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■自動運用でポートフォリオをつくる
自動的に運用してくれて、自動的にお金が増えたらどんなにいいことか。かつて、バブル時代にはそんなこともあった。貯蓄をすれば10年ちょっとで元本が倍になった。当時は預貯金の利率が6%以上あったのだから、その結果に納得がいく。それを自動でやってくれると期待されるのがロボアドバイザーだ。そうは言っても、この運用システムがどこまで人に替わってくれるのか。それを検証してみたい。

例えば現在、6%運用を目指すためには「ミドルリスク・ミドルリターン」タイプとか「積極運用型」のポートフォリオをつくらなければならない。しかも、市場環境が刻々と変わる中、常に市場を見て資産配分を維持(リバランス)しなければならない。

資産運用の肝となるのは、分散投資でポートフォリオを構築することだ。これができれば、リバランスも自動的にできる。そして、この資産配分に必須となるのが、各アセットクラスの過去データである。このデータをどれだけの期間で採用するかでモデルポートフォリオは全く変わってしまう。リターンもリスクも変わってくる。この辺りは、ロボアドバイザーのアルゴリズム(運用方法)を担当する人の知能に関わってくるところだ。

■診断で分かれるリスク許容度
そこで、今利用されているロボアドバイザーを調べてみた。と言っても、実際に運用を任せたわけではない。個人のポートフォリオを構築するにあたって、必ず試されるテストがある。「リスク許容度診断」である。要するにあなたがこれから投資するにあたって、どれだけのリスクが取れるか、というものである。許容度が高ければリスクを大きく取れ、それだけリターンも期待できる。ロボアドバイザーを提供しているサイトでは、この診断からポートフォリオ構築までを無料でシミュレーションできる。

いくつかのサイトから、ここに「A」と「B」のロバアドバイザーがある。同じような投資条件を入力してみた。「A」「B」とも、リスク許容度診断には2択から5択の質問がある。ここでは質問文を簡潔にし、回答を以下のようにした。(質問項目が同一ではないので、同じ回答にはならない。「 」内が回答。)

「A」
1.年齢 ・・・ 「40代」
2.年収 ・・・ 「700万円」
3.現在の金融資産 ・・・ 「500万円」
4.毎月の投資額 ・・・ 「10万円」
5.投資目的 ・・・ 「退職後の資産設計」
6.急な値下がり時の対応 ・・・ 「一部を売却」

「B」
1.年齢 ・・・ 「40代」
2.投資経験 ・・・ 「ある程度の経験はある」
3.元本の安全性 ・・・ 「ある程度は重視する」
4.急な値下がり時の対応 ・・・ 「一部を売却」
5.インフレによる目減りリスク ・・・ 「それほど心配していない」

■診断の判定結果を見てみると
「A」のロボアドバイザーの診断結果では、リスク許容度は5段階の「2」である。これは「安定運用型」の範疇に入る。一方、「B」では段階評価ではなく、「値上がり益重視型」と出た。「B」の方が思いのほかリスク許容度は高くなった。また、「A」のリスク許容度による期待リターンは約3.2%、リスク(標準偏差)は約6.4%となった(最適ポートフォリオのグラフから読み取った数字)。一方、「B」では期待リターン5.0%で、リスクの表示はない。

両者のリスク許容度の違いは、数十のパターン化された回答の組合せからコンピュータで抽出されたものだ。両者のリスクとリターンの数字の違いは、アセットクラスのインデックスの種類及び各データ期間の違いによるものだろう。また、「A」と「B」ではポートフォリオにもけっこうな違いが出ている。投資者の本質的イメージを同レベルに設定して回答したにもかかわらずだ。

問題となるのは、リスク許容度の判定である。そもそも、質問数が少ない。質問内容も簡素すぎる。はっきり言って、こんな簡略なもので将来の大事な資産形成をしていいの、という感じである。独身か妻帯者か、扶養家族は何人か、ローンはどれだけあって、毎月の生活費や積立投資ができる額はいくらか。特に投資額は、本人が希望している額(簡単にたくさん儲けたいという願望は誰にでもある)と実際に投資可能な額とでは、それなりの乖離が生じるものだ。そこに本当のリスクが生じるのであって、その部分で人間のアドバイザーが介在できる余地がある。もっとも、ロボアドバイザーのサービスが、一般の人のハードルを低くして、もっともっと投資に参加してもらうべきものだと考えるならば、それは功績とするところで、ロボ運用そのものは否定しない。

さて、両者とも「急な値下がり時の対応」についての質問がある。これについてどう解釈するかで、リスク許容度が変わってくる。回答の選択肢は、以下の3択。

1.追加で購入する
2.何もしないで様子を見る
3.一部を売却する

この場合、一般に一番リスク許容度が高いのは「追加で購入する」といえる。下落時にあえてリスクを取ってリターンを狙うからである。次に「何もしないで様子を見る」は、ただ嵐が去るのを待って余計なリスクを取ろうとしない。最もリスク許容度が低いのは「一部を売却する」である。売却するということは、その分の利益を確定する、この分だけは絶対お金を減らしたくない、つまりリスクは取らないということである。

■「リスクを取ること=リスク許容度が高い」とはいえない
ところで行動経済学では、同じ金額でも損失に対する感応度は、利得に対する感応度に比べて2.5倍だと言われる。つまり、急落時に「何もしない」ことは、時間とともに損失が増していくと損失感応度も大きくなり、逆にハイリスクな投資行動に出るようになる。「こんなに損したのだから、全部取り返してやる」と投資額をどんと注ぎ込むことになる。そうなると、最大のリスクテーカー(リスクを取りたがる人)は、回答2の「何もしない」者であることになる。

それにまた逆説的だが、リスクテイカーがリスク許容度の高い人とは限らない。「一発大逆転」とばかりに退職金をぶち込んでしまうような人は危なっかしくて、リスクを取ってはいけない人という意味で、かえってリスク許容度は低くなる。人間の心理ひとつとっても、解釈によってはリスク許容度は高くも低くもなる。相場急落時に「嵐が過ぎるのを待つ者」となるか、「嵐の中に入って行く者」となるか、こんなふうにも分かれるくらいなのだ。

そもそも5つくらいの自動質問なら、面談の方が効果的と思える。人間のアドバイザーなら、本人の家計データを見ながらライフプラン全体を分析していくプロセスで、その人の本当のリスク許容度が大体わかるものだ。それでも、そこまでやるのが面倒、簡単に始めたい、無理やり商品を勧められたくないという多くの人にとっては、ロボアドバイザーは確かに投資のハードルを下げている。あとは、自動運用だからといって、すべて自動にお金が増えるとは思わないことだ。

■運用報酬をどう考えるか
今回のロボアドバイザーの例は、「投資一任契約型」である。ポートフォリオ構築から商品選択、積立投資、リバランスまでお任せ運用となる。この自動運用の報酬として、預かり資産の1.0%(税別)が相場である。投資額500万円であれば年間5万円、これは運用が続く限り掛かる金額である。10年で50万円、20年で100万円。投資資産が増えればもっとかかる。リターンと手間、人のアドバイザーを秤にかけて、これを安いとするかどうかである。

【参考記事】
■自動運用「ロボアドバイザー」で資産を増やすために必要なこと (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/49200141-20160802.html 
■老後の年金格差をなくすために(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/51567662-20170628.html
■なぜ人は簡単に投資詐欺にあうのか (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/51339145-20170525.html
■パート社員でも退職金の準備ができる理由と方法 (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/50936755-20170328.html
■リストラされた大企業の社員が、ハローワークに行くと給料が半減する理由(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/50732072-20170227.html

野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー TFICS(ティーフィクス)代表





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