職場の問題1

「我が国においては依然として長時間労働が問題となっており、長時間労働の削減は喫緊の課題です。」

厚生労働省のホームページにこう書かれている。企業も自治体も、問題意識を持って、さまざまな施策に取り組んでいるのは間違いない。ノー残業デイの設定,残業時間の制限,有給休暇取得促進などだ。

しかし、実感できる形で労働時間が減っているとは言えないだろう。多くのビジネスパーソンから漏れてくるのは、ため息と悲鳴だ。
「仕事は減らないから、サービス残業が増えただけ」
「帰れ、と言われてしまうので、家に持ち帰って仕事をしている」
「定時退社日以外の日の残業が増えただけ」
など。掛け声と精神論では、根本の解決には程遠い状況だ。

では、具体的に何をすればいいのか。そこで参考になるのが、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士である沢渡あまね氏の新刊『職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方』である。

本書は、職場の問題、特に長時間労働の問題に対して、11の切り口から解決策を探り、提示している。 自分の環境に照らし合わせて考えることで、問題解決のヒントを得ることができるだろう。

■たとえば「無駄な会議と会議の無駄」
長時間労働の原因の一つとしてやり玉にあげられる存在に「会議」がある。会議によって時間を割かれ、自分本来の仕事をする時間が奪われるというのだ。

しかし、必要な会議もあるだろう。こうした声が起きてくるのは、やる必要がない会議があるだけではなく、必要な会議の中にも無駄が存在しているからだろう。無駄な会議はなくし、必要な会議もできる限り効率的に進行できるようにする。目指すべき結論はこんなところだろう。

では、どうすればいいのか。沢渡さんは以下の4つの点をあげている。

まず、会議の目的とアウトプットの明確化である。その過程で、会議そのものが必要なのかどうか、冷静に判断することが可能になるからだ。そして何をする会議かも確認する。意思決定なのか、報告・連絡なのか、アイディア出しなのか。会議が終わった時点でなにがアウトプットされるかを決めておく。ここであらためて、「それならメールのやり取りでできるんじゃないの?」と気づくこともあるだろう。

次に出席者の選定である。なんとなく関係がありそうな人にはすべて声をかける、定例会だからいつもと同じようなメンバーを呼ぶ、ということが頻繁におこなわれているのではないだろか。だが、目的とアウトプットが明確になっていれば、だれに参加してもらって、どんな議論をし、判断をしてほしいのかも自ずと明確になってきているはずだ。そうした人だけを招集する。招集案内には、目的、議題、期待するアウトプットを明記する。このようにしていけば、なんのために会議に出ているのかわからない、時間の無駄だと感じる人は減っていくだろう。

会議が始まれば、参加者は、わかりやすく、伝わりやすい発言を心がけなくてはならない。けして難しいことではない。日ごろの「報連相」と同じように考えればよい。つまり、「報」か「連」か「相」かを伝えたうえで、結論から話す。そいて論点を示す。これだけである。沢渡さんはこれを「議事録をとりやすい発言を意識しよう」と書いている。議事録がとりやすいということは、発言がわかりやすく、かつ結論が明確だといえるからだ。このことで、議事録作成の労力は減り、間違いを防ぐこともできる。議論を共有できているから、参加者はすぐに次のアクションを起こすこともできる。発言の仕方ひとつで、出席者全員のその後の時間の使い方が変わってくるのである。

最後に、会議の終了時、「決定事項」「宿題事項」「次回予告」を確認して終わらせるようにする。「決定事項」を確認すれば、お互いに誤解がないかを確かめることができる。「宿題事項」を確認することで、それぞれの次のアクションが明確になる。「次回予告」をすることで、宿題の期限を明確にすることができ、確実に前に進めることができるのだ。

むろん、最初からこのすべて実践できるとは限らない。いままでの習慣を変えることにはパワーがいるからだ。だからまず小さな一歩から始める。招集メールに「目的」「アウトプット」の欄を作る。議事録のフォーマットに「決定事項」「宿題事項」「次回予告」の欄を作る。こうした「型」を用意することで、少しずつ変化が起きてくる。だれかが気づいて指摘するようになってくる。やがて、組織の行動習慣になっていくはずだ。

■仕事は5つの要素でできている
仕事とは「インプットを成果物に変えること」だと言っていい。そのためには「なんのため、だれのため」を意識しなくてはいけない。さらに、締め切り、予算などの制約も関係してくる。
つまり仕事は、次の5つの要素を考えて進めることで成り立っている。
・目的
・インプット
・成果物
・関係者
・効率
仕事がまわらない状態のときは、この5つのどこかに問題が起きているはずだ。どこに問題が潜んでいるのかを見つけ出しその解決に取り組まないと、職場の問題はいつまでもそのままである。長時労働も、精神的な疲労感も、放置されたままになる。だが、スローガンを打ち出し、規則を変えただけでは、効果は極めて限定的だ。結果だけ見て、それをダイレクトに変えようとするのは無理がある。プロセスを変えることでしか問題は解決しないのである。

■1億総疲弊社会を防げ
「会議」を題材に取り上げてみたが、本書で取り上げられた11の問題はみな、どの職場でも存在しておかしくない問題である。そしてそれはバラバラに存在するのではなく、それぞれが関連しあっている。付録としていついている「職場の問題地図 全体マップ」を見れば、何がどう関連しあっているのか、理解できると思う。この全体マップを作成し、問題の関連性を明確にしたことが、本書が類書と一線を画する理由である。この地図を手引きにすれば、どこから手をつけても、最終的にはほとんどすべての問題に向き合うことができるはずだ。

規則を変えることも必要だろう。個人がスキルを上げていくことも必要だ。しかしそれだけでなく、仕事のプロセスを見直し、職場のあり方そのものを変えていくことも必要なはずである。

それは簡単なことではないかもしれない。組織を変えていくためには、上司や経営陣を説得しなくてはいけない。改革に抵抗する人たちも出てくるだろう。

だが、嘆いていてもなにも変わらない。自分の環境に照らし合わせ、自分ができることから始めてみるしかない。「1億総活躍」なるお題目が1億総疲弊になってしまわないために、まず一歩踏み出すことから始めてみようではないか。

職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方
職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方
<目次>
1丁目 手戻りが多い
2丁目 上司・部下の意識がズレてる
3丁目 報連相できていない
4丁目 無駄な会議が多い
5丁目 仕事の所要時間を見積もれない
6丁目 属人化
7丁目 過剰サービス
8丁目 「何を」「どこまでやればいいのか」が曖昧
9丁目 仕事をしない人がいる
10丁目 だれが何をやっているのかわからない
11丁目 実態が上司や経営層に伝わっていない

〈参考記事〉
■あらゆる弱点には長所がある~弱点で進化を起こし、集客を成功させた水族館プロデューサーの方法~(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49653605-20160930.html
■創業1年の家電ベンチャーが、37種59製品をリリースできた秘訣 (中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49418238-20160830.html
■「トヨタ」から何を学べばいいのか?~【書評】どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力/原 マサヒコ(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47148390-20151211.html
■「町工場の星」に学ぶ 人の育て方、リーダーのあり方~【書評】ザ・町工場―「女将」がつくる最強の職人集団(中郡久雄 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48530974-20160506.html 
■「従業員満足」で企業業績は上がるのか?  中郡久雄
http://sharescafe.net/34307228-20131029.html
中郡久雄 中小企業診断士


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