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■加入期間が25年から10年に
老齢基礎年金は今年8月1日より、受給資格の最低期間が25年から10年に短縮された。これは年金改革の中でも大きなことであるが、施行から1ヵ月以上たってもまだ周知は十分でないようだ。改正により損しない年金のもらい方を喚起しておきたい。

こう言っている矢先、また年金給付漏れが発生した。「また」というのは、2003年にも社会保険庁(当時)時代に約3万3,000人分、計約250億円の振替加算の支給漏れがあったからだ。今回の支給漏れは、約10万6,000人に対して振替加算が総額約598億円も給付されていなかったという。こっちの方が大きく報道され、受給資格短縮については飛んでしまった感じだ。

■25年のカセがはずれて得する人
話を受給資格に戻すと、資格期間の短縮で得する、というか損をしないで正当な年金額をもらえる人が必ず出てくる。従来の受給資格は、年金の加入期間(免除期間・カラ期間を含む)が25年以上と定められていた。将来、満額の年金779,300円、月額にして64,942円(平成29年4月1日改定)をもらうためには40年間の加入が必要となる。最低25年ということは、満額の「40分の25」、現行の年金額では487,062円(月額40,588円)である。

これまでは加入期間が25年に1ヵ月でも満たない場合、つまり仮に24年11ヵ月間、年金保険料を払い続けてきた人は、そのお金は本人にとってドブに捨てたのと同じだった。それだけ払っても年金は1円ももらえなかったからだ。それが10年以上の加入であれば、その期間に応じた年金がもらえるようになった。もっとも、その人が払った保険料は誰かの年金に回るのだから決して無駄にはならないのだが、年数的にもらえる資格がなさそうだとなると、途中で保険料の払込みを諦めていた人も少なくなかっただろう。

本人にとって月額4万いくらのお金が死ぬまで払われるかどうかは、かなりの瀬戸際であったはずだ。それが25年という年数だったわけだ。「ゼロか4万円か」ではなく、「ゼロと4万円の間」でもらえることになったわけだから、瀬戸際にいた人にとってはまさに得する話だ。25年に限らず、20年、15年、10年くらいの加入で諦めていた人にはまさに朗報とも言える。25年というカセがはずれたわけだから、最低10年といわず、15年、20年と逆に期間を伸ばすことだ。

■資格期間短縮で損しないために
①年金の仕組みを知る
そこで、この改正で注意しておきたいことを挙げておく。まず気になることが1つ。これまで25年でもらえた年金と同じ額が、10年でもらえるという基本的な誤解。まさか、そんなふうにとらえている人はいないと思いたいが、意外にも自分が本来もらえる年金額がわかっていない人はそれなりにいる。

今回の改正によって受給資格に該当する人には、日本年金機構から本人宛に通知がいくことになっている。それとは別に、まだ受給年齢に達していない30代、40代でも自分がもらえる年金の仕組みを把握しているかいないかでは、大きな違いとなる。確かに年金制度は複雑で、実際に給付額に誤りがあったり給付漏れがあっても、機構から通知がなければ本人から請求できる人はそういないだろう。改正により漏れが出ないとは言い切れない。年金の仕組みを知っておいて損はない。

②年金の額を知る
特に30代、40代の人にとっては、加入期間10年でもらえる年金額がピンとこないかもしれない。免除期間なしで保険料を払った期間が10年でもらえる年金額は、現行の満額をもとにすると194,825円、月額にして16,235円である。25年から10年に大幅に短縮されて、支払う保険料が少なくなって得したと思う人はいないと思うが、支払う保険料が少なくなる分、もらえる金額も大幅に減る。まずは加入期間に応じてもらえる年金額を知っておくことである。

③加入期間を知る
一般の正規雇用社員に比べて心配なのは、男女問わず非正規雇用の社員である。実態として中小・零細の会社では、パートやアルバイトにまで社会保険に加入させているところは限られている。非正規社員がこのような会社をずっと渡り歩くと、10年にも満たない年金加入期間となりかねない。国民年金の保険料は月額16,490円(平成29年度)、パートやアルバイトにとっては、これだけでも負担となっていて払込みが途絶えがちである。

そういう人は、年金定期便のほか年金事務所や年金機構(ねんきんダイヤル、ねんきんネット)などを利用し、自分の加入期間を早めに把握しておきたい。そして、保険料の支払いが負担な時は、免除申請して加入期間に空白をつくらないこと。免除期間は加入期間に加算されるし、免除額(全額免除・一部免除)によっても年金額に反映されるからだ。

④払い続ける
年金月額16,235円(10年加入)というのは、生活保護の支給額よりはるかに低い金額である。そこで、25年も保険料を払うくらいなら、生活保護で年金と同額以上もらえればいいという安易な考えもないではない。しかし今の制度では、健常な心身の持主で働く能力を欠いていない、つまり働こうとすればいつでも働けると判断されれば、生活保護を受ける資格はない。

確かに何とかこぎつけて10年の加入期間を満たしても、月に2万円に満たない年金額である。だが、10年でとどまろうとせずに20年、30年と年金保険料を払い続ければ、それなりにもらえる年金は増えていくわけである。

■公的年金をコアに積立運用もする
ここで、非正規労働者や自営業者の配偶者(第3号被保険者でない人)など、今後の年金受給について考えておきたい。繰り返しになるが、年金加入期間が10年に満たない人は、何がなんでも10年になるようにするしかない。たかが10年で月額2万円弱といえど、生涯もらえることは大きい。

次に、この10年という期間をできるだけ超えていくことである。受給資格を満たせない人は、70歳まで基礎年金に任意加入できることになっている。受給最低資格を満たしている人であっても、もっと年金額を増やしたいという人は、60歳以降65歳まで基礎年金の任意加入が可能である。しかし、そんな先のことは考えずに、今からでもすぐに加入期間を増やしていった方がいい。

ほとんどの非正規社員にとって、それでも老後資金が不足するのは目に見えている。ほかの稿でも書いたが、やはりその補完対策として大きな役割を果たすのは個人型の確定拠出年金(iDeco)だろう(「転職貧乏で老後を枯れさせないために個人型DCを勧める理由」参照)。今回改正された公的年金をコアに年金額を少しでも増やし、個人型確定拠出年金で補完するという形で、何とか老後の設計を始めてほしい。(このように書くと、金融機関と提携の広告原稿と思われたりするが、中立の立場で書いている。)

【参考記事】
■転職貧乏で老後を枯れさせないために個人型DCを勧める理由 (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/49061150-20160714.html
■税の優遇だけでは語れない確定拠出年金のメリット(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/49633037-20160929.html
■老後の年金格差をなくすために(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/51567662-20170628.html
■なぜ人は簡単に投資詐欺にあうのか (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/51339145-20170525.html
■パート社員でも退職金の準備ができる理由と方法 (野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
http://sharescafe.net/50936755-20170328.html

野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー TFICS(ティーフィクス)代表




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