660518 (1)

フリマアプリ「メルカリ」を運営する(株)メルカリの社長が自ら育休を取得するという。

■社長自ら育休を取得!

メルカリの小泉文明・社長と新規事業を担当する子会社ソウゾウの松本龍祐・社長が約2カ月間の育児休暇に入る。休暇中の業務は他社員が引き継ぐ他、リモートワークも取り入れる予定。(中略)小泉社長は自身のフェイスブックで、「今月第2子が産まれるので、2ヶ月くらい育休取ります。中長期で考えたら家族へのケアは不可欠かなと」と発言。
WWD JAPAN .com「メルカリ小泉社長が2カ月の育休取得へ、子会社社長とともにダブル育休」2017/10/5

同社は急成長を遂げているベンチャー企業だ。大手企業や官公庁で(やや政策的に)男性社員が育休をとることは珍しくなくなりつつあるが、スタートアップ段階のベンチャー企業で、男性トップ自らが育休を取得するというのは珍しいことだと言えるだろう。

■ホワイト企業か否かは、就活における大きなポイントである
順調な業績もさることながら、社長自らが育休を取得するという大胆な選択が可能な環境であり、かつ社員個々のパフォーマンス向上を大切にする企業であると推察ができる。もちろん、急成長中のベンチャー企業であるから、社員にかかるプレッシャーや負荷は相当なものだとは思うが、傍目に見れば、国が推進する「働き方改革」を推進する動きだと言えるだろう。

就活生においては、志望する企業が働きやすいのかどうか(ホワイト企業かブラック企業か)、というのは重大な関心事だ。以前筆者が訪れた合同企業説明会でも、「育休取得実績多数」「年次有給休暇平均取得日数●日」などと、自社の働きやすさについてPRする姿が多く見られた。

とある企業のブースでは、初年度に付与される年次有給休暇の日数を、わざわざ大きなボードに印字し飾っていたほどだ。昨今の売り手市場を背景に、それだけ働きやすさは志望企業選びのパロメーターとなり得るのだろう。「男性社長自らが育休を取得」と聞けば、それだけで即ホワイト企業と絶賛されそうな勢いだ。

■若者雇用促進法のトリセツ
話は変わるが、昨今のブラック企業問題を背景に、国も法律(いわゆる「若者雇用促進法」)を改正し、新卒者の採用に際して請求があった場合は、募集・採用の各種データを開示する義務が課せられた。

例えば、「過去3年間の新卒採用者数・新卒離職者数」「前年度の月平均所定外労働時間の実績」「前年度の有給休暇の平均取得日数」「前年度の育児休業取得対象者数と取得者数(男女別」等のデータである。これらを分析すれば、(企業側が正直であるという大前提があるものの)社員としての働きやすさは見えてきそうである。

ただし、上記の情報は就職活動サイトの企業ページ等への記載が義務付けられている一方、各カテゴリーごとの任意の一項目だけの記載で構わないという運用のため、企業側が開示しやすい情報(求職者受けする情報)のみが提供され得るという懸念もあるのだ。

■個別のデータはいかようにも見せ方を「工夫」できる
例えばある企業の「育児休業取得者数」について、当然だが1日でも育休を取得さえすれば取得者数は1名となる。つまり「配偶者に子供が生まれたら、1日でもいいので必ず育休を取得すること」という運用がなされれば、当該企業の育休取得率は100%となることも可能なのだ。育休取得者数・取得率はもちろん貴重なデータではあるが、そもそも個々の社員が取得した育休の日数とは、全くの別物であるという認識が必要だ。

さらに言えば、仮に育休の取得率が100%であったとしても、新卒の離職者数や所定外労働時間の実績がべらぼうに多かったとしたら、その企業が「ホワイト企業」かどうかは再考の余地があるだろう。仮に男女問わず育休を取得する風土があるとしても、復帰後に連日残業に従事するとすれば、果たしてその企業は子育てがしやすい職場かというのは疑問だ。複数のデータを合わせ見る必要があり、個別のデータだけで判断するのは危険である。

さらに言えば男女問わず育休を取得する・しないは、本来は各々の家庭の戦略(選択)であるべきだ。大切なのは男女問わず育休の取得実績がある、ということではなく、子供を授かった社員が子育てをしながら働き続けることができる職場環境かどうかではないか。

繰り返すが、育休が取れても復帰後は残業三昧で一切休暇がとれないような職場環境であるとすれば、本末転倒だということだ。何を以て「ホワイト企業」と判断すべきか、今一度よく考える必要があるだろう。

■おわりに
なお、冒頭記事で紹介したメルカリは、柔軟かつ画期的な人事制度を導入している会社でもあるそうだ。すでに8カ月分産休・育休期間中の給与を100%受け取れる人事制度が導入されているほか、妊活・病児保育支援、認可外保育園補助、介護休業などの施策を段階的に進めているという(ITmediaビジネスonline「「3つのバリュー」から生まれる“メルカリ流”働き方」2017/10/16)。

社長自らの育休取得については、同社の理念に則った社長自身の選択とも解釈できる。だとすれば、事業を軌道に乗せるための血のにじむような努力をする一方で、社員個々人の能力を発揮させるための諸施策を企画・実行する経営手腕に、キャリアコンサルタントとしては敬意を払わざるを得ない。

【参考記事】
■「給料より休暇が大事」は「自分ファースト」なのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/21650519.html
■「男性の育休取得率100%」は良いことなのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/23246014.html
■「新入社員が2日で辞めた」を防ぐ術は、NHK歌のお兄さん交代に学べ。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/51056896-20170412.html
■「就活に有利な資格ってありますか?」と問われたら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/50823928-20170310.html
■電通新入社員自殺、「死ぬくらいなら辞めればよかった」が絶対に誤りである理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/ キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49739049-20161010.html
後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


この執筆者の記事一覧
このエントリーをはてなブックマークに追加




関連コンテンツ

シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。




執筆者プロフィール