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私は乃木坂46のファンである。

昨日(平成29年9月10日)に千葉県の幕張メッセで行われた全国握手会に参加をしたのだが、握手会に付随して開催されるミニライブの場で、キャプテンの桜井玲香さんより、乃木坂46の今年の目玉イベントである東京ドームライブが11月7日(火)・8日(水)の開催で正式決定したことがアナウンスされた。

■秋元真夏さんの「有給休暇」コメント
これに対し、秋元真夏さんが「皆さん、有給休暇の申請をしてライブに来てくださいねー!」と合いの手を入れていた。

ライブ開始時刻は18時であるが、確かに、平日なので、移動時間などを考えると、社会人の場合は、ほとんどの方が半休または全休の有給休暇を取得しなければライブに参加することは難しいであろう。

ただ、残念ながら我が国においては、まだまだ有給休暇の取得しにくい雰囲気の職場は少なくないようである。今回の握手会に一緒に参加した私の友人の中にも「東京ドームライブに参加したいけど、その日に有給が取れるかな?」と、心配をしていた人もいた。

有給休暇は本来、働く人に認められた大切な権利であるし、私自身、乃木坂46ファンの社会保険労務士として、微力なりとも東京ドームライブの成功を応援したいという気持ちもあるので、本稿を執筆し、東京ドームライブに参加するためのスムーズな有給休暇申請方法について考察してみることとした。

乃木坂46ファン以外の方も、有給休暇の取得に関する具体的な知識を得るための読み物として、ご一読を頂けたら幸いである。

■有給休暇の申請は早すぎていけないことはない
たとえば、今日、早速有給申請を出すことを考えてみよう。

ライブは11月初旬なので、会社によっては「2か月近く先の有給を申請されても、先のことは分からないので許可できない」と、拒否されたり判断保留になったりすることがあるようだ。

しかしながら、法的には上記のような会社の考え方は誤っている。

有給休暇は社員本人が望んだ日にいつでも利用できることが大原則なので、会社としてはむしろ、「早めに申請してくれてありがとう」という反応をしなければならない場面である。

すなわち、社員がその日に有給休暇を取得しても業務が回るように、業務計画を組んだり、代替要員を確保したりするのは、法律上、会社に課せられた責務であるので、「2か月も前に知らせてくれてありがとう。調整する時間があるので助かりますよ!」というのが健全な会社の反応なのである。

したがって、その調整の責務を放棄して、社員の有給休暇を認めなかったり、判断保留にしたりするのは、会社の違法行為であると言える。

ただ、実務的には会社が有給休暇を認めてくれない場合、「私には休む権利があるはずです!」といきなり言うと角が立ってしまうので、まずは、「この日はどうしても休ませて頂きたいので、私も事前の段取りはしますから、当日の業務調整をお願いします」と、柔らかく会社側に相談をしてみるのが良いのではないだろうか。

■「代替要員がいないから有給休暇は認められない」は違法
会社がある程度の理解の姿勢を見せて、「じゃあ、休めるかどうか業務調整をしてみよう」という姿勢になってくれたとしても、中小企業においては、「うちみたいな小さい会社では、君が有給を取ったら代替要員がいないので、やっぱり休めないんじゃないかな。申し訳ないが、乃木坂46のライブは諦めてもらえないだろうか。」と、結局NGの回答を出す会社もしばしば見られるようである。

しかし、これも違法である。

代替要員がいないから有給休暇を認めないという対応は許されない。

確かに、会社は法律上、有給休暇の「時季変更権」という権利を持っていて、「その日に社員が有給を取得したら業務の正常な運営ができない」という場合は、社員からの有給申請を断り、他の日に有給休暇を取得するよう求めることができる。

しかし、この「時季変更権」は、たとえば「株主への決算説明会の日に、経理部長が有給を取ることを認めない」というように、高度な必要性がある場合に限られ、「単に忙しい」とか「慢性的に人手不足」は、「時季変更権」を行使する理由にならない。

「うちみたいな小さい会社では、君が有給を取ったら代替要員いない」とう場合は、社員の有給申請を却下するのではなく、場合によっては経営者自らが代役を務めたりしてでも社員に有給休暇を取得させなければならないのだ。

したがって、自分が会社の要職に就いていて、自分がその日いなけれれば業務上大きな影響が出るような社内イベントと、東京ドームライブが重なってしまった、というような状況でなければ、法的には、ライブを優先して、気兼ねなく有給休暇を取得して頂いて大丈夫である。

もちろん、法的には何の問題が無くとも、実務的には「何が何でも有給取ります!」だけでは会社との関係が気まずくなってしまうので、有給休暇を取得する日の前後でなるべく取得当日の仕事を吸収するよう段取りしたりとか、どうして当日に対応が必要なことは、分かりやすいようにリスト化して上司に渡して対応をお願いしたりとか、気配りという意味で、できるかぎりの調整を踏まえながら有給休暇の申請をすれば、会社側も態度を軟化させ、気まずい思いをすることなくライブに参加することができるのではないだろうか。

そこまでの気配りをしても有給休暇を取らせてくれないような会社は「ブラック企業」と言っても過言ではないので、私は、一方的に有給休暇を取ってしまえば良いと思う。それで懲戒解雇でもされたら、間違いなく不当解雇として裁判でも勝てるであろう。

■有給休暇の利用目的で許可・不許可にしてはならない
社員が有給休暇をいつ利用するのかは社員の自由だという話は既にした通りであるが、どのような目的で有給休暇を利用するのかも社員の自由である。

会社が、利用目的によって有給休暇を許可したり不許可にしたりするのは違法である。

しかしながら、病気や法事なら有給休暇を認めるが、旅行や遊びの場合は有給休暇を認めたがらないというような会社や上司も、残念ながら、まだまだ存在するようである。

ライブの日に法事があると嘘をついて有給休暇を取得するといった方法も考えられなくはないが、嘘をつくのは気持ちの良いものではないし、昨今はSNSが発達しているので、ライブに一緒にいった友人が写真をアップしたり、タグ付けをしたりすると、それがきっかけで会社に発覚して「君は法事といって嘘をついていたのかね」と責められることになってしまう。

本来であれば、目的によって有給休暇を許可にしたり不許可にしたりする会社が悪いのだが、嘘をつくことで立場が逆転してしまう可能性がある。

そこで、このような場合の対応として、そもそも論としては、法的には会社に対して有給休暇を取得したい日だけ伝えれば、理由までは伝える必要は無いので、「11月7日は有給休暇を取らせて頂きます」と、有給休暇を取得する事実だけを伝え、会社からそれ以上何も聞かれなければ、そのまま悠々と有給休暇を取得すれば良い。

もし「理由は何ですか?」と聞かれた場合は、「答えたくありません」とか「関係あるんですか?」という答えでは角が立ってしまうので、「ちょっと私用がありまして」と、当たり障りない答えをすれば、何割かの上司は「そうか、分かった」と、有給申請を受け付けてくれるのではないだろうか。

私がサラリーマン時代に勤めていた会社でも、紙で有給申請をすることになっていたが、理由欄には「私用のため」とサラッと書いて、それで何か咎められるようなことは無かったと記憶している。

それでも、「私用とは何かね?」と聞かれたら、具体的な要件を答えざるを得ない雰囲気になってしまうであろう。

そこで「乃木坂46のライブです」と答えて、「そうか、楽しんできたまえ」という上司であれば有難い限りだが、「君、仕事とアイドルとどっちが大事なのかね?」と言うような上司とはトコトン闘って良いと思う。

闘うといっても、口喧嘩をするわけでは無くて、その上司が「有給休暇を利用する目的は社員の自由である」という労働基準法の原則を知らないだけかもしれないので、人事部の担当者や、社内のコンプライアンス窓口に相談をしてみてほしい。

正常な会社であれば、人事部やコンプライアンス担当者が上司に説明をして、有給休暇を取得できるよう取り計らってくれるはずだ。

しかし、そもそも相談する先が無いとか、会社全体が有給休暇を病気や法事で無ければ認めないような雰囲気であるとしたら、やはりブラック企業と言わざるを得ないであろう。

そのような会社であれば、乃木坂46のライブに限らず、プライベートで何かやりたいことが出てきても、なかなか実現することもかなわないだろうから、今回のライブのための有給休暇は無理やりにでも取得して、近々に転職をすることを考えたほうが良いのではないかと私は思う。

会社の体質を、いち社員が変えるということは困難なので、自ら職場を変えるほうが賢明である。

■残業が心配なら有給を申請してしまったほうが良い
最後に触れておきたいのは、たとえば17時が終業時刻の会社で、ライブ会場も近いので、定時で上がればライブ開始に間に合うという場合である。

もともと残業がほとんどない会社であれば心配はないのかもしれないが、会社の体質や、上司のマネジメント力が無くて突然残業を命令されてしまうことが多いような場合は胃が痛い。

私の経験上もそうだが、その場にいて残業を断るというのはなかなか精神的にも難しいものなで、ライブの日ははじめから有給休暇にしてしまったほうが気持ち的に楽になるのではないだろうか。1日休みにすることが難しい場合は、せめて午後半休にしておけば、ライブ開始に遅れることは無いであろう。

■まとめ
有給休暇は、「いつ取得しても」「どのような目的で取得しても」、社員の自由であることが大原則である。

その大原則である法的権利を知った上で、実務的な配慮も織り交ぜながら、うまく勤務先と調整を進めてほしい。そして、無事に有給休暇を取得し、東京ドームライブに参戦して、皆でライブを盛り上げていきたいものである。

《参考記事》
■社員への副業許可の参考にしたい、乃木坂46が生駒里奈さんの「ツアー欠席」「舞台優先」を認めた理由 榊 裕葵
http://sharescafe.net/51919390-20170821.html
■独立するなら学びたい、AKB48のキャリアウーマン岩佐美咲の仕事術 榊 裕葵
http://sharescafe.net/47686063-20160201.html
■AKB48選抜総選挙のスピーチからビジネスマンが学ぶべき言葉 榊 裕葵
http://sharescafe.net/45082578-20150608.html
■社員を1人でも雇ったら就業規則を作成すべき理由 榊 裕葵
http://polite-sr.com/blog/shuugyoukisoku-sakusei/
■電通の「整備された労働環境」は、なぜ新入社員の自殺を生み出したのか? 榊 裕葵
http://polite-sr.com/blog/dentsu_mondai

榊裕葵 社会保険労務士・CFP

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