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ビュッフェスタイルの店というのは、店の中央に料理が山盛りに置いてあって、客が好きなだけ皿に取って食べる、という形式の「食べ放題」の店です。食欲に自信のある客だけが来店して満腹になるまで食べるのに、どうして採算がとれるのでしょうか。

すぐに思いつくことは、客が自分で取りに行くので、皿に盛り付けたり客席まで運んだりする店員が不要だ、ということですが、それ以外にも多くの要因があるのです。今回は、ビュッフェスタイルの店の採算を考えることで、企業のコストや客の行動などについて考えてみましょう。

■ビュッフェ店はコックが効率的に働ける
ビュッフェ店のメリットの一つは、一度に大量に料理を作れる事です。注文を受けてから一人分ずつ調理するのではなく、あらかじめ20人分の料理を一度に作ってテーブルに並べるのです。料理は1人分でも20人分でも手間が20倍かかるわけではありませんから、コックが効率的に作業出来ます。

大企業が中小企業よりも儲かる理由の一つに、大量生産は効率的だ、ということが言われます。これを、「規模の経済」あるいは「スケールメリット」と呼びます。ビュッフェ店は大企業でなくともその原理を活用出来ているわけです。

また、注文が来る前からコックが料理出来るという点も大きなメリットです。普通のレストランでは、注文を受けてから調理するので、コックの作業が昼食時と夕食時に集中し、それ以外の時間は比較的ヒマです(失礼)。しかし、ビュッフェ店では朝から料理が出来るので、コックのヒマな時間がありません。

見方を変えると、普通の店では昼食時と夕食時にコックが調理できる料理数が受け入れ客数の上限になっていますが、その上限がビュッフェ店では大きいのです。店を借りるコスト等が同じだとすれば、多くの客を受け入れた方が儲かるに決まっています。

コックの給料や店を借りる費用が変わらないとすると、コックが効率的に長時間忙しく働いて大勢の客を受け入れる分だけ店の採算は良くなるわけです。

■固定費と変動費について学ぶ・・・経済初心者向け

まず、普通の店の収益について考えてみましょう。客が1人も来なければ、店を借りる費用やコックの給料などの分だけ赤字になります。こうした費用のことを「固定費」と呼びます。一方で、客が来て食事をすると、店の費用としては材料費などが増加します。こうした費用のことを「変動費」と呼びます。

飲食店は、客が来なければ固定費の分だけ赤字になりますが、客が一人来るごとに「売上げマイナス変動費」だけ赤字が減って行き、ある所で損益がゼロになります。客が何人来ると損益がゼロになるのか、という分岐点のことを「損益分岐点」と呼んでいます。

損益分岐点を超えて客が来ると、1人来るごとに「売上げマイナス変動費」だけ利益が出ます。損益分岐点を超えてから、客が1人来る場合と二人来る場合で利益が2倍になります。来客人数の増加率は、それほど大きくないのに(損益分岐点プラス1人が損益分岐点プラス2人になっても、増加率は小さい)、利益の増加率は大きいのです。一般に、企業収益の触れ方が売上げ高の振れ方よりも大きくなりがちなのは、こうしたメカニズムによるわけです。

■客が3人分食べても、店のコスト増は変動費分だけ

ビュッフェ店の採算構造を考えてみましょう。収入は客の支払いです。普通の店の二人分の料金だとしましょう。客が3人前食べるとしましょう。変動費は売上げの半分だとします。この場合、ビュッフェ店としては、客が3人前食べても、2人分の値段を払ってもらえれば、問題ないのです。

客が3人分食べるので、費用が普通の店より一人分(半人前の二倍)多くなっていますが、客が二人分の値段を払うので、ビュッフェ店の収入は、普通の店より一人分多いため、採算は合うのです。

店の変動費が売上げ高の半分より少なければ(店の主なコストが材料費ではなく店の家賃や従業員の給料などだとすれば)、客がいくら食べても気にならないのです。客が「ビュッフェ店は得だから」と大勢来店するようになれば、ますます儲かる、というわけです。

■ビュッフェ店に行く客は、無理して食べ過ぎないように(笑)。

ビュッフェ店に行くか否かを決める際には、「元がとれるか否か」を考える人が多いでしょう。「3000円出して4000円分の料理を食べれば、大満足だから、行こう」といった判断をする人が多いはずです。しかし、本来ならば、「3000払って、3000円分以上の満足が得られそうか否か」で決めるべきでしょう。4000円分の料理を食べても、美味しいと思えなければ意味がありませんから。

ビュッフェ店に行くと決めたからには、重要なことは、店に入った瞬間に、払った代金の事を忘れよう、ということです。そして、「現時点で一番幸せになるためには何をするべきか」を考えよう、ということです。「予想に反して、3000円分食べる前に満腹になってしまったが、元がとれるまで無理して食べる」のは愚かなことです。

「4000円分食べたが、無理をすれば更に一口食べることが出来るから、無理をして食べた」というのも愚かなことです。最後の一口を食べたからと言って、誰かが褒めてくれるわけでもなく、苦しい思いをするだけです。

更には、料理が口に合わなかったら、無理して食べずに店を出ましょう。帰宅して御茶漬けを食べた方が満足するなら、そうすべきです。「3000円の出費と御茶漬け」と「3000円の出費と不味い思い」の何れかを選ぶとしたら、前者ですよね。

無理して3000円分食べたからと言って、払った3000円が戻ってくるわけではありません。それなら、満腹だったり不味かったりした場合に、無理して食べても仕方ありません。このように、払ってしまって戻って来ない金のことを「サンクコスト」と呼びます。

サンクコストについては、興味深い話が多数ありますので、詳しくは別の機会に譲りますが、覚えておきたいことが二つあります。「払ってしまった金額は戻らないから、今の幸せだけを考えるべき」ということと、「自分がバカな判断をしたという反省をしたくないから更にバカなことをする」事がないように、という事です。

【参考記事】
■老後の生活は1億円必用だが、普通のサラリーマンは何とかなる (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49185650-20160728.html
■今の若者たちも、年金保険料を払った方が得な理由(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49711266-20161012.html
■少子高齢化による労働力不足で日本経済は黄金時代へ(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49220219-20160809.html
■とってもやさしい経済学 (塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12221168188.html
■国債暴落シミュレーション:Xデーのパニック(塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12199602230.html


塚崎公義 久留米大学商学部教授


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