受験勉強


受験シーズン到来。私はビジネスパーソンの教育が専門分野ゆえ、受験というシステム自体に肯定も否定もしない立場です。しかし、短期間で人間のリテラシーを高める訓練ができるという観点では、受験の存在は非常によいことだと考えます。

そもそも、私たちは受験勉強というものを勝手に「学生が試験に合格するためにするもの」と定義してはいないでしょうか。確かに言葉の定義としてはその通りでしょう。

しかし、その定義を「ビジネスで使うリテラシーを高めるための訓練」と変えてみたら、いったい何が見えてくるのか。「受験勉強」と「ビジネスパーソンの教育」の接点を考えてみます。

■「訓練」になっていない研修
ビジネスパーソンになると企業側で用意した様々な研修を受講する機会があります。その中でも代表的なのが論理思考を身につけさせることを目的とした、「ロジカルシンキング研修」といった類いのもの。あなたも一度や二度はそのような研修に参加したことがあるでしょう。

また、書店に行けばそのような類いの書籍はたくさん陳列されており、具体的な方法論は簡単に手に入る状態にあります。MECE(ミッシー)、ロジックツリーといったお馴染みのワードの意味も、インターネットで調べれば簡単に手に入ります。

ではビジネスパーソンは実際に論理思考を使えているのか。教育研修を預かる立場からすると、残念ながら「YES」とは答えられません。むしろできないビジネスパーソンがとても多いことを感じる日々です。

研修もある。書籍もある。でも多くの人ができない。あるいは苦手に感じている。なんだかおかしいとは思いませんか。私が考えるその理由は、「訓練されていないから」です。

私はこう考えています。ビジネスパーソンは研修に参加するくらいなら、あるいはビジネス書を読み漁るくらいなら、もういちど数学の受験勉強をしたほうがよほど論理思考の訓練になると。

■数学の受験勉強はいったい何だったのか
もちろん研修や書籍にはビジネスでの活用事例が紹介されています。有名企業の事例や有名著者の活用術には一定の納得感もあるでしょう。ゆえに多くのビジネスパーソンは私の主張に対して、研修や書籍のほうが「腹落ち感がする」「使い方がイメージできる」という反論をします。

しかし、結果として彼らは使えていません。世の中にそういった研修がいつまでも継続されること、書店にそのような本が並び続けていることがその証明です。ニーズが存在しなければ、研修や書籍も存在しないはずですから。

一方、数学の受験勉強はとにかくひたすら論理思考を駆使して問題解決をしていくことを繰り返す行為です。これを体験することで整理して構造を把握し、矛盾なく論述するといった行為を身体が覚えます。だから、いざ他の局面に遭遇したときでもそれが自然にできるようになるのです。

■「わかっているけれどできない」をどう解決するか
申し上げたいのは、「論理思考をどう使うかを学ぶ」という発想がそもそも間違いであり、「意識しなくとも自然に論理思考が使えている状態」を目指すのが正解だということです。

そのためにはビジネスにおける立派な成功事例なんて必要ありません。有名な学者やコンサルタントの能書きも聞く必要はありません。必要なのは数学の教科書1冊です。

この話は「論理思考」だけに言えることではありません。たとえば「接客」に置き換えるとわかりやすいでしょう。接客するときは笑顔でなければならない。誰もが知っている正論です。この正論を「一流の接客をする人はやはり笑顔を大切にしています」と伝えて終わってしまうのが多くの研修や書籍です。

しかし、わかっていてもそれができない人もたくさんいます。楽しくもないのに笑顔を作り、しかもそれを見知らぬ相手に見せるという行為がとてつもなく難しく感じる人もいるのです。

そういう人が「意識しなくても自然に笑顔をつくれるようになる」ことが教育の仕事であり、「訓練」の必要性ということになります。

■日本のビジネスパーソンが論理思考に変わる方法
結論に向かいます。もしも日本のすべての企業が社員研修のテーマに「数学の受験勉強」を取り入れたら、日本人の論理思考力なんてあっと言う間に高くなるはずです。

数学は論理と数字だけで言葉を綴っていく学問です。ですから中学校レベルの数学の問題を徹底的に解き、学生に教えられるよう授業計画を作成する。これを強制すれば論理思考はもちろん、数的感覚も必ず身につけさせることができます。難易度が高いようであれば算数でも構いません。

私自身、実際に企業研修などでは営業パーソンに算数ドリルを解かせるような研修をしています。もちろん採点し、評価します。最初は悲鳴があがります。しかし、最後は感謝されます。ビジネスパーソンの論理思考研修は、「もういちど数学の受験勉強をせよ」で十分なのです。

論理思考や数的能力が低いなら、もういちど数学の勉強をすればいい。文章力や表現力が乏しいと感じているのなら、もういちど国語の勉強をすればいい。戦略やリーダーシップを学びたかったら、もういちど歴史を勉強すればいいのです。もちろん一定の期間でいいでしょう。

繰り返しますが、ビジネスパーソンの研修は、「もういちど受験勉強をせよ」で十分。
義務教育という言葉の意味は、私たちが思っている以上に深いのです。



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深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/教育コンサルタント

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