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大学を無償化しようという人がいますが、保育園の無償化を優先すべきです。もしも大学を無償化するならば、厳しい条件を付すべきです。今回は、大学無償化の問題点について、考えてみましょう。


■大学無償化は、国難である少子化の対策より後回しすべし
大学を無償化すべきか否かは、議論がありますが、仮にイェスだとしても、大学の無償化を保育園の無償化等々の少子化対策より優先すべき理由はありません。少子化は国難です。「子供が欲しいけれど経済的な理由で産めない人」が少しでも減るように、保育園を無償化すべきです。出産費用も無償化しましょう。「子供が欲しくても、保育園に預けられないと仕事が続けられないから子供を諦めている人」が大勢いるので、そうした人々を減らすために、保育園の待機児童問題を解消しましょう。大学の無償化を論じるのは、その後です。少子化対策を急がないと、国が滅んでしまいますが、大学を無償化しなくても国は滅びませんから。

「特別優秀な学生の学費を無償にし、将来の日本に大きな貢献をしてもらう」事に反対する人は少ないでしょうが、「高校の卒業生を全員大学に入学させ、学費を無償にする」のは、どう考えても、やりすぎでしょう。人数をどうやって絞るか、どの程度まで絞るか、様々な考え方があると思いますが、結論を先に記せば、「入試の成績が一定以上である学生が、真面目に勉強して卒業出来た場合」に限って学費を免除する、という事だと思います。

■基礎学力が足りない学生は大学で得る物が少ない
大学は、高等教育機関です。高校までの勉強がきちんと理解出来ている学生が、難しい事を学ぶ所です。高校を卒業した人が全員大学に入学しても、学力の足りない学生にとっては得る物が少ないでしょう。理解できない勉強を強要されて期末試験で単位を落として留年するくらいなら、高卒で就職した方が遥かに本人にとっても日本経済にとっても良いはずです。

一方で、日本経済も、大学卒業者ばかりを必要としているわけではありません。むしろ、大学で学んだ事が活かせる仕事の方が少ないかも知れません。そのあたりは、「大学で学ぶ事が何の役に立つのか」という別の大きな議論になりそうですから詳述は避けますが、「高卒の親が、子供には大学を出させてやりたいと考えて無理をして大学の学費を払い、子供が頑張って就職活動をして、結果として親と同じ職業に就いた」、という例が多い事を考えると、今でも大学生の数は多すぎるのかも知れませんね。

具体的には、たとえばセンター試験で一定以上の成績をとった学生だけを対象とする、という事が考えられます。「無償化のための予算を他の予算に振り向けるべき」という声は大きいでしょうから、無償化の対象は最低でも「平均点以上をとった学生に限る」といった所ではないでしょうか。

■真面目に勉強する学生だけを無償化すべき
基礎学力以上に重要な事は、大学で真面目に勉強する学生だけを無償化の対象にすべき、という事です。センター試験が素晴らしい出来でも、授業に出ないで遊んでばかりいる大学生の学費を無償にする必要はありません。

もっとも、どの程度真面目に勉強すれば良いのか、という基準を設けるのは技術的に難しいので、「大学を無事に卒業出来たら、無償にする」で良いでしょう。大学を卒業したという事は、「学生に求められている勉強量に達した」と大学が判断した、という事ですから。

そうなると問題は、卒業出来なかった学生に「4年分の学費を払え」と請求するのか否か、という事です。筆者としては、とりあえず学費は奨学金として貸与しておき、無事に卒業出来たら返済は免除する、という方法が良いと考えていますが。

細かい事ですが、真面目に勉強しても、卒業に5年かかる場合もあります。たとえば期末試験の時期にインフルエンザに罹患して必修科目の単位を落とす事もあるでしょう。そうした場合に4年分の学費を払わせるのは酷ですね。条件としては、「5年以内に卒業出来たら、奨学金の返済を免除する」あたりで如何でしょうか。

■学生証だけが欲しい「偽学生」を排除すべき
「勉強しない大学生」も問題ですが、大学無償化の本当の問題は、大学に入学するつもりが無いのに、学生証をもらって「学割」を使いたい、大学のテニスコートを無料で利用したい、というだけの目的で大学に入学する輩が出て来ることです。

自営業者や非正規労働者などは、そして勤務先の許可を得た正社員も、大学の授業料が無償なのであれば、大学に入学して学割を使うでしょう。多くの大学は「8年経って卒業出来ない学生は放校処分」といった規則を定めていますが、8年経って放校処分となった時点で別の大学に入学すれば良いのです。入試の勉強など不要です。何と言っても大学全入時代ですから(笑)。

そうした「偽学生」が増えると、財政による無駄な補助金が増えるのみならず、大学のインセンティブも低下しかねません。「定員割れをしないように、真面目に教育や大学経営等に取り組む」という必要が無くなるからです。

「偽学生」を排除するためには、入試の点数で無償化の対象を絞るか、卒業を無償化の要件とするか、両者を併用するか、ですね。筆者としては、併用が良いと思います。勉強する意欲が無くても、なぜか頭が良くてセンター試験の点数がとれてしまった人を「偽学生」にしてやる必要はありませんから。

■専門学校も、卒業を条件に無償化
専門学校は、就職に直結する技能を習得出来るので、失業者の職業訓練や高齢者の再就職用にも有益です。こちらは、高校の勉強が理解できていなくても大丈夫でしょうから、要件は卒業することだけで良いでしょう。高校の勉強は理解出来なかったけれど、料理や理髪の専門学校に通って専門家として一流になる人は大勢いるからです。

■最も重要な事は、日本に大学や専門学校の卒業生が何人必要か、という議論
最も重要なことは、大学や専門学校の卒業生が、我が国にどの程度必要なのかをしっかり議論し、それを文部科学省がしっかりふまえて、全体の定員を決めるべきです。法科大学院の惨状を繰り返してはなりません。文科系の博士課程も、それに近い物があるという人も少なくありません。「日本に大学卒業者がどの程度必要か」は極めて大きな問題ですから、文部科学省に任せず、是非とも国民的な議論を盛り上げ、高度な政治のレベルで決定して欲しい物です。

【参考記事】
■新人経済記者に「景気の見方」をアドバイスしてみた(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/51731852-20170720.html
■少子高齢化による労働力不足で日本経済は黄金時代へ(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49220219-20160809.html
■人々が欲張りな方が、経済はうまく行く (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/51371141-20170602.html
■とってもやさしい経済学 (塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12221168188.html
■国債暴落シミュレーション:Xデーのパニック(塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12199602230.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授


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