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2017年2月に国有地を法外な価格で購入したことが発端で問題になった森友学園問題ですが、次から次へと問題が出てきて、8月21日には理事長の籠池氏が補助金詐欺の容疑で再捕されました。論点がどんどん変わってゆくこの問題はどのような行方になるのでしょうか。

■学校法人ってどんな組織?
大人になるまでに一度はお世話になっている人も多い学校法人。分かりやすく言うと○○学園という名称が学校法人の典型的な組織です。学校法人といっても幼稚園から大学、専門学校まで幅広くあります。また比較的新しい学校としては平成18年10月に創設された保育園としての機能を備えた認定こども園もそのうちの1つです。

学校法人になるには、学校として使用している部分の自分の土地と建物を都道府県に寄付し、それと引き換えに運営のための補助金をもらうことになります。学校法人にならなくても学校の経営はできますが、学校法人になると次のようなメリットがあります。

・補助金がよりもらいやすくなる
・法人税などの税金が免除される
・経営が安定化する
・対外的な信用度が増す

補助金の金額は、学校の種類、生徒数や先生の数などによって決まります。また毎年交付される補助金の他にも、改築や耐震補強工事などにも補助金が出ることもあります。お金をもらえたうえに、税金も免除。学校法人は公益法人といって一般的な会社と違ってもうけを目的とした法人ではありません。学校法人には利益という言葉がないかわりに、あまった資金を次の年に繰り越すという考えになるのです。

■学校法人になった経営者が課せられるデメリット
では経営者側には学校法人になるとどういった不都合が生じるのでしょうか。

・土地・建物が自分のものでなくなる
・都道府県(大学の場合は文部科学省)からの監督指導を受けなければならない
普通に考えたらごく当たり前のことです。なぜなら税金の免除という特典に加えて、規模にもよりますが1校に対し、かなりの金額が教育の補助金として都道府県から支給されるからです。

通常の会社は、不正な取引があると、税務署の調査が入ってペナルティーとして税金をさらに追加されます。ただし、学校法人は税金が免除されているため、税務署に申告しない法人もたくさんあります。税務署に申告する法人は学校の経営以外の収入がある法人だけです。監督指導は都道府県の調査として実施されます。

■チェック機能としての調査はどうなのか
都道府県の調査は定期的に行われます。調査項目は理事会などの議事録や年間のスケジュール、時間割、生徒と先生の名簿などといった人事・総務の面や、社会保険の加入、健康診断など実施状況や衛生管理などにわたり幅広く行われるため、特に「経営」と「お金」に焦点を絞って、不正を暴こうとする税務署より不正会計を見抜くことが難しくなります。

また、税務署の職員は、異動があっても、やっている仕事は同じですが、都道府県の役人は関係先との癒着を防ぐため、人事異動があるたびに、まったく違う部署に異動してしまいます。さらに調査は決められた日程で比較的短時間で終わってしまうため、お金に関する不正は税務署より問題にならないことが多いのではないでしょうか。

本来、学校法人は、公費を投入する要件として透明性のある経営をしていかなくてはなりません。しかし、一般的に規模が大きくても理事長などの地位は世襲制で代々同じ親族が経営に関与しているケースも多くあり、不透明になりがちです。

都道府県の監督指導である調査も単なる形式的な管理運営面での指導だけでなく、お金の使い方や不正な取引がないかとうかのチェック機能ももう少し働かせる必要がありそうです。補助金は国民の税金から出されるものです。補助金の垂れ流しにならないために新しいルール作りに取り組む必要が出てきているのではないでしょうか。

■これからの学校法人の経営上の課題とは
文部科学省が毎年実施している「学校法人基礎調査」(平成29年8月3日公表)によると、都道府県の管轄する幼稚園から高等学校までの学校数は、減少傾向にあります。少子高齢化の影響があるのでしょうか、在学する生徒に関しては、小中学校は連続して過去最低を更新し、学校数に関して幼稚園数は、10,877園で前年比375園減少している状況です。

学校法人は補助金や税金の特典など、魅力的な面がありますが、生徒が集まらなければ当然に経営は成り立たなくなります。少なくなっている生徒を集めるために、学校法人はますます魅力のある学校にするための努力やイメージをよくすることが大切になってくるでしょう。

【参考文献】
■なぜ「身寄りのない土地」が今増え続けているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51795315-20170731.html
■タダで簿記の指導をしてもらえる!税務署の無料記帳指導を知っていますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51569189-20170626.html
■ふるさと納税にもはやお得感なし?総務省の要請でブーム終息となるか。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51150747-20170426.html
■世界のシンデレラストーリーは変わった。それは自分の力で起業することである。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/50956238-20170329.html
■年収1000万円超えの会社員は「税金」で貧乏になる。(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/50540586-20170129.html

浅野千晴 税理士

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