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先日、「「休めないなら辞めます」イマドキ20代が余暇を優先する理由」という記事を読んだ。以下のような内容だ。

■若者は余暇ファースト志向?!

時代とともに若者が会社に求めることは変化している。どうやら今の若者は、休みを重視する「余暇ファースト」主義らしい。(中略)“異次元の人種”と接する中間管理職からは、戸惑いの声が相次いでいる。「今の新入社員は、まだ仕事も覚えていない半人前なのに、自己主張だけは一人前。ですが、時代が時代なだけに、休みたいという声を真っ向から否定することもできない。どうやって歩み寄ればいいのか」AERAdot.「「休めないなら辞めます」イマドキ20代が余暇を優先する理由〈週刊朝日〉」2017/6/5

「イマドキ20代」「異次元の人種」など、新入・若手社員がここぞとばかりにケチョンケチョンに言われているなあ、というのが実感だ。

■若手叩きは何も生まないのだが・・・。
上記の記事のソースとしては、「2017年度新入社員意識調査アンケート結果」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング発表)である。当該調査によれば、新入社員が会社に望むこととして、今年度初めて「残業がない・休日が増える」が「給料が増える」を上回ったという。

当該調査の結果を受けて、今の若者は「自分ファースト志向」であるという報道がなされた。この点について筆者は、別記事「「給料より休暇が大事」は「自分ファースト」なのか。」にて、若手社員の置かれた背景に関する考察が必要であることや、ワークとライフを対立概念として捉えることの是非について議論し、安易に若者を自分本位呼ばわりすることへの懸念を表明したところである。

だがその後も、就活における売り手市場化を背景に、就活生や新入・若手社員を否定するような論調が後を絶たない。冒頭の記事中でも、「(就活で「どれだけ休めるか」を尋ねる学生に)全く悪びれずに尋ねる様子を目の当たりにすると、それだけ時代が変わったということでしょうか」「「有給休暇は、1年目から取るものじゃない」と申請を突き返した。」など、若手叩きとも取れる強い表現が目立つ。

■若手叩きは第2第3の電通事件につながる
現在政策として推進されている働き方改革を加速させた一要因として、電通における新入社員の自死、という悲しい事件が挙げられる。報道等でご存じのとおり、当時同社の新入社員であった高橋まつりさんが自殺した背景には、過労死ラインを越える長時間労働や上司からのハラスメントが認められる、というものだ。上司や法人としての同社が書類送検され、社長も辞任に追い込まれた。センセーショナルに連日報道されたことから、まだ記憶に新しい事件である。

本件は社会に大きな衝撃を与えたことは言うまでも無いが、特にこれから社会に巣立っていく就活生や、同じ世代の新入社員たちに与えた影響は少なくないだろう。「会社(仕事)に殺されるなんてまっぴらごめん」というのが正直なところであり、むしろ真っ当な感覚なのではないだろうか。「一所懸命働いて成果を上げるのも大事だけれど、心身の健康も同じくらい大事」。これはメンタルヘルスを保持する上でも、きわめて健全な考え方であると思われる。

当該事件については、「プロ意識が足りない」などと暴言を吐く有識者もいたものの、総論としては「会社・上司のマネジメント不足」「残業規制等の職場環境改善は妥当な方策」というのが大勢の見解では無かったか。マスコミ各社もこぞって同社の一斉消灯の映像を放映し、同社の社風等について否定的な報道を行っていたと記憶している。

その舌の根も乾かないうちに、である。有休を申請したり休暇について質問をする若者を叩くような記事が散見されることについては、不整合甚だしい、というのが実感だ。手のひらの返しように頭がクラクラしてくる、というのが正直なところでもある。

「過労自殺は問題だが、気軽に会社を休むのもまた問題」ということかもしれないが、電通過労自殺の背景には、被害者の勤怠管理・安全衛生管理が十分に行われなかったことがあり、「新人は休みなんかとるもんじゃない」という発想は、第2・第3の被害者を生み出すことにつながりかねない。少々理解に苦しむロジックなのだ。

■「よく学び、よく遊べ」
「新人は仕事にどっぷりつかる期間が必要。それを避けての成長はない」という議論は、確かに一つの真理であろう。一方で、会社や上司が適切なマネジメントを行い、経験の浅い新入・若手社員の業務進捗を管理することや心身の健康に配慮すべきことも、現状では大事な事実ではある。

もはや「会社で朝日を見る」的な働き方が許されないとすれば、若手社員は極力効率的に、無駄のない進捗の範囲でパフォーマンスを維持しながら仕事を覚えるしかない。膨大な仕事に対し、主に長時間労働や残業で対応してきた我が国の働き方において、「かける労力は少なく、結果は出す」といった働き方はまだまだ発展途上だ(だからこそ、時に働き方改革の議論は混迷を極める)。そして、そのような働き方を模索する責任は社員個人だけにあるのではなく、管理監督する上司や会社にも、重くのしかかっている。現場の社員に丸投げは許されないのだ。

例えば休暇の取得の末に業務のパフォーマンスが下がったとしたら、上司はその事実をもって、毅然とした態度で部下に指導すれば良い。休みをとることが悪いのでは無くて、休みを取った結果業務に悪影響があったという事実が指導の対象となるのだ。むしろ、他の社員より休みを多く取っているがパフォーマンスが下がらずむしろ上がっているとすれば、能力の高い社員と評価すべきだろう(むろん仕事はチームで行うものもあるため、一概に休む社員が優秀である、と言いたいのではない)。

冒頭の記事で長期の休暇申請を上司に突き返された若手社員も、「周囲に迷惑をかけないよう、休みの前には猛スピードで仕事を進めようと張り切っていたのに。休みが取りやすいという環境も入社の大きな動機だったのに」(前掲記事)という。休暇の申し出のみをもって評価を下すのでは無く、その前後の働きぶりをよく観察したい。

やはり基本は「よく学び、よく遊べ」なのだと思う。学びと遊びは対立する概念では無く、複雑に絡み合い、相乗的にお互いを高めていくものだ。ライフが充実すればワークもまた質が高まる。逆もまた然りである。安易な若手叩きは痛快かも知れないが、必ずしも建設的な議論とはならないことを、我々は自覚すべきではないだろうか。

【参考記事】
■「給料より休暇が大事」は「自分ファースト」なのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/21650519.html
■「親子就活」が非常識でない理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/19939501.html
■「新入社員が2日で辞めた」を防ぐ術は、NHK歌のお兄さん交代に学べ。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/51056896-20170412.html
■「就活に有利な資格ってありますか?」と問われたら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/50823928-20170310.html
■「我が社が求める人材像」をどや顔で語る企業を疑うべき理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/51161433-20170427.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


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