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ファーストリテイリングの柳井正氏が私財約11億円を投じて日本からアメリカへの留学支援を行い、その最初の学生37人が選定されたことが今月始めに報じられた。柳井氏のほかには、ソフトバンクの孫正義氏が、やはり私財を投じて海外留学支援を行うことが発表されており、2月に今年度の応募の締め切りを迎えたところである。

■海外セレブリティたちによる教育支援
日本では実業家による教育支援のニュースが目立つ一方、海外ではミュージックアーティストやモデル、司会者など、いわゆる「セレブリティ」たちによる教育支援の流れが目立っている。

よく知られている例をいくつか挙げると、例えば歌手のリアーナは「グローバル・スカラシップ・プログラム」という奨学金を財団を通じて給付。対象はアメリカの大学で学ぶことを望むブラジル・バルバドス・キューバ・ハイチ・グレナダ・ガイアナ・ジャマイカのいずれかの国籍保持者だ。

また、歌手のビヨンセは自身のアルバム「レモネード」の発売一周年記念として「フォーメーション・スカラーズ・アウォード」なる企画を実施。「殻を破って考えることを恐れない女性」を後押ししたいとして、クリエイティブアーツ・音楽・文学・アフリカン-アメリカン学、のいずれかの専攻を指定の大学で修めることを条件にしている。

上記以外にも、ビヨンセの夫でラッパーのジェイZ、モデルのクリッシー・テイゲン、俳優のケビン・スペイシー、ラッパーのストームジーやニッキー・ミナージュなどがよく知られている上、故人を含め他にも多数のセレブリティが教育支援を実施している。

近年の流れで注目されているのは、SNSやクラウドファンディングを通じ、従来より気軽に自身のファンなどへの支援を行うアーティストたちが出てきていることだ。クリッシー・テイゲンやストームジーはクラウドファンデングを通じて、ニッキー・ミナージュはツイッターを通じて、それぞれ教育費用を支援している。(参考:Times Higher Education,2017年5月27日付記事)

■学びはクールだ
彼らのファンの多くは、若年層だ。なかには、勉強や学校とは無縁な者、その結果として就業が困難であったり、貧困から犯罪に手を染める者もいる。

有り余るほどの財を成したセレブリティと言えども、誰も彼も支援するわけではない。支援の対象は学ぶ熱意がある人や、その証として優秀な成績を修めている人などである。たとえ熱狂的なファンであっても学ぶ意欲のない者に奨学金など与えられない。

しかし、セレブリティたちが教育支援を行う大きな意義は、「教育は財産だ」というメッセージを多くの若者に発信していることにある。ときに、憧れのアーティストの行動は、親や先生の言葉よりよっぽどインパクトがある。

学ぶのはかっこいい。そんな風に思う若者が生まれれば、奨学金を支給された学生一人だけでなく、さらに広く、若者たちの未来に貢献することになる。

もしかすると近い将来、日本でも芸能人による教育支援が行われるようになるかもしれない。もしそうなったら、日本の若者が「学び」を見る目が変わってくるに違いない。いかに高額を稼ぐ芸能人であろうと、会ったこともない人に自分のお財布から学費を払うなんて並大抵のことではないだろうが、そんな日が来ることを楽しみにしてみたいものである。

《参考記事》
■ピース綾部さんにアメリカで遠慮なく失敗してきてほしい理由(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/49869595-20161027.html
■NHK朝ドラ・べっぴんさん「エイスケさん」の強みは『偶然を必然に変える力』だった(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/50916599-20170323.html
■東京五輪で英語教育は盛り上がるのか?(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://sharescafe.net/51149313-20170425.html
■トランプ大統領誕生でアメリカ留学「以外」を選ぶ学生たち(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://www.ryugakupress.com/2017/01/31/trump-3/
■渡辺直美さんがニューヨーク留学で得た『留学の成果』を考察してみる(若松千枝加 留学ジャーナリスト)
http://www.ryugakupress.com/2015/12/28/seika/

若松千枝加 留学ジャーナリスト

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