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私たちが個人情報を提供する事が多い公共機関だが、あろうことか役所の臨時職員がそれを不正取得し、性犯罪を繰り返していたという事件が発覚した。

東京都中野区の情報システムで盗み見た1人暮らしの女性宅に侵入したとして、警視庁捜査1課は11日、元同区臨時職員、高橋健一郎被告(29)=同区中野5、別の強制わいせつ罪などで起訴=を区個人情報保護条例違反と住居侵入の容疑で再逮捕した。女性約50人分の個人情報が高橋容疑者のパソコンなどに記録されているのが見つかり、同課が目的などを調べている。
毎日新聞 女性狙い逮捕 東京・中野区の元臨時職員 2017/1/12


報道によると容疑者は、マイナンバーカードの交付などの担当をしていて、住民の氏名や住所、生年月日などの個人情報が閲覧できる住民情報基盤システムに接続するためのIDとパスワードを持っていたという。

しかし公務員などが職場のシステムを悪用して個人情報を不正入手する事件は、これが初めてではなく、再発防止が求められる。

■個人情報を提供する信頼性
私たちは、役所などの公的機関に対してはかなり無防備に個人情報を差し出すが、その他にも金融機関などでも個人情報を提供する機会は多い。

それらの相手先に共通しているのは、それを扱う人たちへの信頼だろう。

役所や金融機関などが組織的に個人情報を悪用する事はなかろう、という組織への信頼感ももちろんあるだろうが、所詮は組織も人の集まりである。そこに悪用する人間がいれば、組織への信頼は何の役にも立たない。

しかし、役所や金融機関に属する人、いわゆる公務員や銀行員に対して、私たちはかなりの信頼を寄せている。なぜか。

それは、彼らが自分たちの職業に高いモラルを持ち、彼らが職業身分を維持する事に強い執着を持っていることを知っているからだ。モラルに関しては、公務員は服務の宣誓を経て着任しているし、他人の金を扱う銀行員についても行動に様々な制約がある。

職業身分の維持についても、市役所や金融機関は他の職業と比べてまだまだ終身雇用の色合いが残っており、転職を繰りかえすタイプの役所職員や銀行員は少ない。これは筆者の私見ではあるが、不正によって身分を失いたくない、と彼らが考えてくれているだろうという信頼がある。

■臨時職員の業務範囲と責任
今回の事件に関して考えれば、容疑者が非正規職員であったことに関わらず、個人情報を自由に閲覧出来る業務体制を採りながら区の個人情報管理はあまりにずさんだ。

報道によれば、容疑者は不正に取得した個人情報を悪用して、この事件とは別にも女性宅に進入した住居侵入とわいせつ行為で既に逮捕・起訴されている。かなり悪質だと言ってよく、区としては事件は極めて個人レベルの特異性に拠るものだと言いたいところだろう。

しかし、ID管理でデータベースへのアクセス回数がチェックが出来る状態で、3000回を超える容疑者のアクセス回数に対して事件前に指導が入らない管理は、預かった個人情報の重要性に鑑みてやはりずさんだ。

さらに業務中に50人分の個人情報を持ち出し記録する、ある意味では勤務中に私用にかなりの時間を割けるほどルーズな容疑者の勤務姿勢に対して周囲の職員が違和感を持たなかったとしたら、区役所という組織への私たちの信頼感も揺らぐ。

区は臨時職員を一部研修の対象から除外していたようだが、取り扱う個人情報が同じであれば、正規か非正規かでその情報の軽重が変わるわけではない。

意外に多い民間企業の個人情報取り扱い
ところで、個人情報を取り扱うのは、役所や金融機関に限らない。

大企業はもちろん、中小零細企業であっても、顧客や社員の個人情報は取得するし、それを取り扱う部署も、営業から総務人事まで様々だ。そして一般に大企業より中小企業の方が管理部門は弱いので、個人情報の管理体制も整っていないケースが多い。

しかし中小零細だからといって、個人情報の管理を甘く見て良いわけではない。と言うよりむしろ経営者が積極的に管理すべきだろう。

たとえば筆者の経営する程度の中小企業でも、正社員は数十名しかいなくてもアルバイトが常時300名以上いるので、入れ替わりを考えると数年間で履歴書はその数倍を取り扱う。

若い女性の住所や、独身か、親と同居しているか、などの個人情報程度は履歴書からでも取得可能で、それらの取り扱いによっては重大犯罪に繋がる可能性もあるのだ。現金や小切手、印鑑や権利証を金庫で保管する経営者は多いが、個人情報の取り扱いにもそれ以上の配慮が必要であろう。

さいわい中小企業の場合、経営者や管理職と現場社員の距離は近い。その意味では今回の事件のような勤務姿勢の社員を見つけ出しやすい反面、出たり入ったりと転職者も多いので、個人情報の管理を現場任せにする事は危ない。

PC内データへのアクセスを制限する事はもちろん、女性の個人情報を男性に扱わせないことや、紙資料については鍵のついた収納を利用するなど、基本的な管理体制を整える事で、中小企業の場合には個人情報の流出をかなり防げる。

中小企業経営者は性善説で社員と接したがる方も多いが、管理がずさんだと、最初はほんの出来心だった不正はエスカレートしていく。出来心を助長しない取り組みが、中小零細企業であっても今後は求められていくし、これは個人情報悪用の問題だけでなく、金銭横領やセクハラパワハラなど、企業の様々な問題において同様である。


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玉木潤一郎 経営者 株式会社店舗応援団 代表取締役



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