、このような事態に陥ったのか。番組プロデューサーとして23年間席をおいていた筆者が70年代まで遡り、社員へのインタビューなど交えながら客観的に分析したのが本書です。



本書は、1955年に開局したフジテレビを70年代まで遡り、以降実施された番組改革や組織改革を当時の社会状況も踏まえながら多面的に分析。視聴率に代表される業績を常に左右したのが改革によって移り変わる「社風」という空気であると捉えています。ここでは、大きく社風を変化させた改革や出来事について4つご紹介します。

<目次>
第1章 「社風」と命運を分けた「社内改革」
第2章 「フジテレビ村」の誕生と黄金期
第3章 衰退の兆しとライバルの猛追
第4章 お台場の甘い罠と王座奪還
第5章 時代を逆走して転落
第6章 フジテレビは“復活”できるのか?

■フジテレビの黄金期を創った「80年改革」
1981年、開局当初の「母と子のフジテレビ」に取って代わって、「楽しくなければテレビじゃない」がキャッチフレーズとなった。お祭り好きで、元気で陽気—。そのような“ラテン系”テレビ局のイメージが、社内だけでなく世間でも認知されるようになった始まりはここにある。その後この言葉は、キャッチフレーズを超えた会社の「最高規範」「憲法」あるいは「呪文」のように働き、社員の意識や番組作りを方向づけていった。(P39)

標語やキャッチフレーズは単なる言葉ではありません。社内に限らず、様々な空間でその言葉に応じた「空気」を創り出す呪文でもあります。

作り出された空気は、目に見えずそこにいる人間たちを支配します。ビジネスの現場では、この空気によって「判断」され、ときに「違う意見」が通らない、黙殺されるといった現象が起こります。

■権威をぶち壊せ!
八十年代のフジテレビは、既存の番組作りの手法を“ぶち壊し”ながら、新たなエンターテインメントの地平を切り開いてきた。フジテレビがこの時代に“ぶち壊した”ものは、一言でいうならば、テレビの「権威」だろう。「権威」をぶち壊すことで、常識や垣根を取っ払い、リアルを追求するところに他局に勝る強みがあったのだ。(P60)

自分たちがどのような社会的役割を担っているのか。このことがはっきりと示されるとき、ビジネスの現場において大きな原動力となります。モチベーションの向上です。そして、そのまま数字へと反映されるでしょう。

しかし、この原動力はエネルギーを過剰に帯びすぎると、時として誤った方法へと暴走する危険性もあります。作られた空気の中、摩擦力はさらに低下し、だれも止めることが出来なくなる危険性も包含しています。

■視聴率よりもカッコイイ番組を
視聴率に強烈なこだわりがないだけではなく、一九九四年からは、日テレに負けて苦戦を強いられているという危機感も会社全体では共有されていなかった。フジテレビの良い点でもあるが、現場は「何とかなるだろう」という楽観的な雰囲気だった。やはりフジテレビの人たちは能天気なのか、それとも当事者意識がないのか。私自身も当時まだまだ大船に乗った気分でいた。(P115)

組織に限らず、人間単位においても状況が想定していた以上に悪化した場合、現実を否定し、独自の解釈を持ち込もうとする傾向があります。もちろん、違う切り口を持ち込む目的が、その状況打開であれば問題ありませんが、単なる現実逃避であった場合、むしろ状況は悪化する一方です。

この新たに醸成された「空気」はときに歪んだ「正義」へと変貌します。職場におけるある種の「免罪符」と化すのです。稟議や決裁、取引先との交渉などビジネスの様々な場面で侵食を始め、その変化に気づいた一部の人間だけでは手に負えず、さらに受け入れがたい現実に直面するまで止まりません。

■「仲間」が「敵」に
八十年代のフジテレビ・パワーは、社員だけではなく、外部スタッフも強い仲間意識を持ち、一丸となって番組製作に取り組んだ結果生じたものであった。上司と部下、先輩と後輩など上下関係を超えた一体感こそが、十二年間三冠王を継続した力の原動力なのだ。ところが、お台場に引っ越ししてからは、社内の構造上、フェイス・トゥー・フェイスの会話が減ったり、地理上の条件から飲み会が少なくなったことで、次第に付き合いがよそよそしくなってきた。(P136)

いわゆる大企業病の一つです。企業が急速に拡大、発展したり、都心のキレイなビルへと移転すると気持ちが大きくなったり、一流企業の社員なのだというある種の勘違いを引き起こします。

もちろんの負の面だけではありません。その企業に属しているという高いプライドが、それにふさわしい仕事や結果を残そうと奮起することもあります。しかし、多くの場合、株式上場準備などによる管理体制の強化、業績至上主義などが引き金になり、それまで協力者であった同僚や他部門が敵に見えてくることが往々にして起こります。

80年代の黄金期、株式上場と新しいビルへの移転、ライバルの追随と王座からの転落。そうした様々な変化の中で、姿を変える社風が企業の業績を左右する。今なお厳しい状況に置かれているフジテレビは決して他人事ではなく、またテレビ局という特殊な業界だから起きたことでもなく、あらゆる企業においてそのリスクが潜んでいることを本書は示唆しています。

【参考記事】

■新しいビジネスモデルを発想する「6つの視点」(酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://financial-note.com/2016/06/13/six_view_point/
■不動産業に見る「ジャパネットたかた式」ビジネスモデル(酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://financial-note.com/2016/05/21/exsample_0124/
■【出版不況】書店業界を救う手立てはないのだろうか (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47952603-20160229.html
■【就活で銀行を選ぶな!】 銀行のビジネスモデルが終焉を迎える日 (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47617542-20160125.html
■ワタミが劇的な復活を遂げる可能性が低い理由 (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47314916-20151224.html

酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト フィナンシャル・ノート代表


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