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先日、「親子就活」なる記事を目にした。親のアドバイスにより内定を辞退するばかりか、退職にまで影響を与えるという。

■親子就活は非常識なのか

親が会社説明会に出向くなど、親子で内定を目指すようになった。一昔前なら考えられなかったが、大手就職サイト主催のイベントでも親子参加の講座が普通にある。(中略)親が面接会場に「息子が遅刻しそう」と電話する。「娘はなぜ落ちたのか?」と理由を問い合わせる。親が納得できない会社だと、「内定を取り消してくれ」と頼んでくる……いずれも、親子就活の“あるある話”なんだとか。
日刊ゲンダイDIGITAL「今や常識? 企業も無視できない「親子就活」驚きの実態」2017/3/23


人事担当者にとってみれば非常にナイーブで神経を使う話だ。

■親子就活は必ずしも非常識ではない
上記記事を読んだ率直な感想は、「ここまで親が出てくるか~」である。しかしながら、本件について「親離れ・子離れ」できない大人の愚行、と切り捨ててよいものであろうか。一旦立ち止まって考えてみたい。

厚生労働省によれば、20代の死因の半数は自殺で、その動機や原因の約4割が仕事関連の悩みとうつ病によるものであるという(厚生労働省「平成26年厚生労働白書」)。また、同じく厚生労働省による調査では。「現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスになっていると感じる事柄がある労働者」の割合は55.7%に達するという(厚生労働省「平成27年労働安全衛生調査」)。

先般の働き方改革にも多大な影響を与えている広告代理店新入社員の自死や企業における各種のハラスメントなど、「会社に子どもが殺される」ということは現実にあり得るのだ。このような事実を踏まえれば、子どもの就活と親の関係性について、全てを「過干渉」と断じるのは早計と言えるだろう。

■多数派ではない親子就活
それにしてもキャリアコンサルタントとしては少々気になる親子就活である。改めて調べてみたが、必ずしも冒頭の記事が指摘するような「就活の常識」な状況とはいいきれないようだ。

(株)DISCOの調査によれば、学生の親から直接連絡をもらったことがある企業は15.9%(従業員1000 人以上の大手では22.6%)であるという。連絡内容としては「「入社後の処遇・待遇についての問い合わせ」28.3%、「選考結果についての問い合わせ」26.5%、「セミナーや選考試験の欠席の連絡」21.1%」等だという((株)DISCO「調査データで見る「親子就活」」2013年11月)。

内容のいずれも、採用選考の根幹に関わるものであり、対応する人事担当者も神経をつかうことだろう。大手企業でも親からの連絡があるケースは2割弱であり、絶対的多数派とは言えないものの、対応する人事担当者の苦労は計り知れない。

当然の結果と言えばそれまでだが、「就職への親の関わり方について」は「子どもに任せるべき」が91.7%と9 割を超え、「積極的に関わるべき」は8.3%と、かなり少数派であるという(前掲調査)。企業の人事担当者の立場で考えれば、親が子の就活に関わることは、どうしてもネガティブな印象を受けてしまうと思われる。

■親からの連絡に対する対応とは
もちろん、就活生の親から連絡があったとて、臆することはない。対応の基本は、就活生から連絡があった場合と同様だ。

言うまでも無いが、企業が外部に教示できないと判断する情報(採用選考の具体的な基準等)については、親であろうが本人であろうが安易に回答すべきではない。お答えできない旨を、毅然とかつ丁寧に説明すべきだ。一方外部に教示できる情報(福利厚生面や採用後のキャリアパスやHP等で公開している情報)については、専門用語の多用は控えわかりやすい言い回しで端的に回答することになるだろう。

ポイントは、繰り返しになるが親であっても就活生本人であっても対応に差異をもうけないことだ。そうでなければ、誰が連絡したかで与える情報量に差が出来てしまい、採用選考に際して不平等感・不信感が募ってしまう。

場合によっては、例えば子が選考に落ちてしまった場合の親からの連絡など感情的になっているケースも想定されるだろう。その場合でも、「相手が何を言っているのか」ではなく「相手は何を言おうとしているのか」に着目したい。親にとって自慢の息子(娘)が否定されたという事実は、それなりに重いものなのだ。その場合も、必要以上に媚びへつらう必要は無いのだから、伝えるべき情報をわかりやすい言葉で伝えるという対応になろう。

■親子就活への効果的な対応とは
企業で働くということは、給料をもらいながら自己成長をはかれるということで、素晴らしいことだ。識者や実務家の間ではよくこの類の発言が見られるが、働く中でメンタルを病み、また職場のハラスメントなどが散見される現状、そうした見解はもはや強者の論理と言えるのかも知れない。

むしろ現状では、子どもが就職を決めたと言っても、「子育てが完了して一安心」というよりも、むしろ「会社で我が子がつぶされないか心配」という感情が先立ってしまうのではないだろうか。そうだとすれば、「働く」とは一体なんなのだろうか、と頭を抱えてしまう気分だ。

少なくとも企業側としては、就活生の親から何か問われたとしても、何事にも自信をもって回答できるよう、襟を正しながら採用活動を行う必要がありそうだ。奇しくも昨今の就職活動においては「男性の育休取得率」や「有給の消化率」などがPR材料となっているという。誰にでも説明のつく魅力ある職場作りを推進することが、ひいては親子就活への最大の対応策となるのかもしれない。

【参考記事】
■「就活に有利な資格ってありますか?」と問われたら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/50823928-20170310.html
■キャリアコンサルタントが自身のキャリアを描けない、という笑えない話。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49875267-20161028.html
■公務員の給与引き上げは正しい。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49293753-20160812.html
■電通新入社員自殺、「死ぬくらいなら辞めればよかった」が絶対に誤りである理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/ キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/19337217.html
■サザエさんの視聴率が急降下した本当の理由とは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/19290233.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


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