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ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」がブレイクしている。

そしてそのエンディングテーマ曲である星野源の「恋」で出演者が踊る、“恋ダンス”の動画サイトへのアップも大流行している。

ドラマの公式サイトの再生回数は12月13日時点で6500万回を超え、“恋ダンス”で動画を検索すれば、一般人のものばかりでなく、吉本新喜劇や地方TV局のアナウンサーや、ダンスのレクチャーものまで様々な種類が見つかり、それと相まってドラマの行方にも注目が集まっている。

このヒットを構築したマーケティングを考えてみたい。

■ドラマ・映画 従来のヒット戦略
音楽と映画・ドラマ・CMとのタイアップによるヒット戦略の歴史は古い。

1966年、ブリヂストンタイヤのCM曲であった「どこまでも行こう」は、後に音楽の教科書にも載ったほど有名で、山崎まさよし、大黒摩季などそうそうたるアーティストたちがカバーしている。

その後もCMや映画・ドラマのテーマ曲としてヒットした事例は、TV創世の時代から現在に至るまで、数多く見られる。

それらの楽曲が、映画やドラマがヒットする推進力としても一役買っているのは言うまでもない。

そしておそらく、複数のコンテンツを融合したもっとも有名な成功事例は、1970年代〜80年代の角川映画であろう。

「メディアミックス」と呼ばれたその戦略は、映画・書籍・音楽と、一つの作品で複数の話題性を提供し、お互いが補完し合って強力な集客力を備えていた。

また、当時は珍しかったTVCMによる映画の宣伝や、薬師丸ひろ子や原田知世などの新人発掘オーディションも刺激的な話題となった。

■メディアミックス全盛の時代
角川映画の大成功以降の当然の流れとして、1980年代からのドラマや映画は、広い意味でのメディアミックスが当たり前になっていった。

その時期に映画やトレンディードラマとのタイアップでヒットした楽曲は枚挙にいとまが無いし、CMがきっかけでブレイクした女優やアイドルも多い。

1980年代後半以降は、素人をオーディションで即席アイドルに仕立て、そのアイドルたちが音楽やドラマ・映画に挑戦していくタイプのいくつかの仕掛けで、映画やTVなどのメディアをより身近に感じられるようになっていった。

しかし、数が増えれば色あせるのは道理で、むしろ現代では音楽と映像を融合したり、テーマ曲やキャスティングに手が込んだ仕掛けをするのは必須であり、そういったメディアミックスで私たちが新鮮な驚きを覚える事はもはや少なくなった。

■WEB2.0以降のメディアミックス
そんな中、これまで情報を受け取るだけだった視聴者側が、表現者となる場が増えていった。いわゆるweb2.0である。

従来のウェブサイトである“www.時代”においては、検索サイトから入っていってホームページ閲覧までが到着点だったが、web2.0の現代では、発信者と閲覧者が流動化し、誰でもウェブで情報発信が出来るようになった。

現在のような、誰かの発信から別の誰かの発信へと渡り歩いた後に、自分自身が発信し、さらにそれに対して他者の反応を得る、というウェブ上の動きは、私たちが単なる閲覧者でしかなかった頃とはまったく異なる。

またそれらの発信方法も、各種のブログサービスや2chやYahoo!掲示板などを経て、mixi、Twitter、Facebook、インスタグラムといったSNSへと進化を重ねるにつれ、匿名で現実感の薄い発信から、実名顔出しのリアルな発信へと進化していく。

そして音楽や映像でも、それらを踏まえたプロモーションの展開が始まっていった。

■発信とのミックス
記憶に新しい成功は、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」の仕掛けであろう。

絶対エース前田敦子の抜けた穴を埋めるべくAKBが仕掛けた戦略は、「覚えやすくて誰でも踊れる」楽曲だった。実際にシングルには、私たちがダンスを覚えやすいように、曲の本バージョンとは別に振り付けレクチャー用のバージョンが納められており、それを観れば比較的容易にダンスをマスターできる。

その後の話題性は広く知られているように、様々な会社や団体がダンス動画をウェブ上にアップし、「恋チュン」は自分でも発信できる音楽コンテンツとして大ヒットを納める。

また、今年のメガヒットとなったピコ太郎のPPAPも、ジャスティンビーバーのツイート後に動画を観た世界中の人たちが、YouTubeでコピーバージョンを発信し、ブレイクに拍車をかけた。実は筆者も最初に観た動画はピコ太郎のオリジナルではなかったが、意外とそういう方も多いのではないだろうか。

■逃げ恥が仕掛けた発信とのミックス
ドラマ「逃げ恥」のヒットは、ドラマの内容やキャストの素晴らしさ、細部の作り込みに加えて、いまや発信者となった私たち大衆の心をつかんだ「恋ダンス」の存在が大きな推進力となったようだ。

本文の序盤で記載したように、既に動画サイトでは様々なダンス動画を観られるし、筆者の知人の会社でもドラマ終了までに間に合わせようと撮影している例がある。

今後のTVや映画のプロモーションでは、ヒットを生む為の仕掛けとして、これまでのメディアミックスに加え、私たち大衆の”発信ごころ”をくすぐる仕掛けとの融合が主流になっていくのかもしれない。

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玉木潤一郎 経営者 株式会社店舗応援団 代表取締役

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