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ついに平成29年税制改正大綱が発表になりました。今回の税制改正ですが、当初は今までのうっぷんをはらすくらい大掛かりになる改正と期待されましたが、時がたつにつれてトーンダウンし、半世紀続いた配偶者控除も小さな改正に留まりました。とはいえ、私たちの生活に影響がある税制改正もありますので、気になるところを見ていきたいと思います。

■配偶者控除
税制改正大綱を読むと、配偶者控除は今まで通り103万円以下が対象です。控除額も変わらず38万円のままです。見込まれる所得税の減税額は、19,000円~76,000円です(復興税や住民税は除いています)。

ただし配偶者控除の適用を受けるにあたって、実際に控除を受ける方の年収について制限が加えられました。所得ベースで、900万円超950万円以下の場合は26万円の配偶者控除に減額、950万円超1,000万円以下の場合は13万円の配偶者控除に減額となります。この所得を有する方の所得税率は20%~23%と考えられますので、見込まれる所得税の減税額は、最少で26,000円、最大でも59,800円に留まります。

かつては、76,000円~87,400円の減税効果があったので、年末調整を行った給与明細を見たらがっかりすることになりそうです。そして、所得が1,000万円を超す方の場合は配偶者控除そのものの適用がなくなってしまいました。

以上から、増税となる方は1,120万円を超える年収のある方です。平成30年分の年末調整や確定申告から適用されます。

■配偶者特別控除
150万円まで年収上限が上がったと騒がれたのは、配偶者特別控除の方です。今までは103万円を越え105万未満であれば38万円の配偶者特別控除を受けられていたところ、これからは年収が103万円を越えても150万円以下であれば、最大で38万円の配偶者特別控除が受けられるようになります。

一方で、配偶者控除と同じように配偶者特別控除にも適用を受ける方の所得に制限が加えられます。900万円を越え950万円の所得の場合は、最大26万円の配偶者特別控除額に減額、950万円を超え1,000万円以下の所得の場合は、最大13万円の配偶者特別控除額に減額となります。1,000万円を超える所得者は、もともと配偶者特別控除を受けることはできませんでしたので、改正前後に変わりはありません。

配偶者特別控除額は、配偶者の所得によって9段階に控除額が分けられています。これに3つの所得区分が加わるので、具体的な控除額は27通りとなります。

今まで配偶者特別控除を受けられなかった世帯が控除を受けられるようになるのでありがたい改正である反面、従来からこの控除を受けていた方で新たに所得制限の対象となってしまった方にとっては痛い増税となります。

■タワーマンションの固定資産税の見直し
従来のタワーマンションの固定資産税の評価額は、高層階も低層階も同じ面積であれば同額でした。ところが実勢価格は、高層階であれば高層階であるほど高騰していきます。この差をうまく利用して相続税の節税対策としてタワーマンションの購入がもてはやされました。

今回の改正によって固定資産税評価額に是正が行われることとなりました。是正の対象となるのは、平成30年度以降に新たに固定資産税が課税される60メートルを超える居住用の建物です。ただし、平成29年3月31日以前に売買契約が成立した住戸がある居住用建物の場合はその建物は除かれます。

具体的な是正方法は、階数が増すごとに1階あたり約0.2564%(39分の10)を加算して評価額を増やしていきます。1階を100%として、2階は100.2564%、5階は101.2564%、10階は102.3076%、30階は107.3589%、50階は112.5641%となります。つまり、50階にある住戸の固定資産税は1階の住戸と比較して12.5641%高いということです。

不動産取得税についても、上記の割合を使って高層階と低層階とに差を設けることとなっています。

■ビールなどの酒税
バブル崩壊により給料が上がらずビールが高嶺の花になった頃、酒税率の高いビールに変わって酒税率が抑えられた低価格の発泡酒が登場しました。その後は、さらに安いお酒として新ジャンルのビール系飲料(その他の醸造酒やリキュール)が登場しました。お財布に優しい価格でお酒が飲めるため、助かっている方は少なくないと思います。

今回、この庶民の味方である低価格のビール系飲料の税率と本家のビールとの税率が一本化されることとなりました。一気に酒税率を一本化するとこれまでのビールメーカーの努力が水泡と化すので、三段階に分けて平成38年10月1日から一本化されます。この一本化直前の時期に駆け込み需要が起きることは誰の目にも明らかです。

ところでビール1缶あたりいくらくらいになるでしょうか。税制改正大綱によると現行ではビール350ミリリットルあたり77円の税金がかかっているそうですが、一本化すると54.25円と▲22.75円の減税となります。一方でビール系飲料の350ミリリットル当たりの酒税は現行では28円ということなので、26.25円の増税となります。将来の販売価格はこの幅通りの値上げ・値下げとはならないと思いますが、心の準備として参考になると思います。

今回の税制改正大綱では、チューハイ系についても言及しています。350ミリリットルあたり28円の酒税を、平成38年10月1日以降は35円にすることとなっています。いずれにしても、今まで安く買えたお酒が値上げとなりますので、私たちの消費行動にも何かしらの影響を与えるのは間違いないでしょう。

■自動車取得税や自動車重量税の減税制度(エコカー減税)
エコカーは私たちの身近な乗り物となりました。私たちは、エコカーを買えばエコカー減税制度によって減税の恩恵に預かれますが、税金を徴収する側にとってすれば減収となります。そもそもエコカー減税は、燃費の良い自動車の普及を狙った措置であるので、その役目が終わったとの見方もできます。

平成29年3月にエコカー減税制度は終了する予定でしたが、2年間延長される代わりに燃費基準は平成32年度基準に移行します。エコの対象となる燃費基準がさらに引き上げられるため、恩恵を受けられる車が絞られます。これにより実質増税となる方も多くなる見込みです。

延命されたエコカー減税は、普及度合、税収の確保、自動車メーカーの開発など様々な観点から見直されることとなっており、再延長が将来あるかなどの動きは読めません。購入予定のある人は、制度があるうちに購入するというのが後悔をしない秘訣かもしれません。

【参考記事】
■お得なパート年収は103万?106万?130万?150万? 改正される配偶者控除を上手に使おう。(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/50166168-20161207.htmll
■短時間パートにも社会保険加入の適用拡大はじまる! 税金まで考えた得損勘定について(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49715442-20161007.html
■子育て世代直撃! 配偶者控除廃止? 介護保険料徴収? (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49467522-20160905.html
■配偶者控除の廃止について、税理士に聞いてみた。 シェアーズカフェ・オンライン編集部
http://sharescafe.net/38791870-20140513.html
■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48977075-20160701.html


藤尾智之 税理士・介護福祉経営士


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