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 国土交通省が設置した持続可能な地域航空のあり方に関する研究会において、地域航空会社について議論が進められている。ここでは、航空は経済産業活動や国民生活を支える基盤であり、地方航空路線が地方創生、観光立国の役割を担い、維持・活性化が期待される存在であるとして、持続可能な地域航空のあり方を議論している。この研究会の結論はまだ示されてはいないが、1つの方向性として、地域航空会社の統合が検討されていると言われている。
 地域の航空会社に対する政策として、どのような方向性が国民にとって望ましいのか、国鉄改革を参考に読み解いてみたい。

■地域航空各社
 現在、議論の事例にあるのは以下の5社であり、各社の近年の業績は、日本エアコミューター以外は、赤字の状態であり、現状では補助金に頼ることで生きながらえている。
※地方航空会社5社(名称/所在地/H26売上高/H26営業損益)
①北海道エアシステム/北海道札幌市/26.9億円/▲0.5億
②ANAウィングス/東京都/不明
③オリエンタルエアブリッジ/長崎県大村市/18.9億円/▲4億円
④天草エアライン/熊本天草市/7.3億円/▲2億円
⑤日本エアコミューター/鹿児島霧島市/252億円/26.1億円

■地方航空会社の課題と対応策
 これらの航空会社の経営上の課題としては、いくつかの要因が考えられるが、共通するのは脆弱な経営基盤であり、少数機材の運営による高コスト体質がある。また、機材故障時のバックアップ機不足による欠航、特定の大手航空会社との連携に伴う限定された事業展開、パイロットをはじめとする人材不足なども業績に影響を及ぼしているといわれる。

 これらの課題に対し、地域航空会社の統合や系列を超えたコードシェアとそれによる国際旅客の獲得、機材や燃料の共同調達、整備の共通化などの対応策があげられている。これら対応策の中で、地域航空会社の統合以外は、現体制でも行うべき通常のビジネスアイディアであり、各社が生き残りのために打つべき当然の施策に思える。現に天草エアラインは日本エアコミューターと整備に関する協業を導入している。

 では、これらの動きを官民主導で進めることが本当に必要なのであろうか。一般的な考え方からは、地方の航空路線を地域住民の足として維持することが必要であり、そのためには税金を赤字の補てんとして投入することも致し方ないとする。だが、これらの航空会社が統合することにより、一部の黒字会社が他社の赤字部分を補填し、税金の投入を抑えることにもつながる妙案となる。

■国鉄改革から学ぶべきもの
 しかし、全国統一組織であった旧国鉄が、各地域ごとに分割され、民営化した理由を今一度思い返すべきである。一部の高収益路線で全国の赤字を補い、そのために黒字路線の運賃の上昇を招いたことで、世界でも非常に稀な東京-大阪という近距離に航空会社の参入を許す国民経済の非合理性を生み出した。また、黒字路線の補填と規制によって営まれた赤字路線は、自発的な改善活動が進まず、赤字を垂れ流し続ける結果となった。先日JR北海道が一部の赤字路線の見直しを検討するといったように、分割され自立運営であるからこそ、自浄作用が働き収益化の努力が生まれるのである。

 もし地域航空会社の統合という結論が導かれたとすれば、それは国鉄改革の逆戻りである。赤字路線は他の体力ある路線が補填し、個別路線の収益改善活動は鳴りを潜め、黒字路線の運賃は他を補填するための追加料金が加えられ、経済合理性を失う。それにより、現在は価格競争に敗れ、そもそもこの市場に存在しえなかった代替輸送手段が発生する可能性が生まれる。
 また、本来赤字路線であれば、それを改善しようとするインセンティブが働き、生き残りのため、これまでの地域航空にはなかった斬新なアイディアが生まれる素地が存在していたはずであるが、黒字路線の陰に隠れ、官や大手が主導することは、地域航空会社の創意工夫の機会を奪うことにもなりかねない。

 天草エアラインのように、地方自治体や利用者、居住者が株主となることで、自らの問題としてとらえ、自立的・自発的な行動を促す仕組みは現に存在する。しかし、各社を統合することにより、一部地域の地元路線に対する貢献活動が、他地域の赤字路線を支え、他地域の住民の利益になるとわかれば、本当の貢献・協力は得られなくなり、全員が日和見的、機械主義的行動を取ることが自然である。そうなると、ますます税金や収益路線に頼るばかりで、本質的な問題解決とは逆方向へ進むことになるのではないだろうか。

 国民経済のためには、安易に自由な経営環境を阻害するような枠組みを作るべきではなく、各社の創意工夫による健全な経営活動に、地方航空の活路を見出す仕組みづくりに注力するべきである。


【参考記事】
■星野リゾートとリッツカールトンの戦略の違いとは(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49185987-20160729.html
■国内LCCの戦略に潜む思惑とは(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48967732-20160630.html
■トレードオフ 優秀な経営者がやらないことを決める理由(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48728741-20160531.html
■日本企業のM&A「対等の精神」に潜む影 「ファミマとユニーの経営統合」(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47656741-20160129.html
■フェラーリの戦略にみる企業価値経営(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47203706-20151215.html

森山祐樹


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