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就活する学生にとって一番身近な社会人といえば親。親が子の就活に協力し、子も親に就活アドバイスを求めるという、仲良し親子も昨今は少なくないようです。ただ仲が良いだけでなく、せっかく得た内定に親が納得せず、学生に内定辞退を強く求める「親ブロック」や「ママブロック」と呼ばれる事態も発生しています。

■ママブロックで内定辞退
A君は一流有名大学の学生で成績も優秀。就活にもがんばって、早々と第一希望だった外資系のIT企業の内定を得ました。さっそく喜んでお母さんにも内定報告をした良い子です。ところが・・・・

お母さんは「そんな聞いたことがない会社で良いの?あなたを○○大に入れたのはそんな会社に入るため?」と逆に詰問してきたのです。A君は良い子なので反論もできず、せっかくの第一志望先をあきらめ、お母さんの満足できる企業を求めて再度就活を始めることにしました。・・・・

というような、親による内定先評価で内定辞退に至ってしまう例を「親ブロック」とか「ママブロック」などと呼びます。採用活動をする企業もその影響を大いに警戒しています。親向けの企業説明会や内定者説明会など開く企業も今や珍しい話ではありません。

私が直接キャリア相談を受けた学生でも、こんな話はけっこう普通にあります。特に優秀な大学に進んだ、親の言うことを何でも素直に聞く理系学生などに多く見られるように感じます。

中にはそうして親が喜ぶ伝統的大企業に入社できたもの、数年後には外資系投資ファンドからその会社はM&Aされ、会社そのものが消えてしまったという例もあります。


■親たちの時代の就活
親の言うことを聞く子供自体を否定したくはありませんが、人生の決断を親が決め、それに唯々諾々と従うという思考は、その学生の将来にとても大きな不安を感じさせます。

企業選びに正解はなく、大企業だから、有名企業だから安心ではないなど当然です。私は就活学生のための企業選び講座などもやっていますが、これは「これから上がる株情報」のような、特定企業の良し悪しを教えるものではありません。その良し悪しを判断する力を付けることが目的です。

何をもって良い会社かという判断はそれこそ正解のない問いです。三菱自動車、シャープ、東芝、昔の山一證券や拓銀など、絶対につぶれることなどあり得ないと思った巨大企業が倒産したり、経営不振で買収され、事業が解体されるなど、今の経営環境下ではきわめて普通のことです。

今の大学生の親が就活をしていた時代とは、ほぼバブルからバブル後期あたりでしょう。インターネットもメールもないその当時は、今のような就活ナビやWebエントリーシステムもありませんでした。分厚い電話帳のようなリクルート資料を読み、ハガキで応募したりしていた時代です。バブル全盛期のイケイケ就活のエピソードは、正に都市伝説のような、今では考えられないものがたくさんありました。


■無視すべきアドバイス
ろくに面接もせず、有名大学体育会に入っていただけで内定とか、筆記試験をほぼ白紙でも内定など、武勇伝も数々生まれた時代の就活と、今現在の就活は全くの別物といえます。

親が身近な社会人であることは良いとして、別に社会人なら誰でも就活に役立つとは限りません。自分の自慢話や苦労話を若者に話すのは快感ですから、話したがる大人はいくらでもいます。本当に社会人の先輩からもらうべきこととは、昔話ではもちろんなく、良いか悪いかの会社選びの判断でもありません。

会社という環境や組織の思考形態や思考回路を後輩たる学生たちにぜひ教えてあげてほしいのです。今学生が一番関心がある、職場環境がブラックかどうかのような疑問には、会社経験の長い人の判断力はかなり役立ちます。単純に残業があるないだけではない視点や、上司の指示がどんなものか、そもそも今上司をしている可能性のある社会人の、自らの判断プロセスなどこそ宝の山のような有益アドバイスになります。

社会人といっても年の近い身近な先輩では、まだその人自身のキャリアが現在進行形のため、良いとも悪いともいえません。「新卒で入社したのがダメ会社だったから3ヵ月で辞めたけど、すぐ転職できた」の類の話は昔からあります。その人が20代で転職ができたとしても、その後40代50代での会社員人生がどうなったかなどまでは全く判断ができません。


■聞くべきアドバイス
社歴20年などのベテランになってくれば、栄枯盛衰を一通り見てきたことで、ある時期の花形部門がその後没落したり、主流派派閥が経営陣交代でいきなりリストラ対象と化した等、いろいろな変化を知っています。

キャリアとは1年や2年で結果の出るものではありません。10年単位で変わっていく「人生」です。それこそが人生の先輩たる親から得られる最高の教訓ではないでしょうか。それができる親からのアドバイスはきわめて有効で、ぜひ子供にも聞かせてあげてほしいと思います。しかし20年前に5年くらい勤務して結婚退社。それ以来ビジネス知識がアップデートされていないような親の意見であれば、およそ現在の経営環境に基づくとは考えられません。

父親なら良いという意味では全くなく、現役バリバリの人事だったり、学生が志望する業界や製品、サービスの市場に精通した人であれば、性別には関係なくもっとも頼れるアドバイザーでしょう。

残念ながら確率的に親の方が子より先に亡くなる可能性が高いのです。最期まで人生の保証をしてくれる親はいません。自分の人生は自己責任です。そうであれば自分の人生を決めるためには、親の決めた正解を鵜呑みにするのではなく、自分の判断力を磨き自分で判断することが何より大切です。


【参考記事】
■「なぜ私は落ちたの?」求人倍率と景気回復
http://shachosan.rm-london.com/?eid=371668
■ちょいワル親父の末期
http://shachosan.rm-london.com/?eid=637257
■マイクロソフトは新入社員に700万円!? 初任給は入社の決め手になるのか?(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/51473596-20170612.html
■「私の強みはコミュニケーション能力」という挑戦状(増沢隆太 人事コンサルタント))
http://sharescafe.net/51681650-20170713.html
■内定辞退の作法(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html


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