えすこる49

いよいよ明日から4月。多くの会社で新しいスタートをきる人も多いでしょう。がんばるぞという気持ちと、不安な気持ちとが入り混じっているのではないでしょうか。2045年には私たちの寿命が100年を超えるとも言われています。これからの「働く人生」は思いのほか長くなる可能性が高く、今後はますます働く環境の変化に拍車がかかります。

■変化のスピードは思っている以上に速い
環境の変化といえばAI(人工知能)などの技術革新がまず真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。昨年大人気だったドラマ「逃げ恥」でもペッパー君と主人公がお店で話しているシーンがありました。テレビでは自動運転の車のCMが流れていますし、ワールド碁チャンピオンシップでAIが大健闘したことは記憶に新しいところです。平成28年版情報通信白書には、2020年には言語を通じた知識の習得が可能になり、AIが秘書などの業務を担うこともありうる、との記述があります。

経営者側から見れば、この変化のスピードに合わせて利益を出し事業を継続していくとなると、仕事に必要な「適材適所」の人材を社内だけで見つけられないという状況も起こりえます。その時に必要な技術や、業務経験を身に着けている人が重宝されるのはもちろん、社内にいなければそのときだけ外注、あるいは他社から雇用する、ということが増えていくことは想像に難くありません。

こうしてどんどん変わっていく組織の中で、長くなりそうな「働く時間」を個人としてどう歩いていったらいいのか、サバイブするための3つのヒントをお伝えしたいと思います。

■(1)常に自分を客観視する目をもつ。
まずは目の前の仕事を覚えて集中することはもちろんですが、少し余裕が出てきたら他社の友人や、社外の活動に積極的に参加して、「自分と会社を客観視できるような時間」をもつことをお勧めします。会社の中にどっぷりつかって仕事や会社メンバーとの付き合いを深めるのももちろん重要かつ楽しいのですが、社内の常識は社外の非常識かもしれません。会社をとりまく環境がどんなふうに変わっているのか、業界はどうなっているのか、自分の働き方は他社、他業界の人から見るとどうなのか、と、違う視座から自分を取り巻く状況を見るのです。

技術の変化のスピードが増す以上、スキルの陳腐化も早く進みます。新しく仕事をする場を得て働き続けるためには、何が必要とされるスキルなのか常に把握しておくのはもちろん、今までの仕事でどんな成果を出してきたかを伝えることも必要になります。社内で仕事を続けるにしても、社外に機会を求めるにしても、自分が今まで何をしてきたか、できれば数的指標を使って話せれば、他の人に「自分は何ができて、どんな仕事の役に立てるか」を納得してもらいやすくなります。たとえば昨年1年間で売上を○○円、何パーセント伸ばせた、あるいは、チームでの仕事量を何パーセント、金額にして○○円削減できました、といったような形です。

(2)「働き続けるための準備期間」として、休業制度を使う。
働き続けたい気持ちはあるけれど、子どもを産んだあとは果たしてどうなのか、と不安に思う女性も多いと思います。データでは、子供を産んだあと働き続けることが難しい、と言われていた現状に少し改善が見られます。第一子出産後に仕事を辞める女性が6割、という状況から、5割に減っています(『第1子出産前後の女性の継続就業率』の動向関連データ集」)。育児休業制度を使って働き続ける女性も増えています。この休業制度をお互いとりやすくするために、ひとつみなさんにお伝えしたいのが、制度の趣旨についてです。

たとえば法律で定められている育児休業は原則1年、介護休業は通算93日(対象家族一人につき3回までの分割取得が可能)ですが、果たして、この時間で育児や介護は終わるでしょうか?もちろん足りません。ではなぜ、このように期間が制限されて設けられているのでしょうか。

育児・介護休業法の「この法律の目的」というところには、この法律が「・・・このような労働者が退職せずに済むようにし、その雇用の継続を図るとともに、育児または家族の介護のために退職した労働者の再就職の促進を図ることとしています」とうたわれています。雇用の継続や再就職、つまり「働き続けるための準備をする期間」がこの休業の趣旨なのです。

働く期間が長くなり、ライフイベントと付き合いながら働く期間は誰にでも起こりえます。休業の趣旨を理解すれば、休業をとるのもお互い様、という気持ちも生まれてきやすくなります。育児や介護で疲れる心身を休めつつ準備をし、復帰後にどう働き続けていくのか、組織の中でどんな形で貢献していけるのか、必要な報酬をどのように得ていくのか、というふうに主体的に考える必要があります。

■(3)新しい仕事の機会があればチャレンジする姿勢でいる
必要な報酬を得るという観点からすると、これからは、収入源を1本に固定することはリスクが増す可能性があります。また、働く期間が約50年間続くとすると、ずっと同じ仕事、同じ会社にいると考えるほうが非現実的です。先日28日に策定された政府の働き方改革実現会議でも、実行計画の9分野のうち、第4,5項目に転職・再就職支援及び柔軟な働き方が入っており、「5柔軟な働き方」のほうではテレワークとともに、兼業や副業について「労働者の健康確保に留意しつつ原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」という文言が入っています。

現状では兼業や副業は就業規則で禁止されている会社もまだまだ多く、推進、容認されているのは全体のおよそ2割にとどまります(2017年2月株式会社リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査」より)。いきなり兼業・副業といかなくとも、自社内の様々な仕事や(1)で触れた他社、他業種の動向にも興味をもっておくことは役に立つはずです。必要ならその仕事をしている先輩を紹介してもらったり、仕事以外の時間をつかって学んだり経験したりする時間をもってもいいでしょう。ほかの仕事に挑戦できる選択肢を広げるための努力は、環境変化に対するリスクヘッジとなるからです。

実は、(1)から(3)は私自身が独立開業してから心がけてきたことでもあります。新しい仕事をする際には今までどういう仕事をしてきたのかを客観的に説明する必要があります。自営業に休業制度はありませんが、だからこそ子育てをしながら仕事で成果を出し続けるためには休日をとること、その休日をどうすごすかいろいろと試しています。「今」目の前の仕事で成果を出すことが求められる一方、どんどん変化する経営環境に合わせて、必要な勉強会に出たり書籍を読んだり仲間との会話を通じて常に「将来」を考える時間も必要なので、今と将来に対する時間の配分方法は常に試行錯誤しています。

組織の中で、あるいは将来組織外で=起業して働くことがあっても、変化に対応して自分で意思決定していけば、後悔することはありません。将来を心配しすぎず、ぜひ、社会人としての時間を大切につかい、楽しんでほしいと思います。

《参考記事》
■長時間労働がなかなか減らせない会社への処方箋。(小紫恵美子 中小企業診断士) 
http://sharescafe.net/48208264-20160327.html
■新しい働き方で、企業と個人双方がつけなければいけない力。(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45172807-20150614.html
■2015年は長時間労働崩壊元年に (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42734491-20150104.html
■結局、「女性活用」って何すればいいの?(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?(株)チャレンジ&グロー(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206

小紫恵美子 株式会社チャレンジ&グロー代表取締役 中小企業診断士

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