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店舗スタッフの人手不足が深刻です。慢性化するこの状況を、組織はどのように脱すればよいのでしょうか。

■スタッフの充足率が低い店舗に存在する、人手不足“負のスパイラル”
アルバイト、正社員等の雇用形態を問わず人手不足が叫ばれています。飲食業やサービス業など、アルバイト比率の高い業種が話題になることが多いですが、これらの業種すべての店舗が人手不足に陥っているわけではありません。実際には、一年を通して求人メディアでの募集を一切しなくても、スタッフが充足している店舗があります。一方で、常に人材が不足しているお店も数多く存在します。

実は、スタッフが慢性的に不足しているお店には、人手不足が原因で新たな人手不足を呼ぶ「負のスパイラル」が発生しています。

[人手不足“負のスパイラル”とは]
① スタッフが不足する
② 既存スタッフの負担が増え、労働環境が悪化する
③ 離職者が増える
④ ゆとりの無い店舗オペレーションが原因で、応対不良のクレームが増える
⑤ 退職者・来店客よるネガティブなクチコミが行われる
⑥ 求人時の反応が悪化し、ますます①が加速する
以下、①~⑥がループする

■店舗ビジネスだけが抱える、人材不足倒産の危機と悪循環
一見すると、こうした負のスパイラルは店舗ビジネスに限った話ではない、と感じる方もいるでしょう。事務職でも製造現場でも、業種を問わずあらゆる組織で発生する問題に見えますし、実際にどの業種でも似た状況は発生します。しかし、人手不足が発生してループに変わるまでのスピードは、他業種の比較にならないほど店舗ビジネスの方が早いという特徴があり、それには二つの理由があります。

理由の一つ目は、店舗ビジネスはお客様というエンドユーザーが、人材不足による店舗オペレーションの不具合をダイレクトに体感する、ということです。お客様にとっては紛れもなく不快な経験であり、クレームや以降の購入見合わせだけでなく、不快な経験をクチコミで拡散する可能性が極めて高いといえます。

二つ目は、店舗ビジネスの多くは特定の場所で特定の住民を対象にした「地域ビジネス」だということです。これは、そのお店でスタッフとして働く人たちの対象エリアと、お店のお客様が暮らす商圏がほぼ一致している、ということを意味します。元スタッフが誰かに話す職場環境の悪さも、元客が誰かに話すお店への悪口も、すべて「求人に応募する可能性のある人」の耳に入る場所で行われているわけです。悪口が耳に入ってくるお店で働きたいなんて考える人はまれです。

近い将来誰かが店舗スタッフになる可能性の芽を、元スタッフと元客の両輪で踏み潰す状況が店舗ビジネスでは簡単に起こり得ます。この悪循環はどこかで断ち切らないと、人材と売上の両方を同時に失うというジリ貧が待ち受けているのは間違いありません。店舗ビジネスでの人手不足の放置は、事業を廃業に追い込むだけのポテンシャルを持っていると言っても過言ではないのです。

■スタッフの退職理由と向き合わない限り、人手不足の悪循環は解消されない
このように、店舗ビジネスでの人手不足放置は経営に大きな打撃を与えますが、募集すれば簡単に人材が集まる時代ではない今、組織には二つの施策が求められます。一つ目は、既存スタッフが辞めたくなる理由を排除・改善する職場環境の整備、二つ目は、少人数でも店舗運営が行える徹底したオペレーションの省力化・効率化です。しかしその前に、大前提として組織が取り組むべきことがあります。

それは、過去に退職した人たちがどんな理由で組織を去ったのかという問題に真正面から向き合う、という決め事を設けることです。「たったそれだけ?」と感じるかもしれませんが、組織側は往々にして、スタッフが退職する理由をスタッフ側の問題として処理する傾向があります。スタッフが職場環境に大きな不満を抱えて辞めたとしても、「あいつは向いてない」「仕事ができない」「不満が多い」などの烙印を現場で勝手に押して終わらせるケースが散見されます。組織について行けなかった残念な人、という認識で処理されるわけです。

就業を希望して働き出したはずのスタッフが、辞める決断をするに至った理由と向き合わない限り、離職率は決して改善しません。退職スタッフが、もし本当に適性の低い人材だったとしたら、それは組織の採用基準に問題がありますし、仕事のできない人材だったとしたら、それは組織の教育制度に問題があります。基本的にスタッフが退職する原因は、ほとんど組織が自ら生み出したものです。残念ながら、退職理由を本音レベルで聞き出し、自社の改善につなげる仕組みを持つ人事採用部署は、意外なほど少ないのが現実だといえます。

退職するスタッフ本人からの聞き取りや、同僚・部下・上司からの評価を鵜呑みにすることなく退職原因を追究する仕組みが機能することで、組織内の問題が浮き彫りになります。中には思いもよらない問題や、気付いていたけどあえて触れずにいた問題も出てくるでしょう。しかし、組織固有の退職理由を明確にし、原因を確実に潰していくという手順を踏まないと、これからもスタッフの流出は続きます。今は人余りの時代ではないのです、せっかく採用した貴重な人的資産を長期間保有したいのであれば、彼らが辞めたくなる理由を着実に駆逐していく以外に策はありません。

経営に関しては以下の記事も参考になります
■お客様を守るのは売り手の仕事です!(福谷恭治 商売力養成コンサルタント)
http://www.impact-m.net/?p=1905
■マニュアルを超える接客サービスを行うお店を創りたいなら、まずはスタッフがお客様に関心をよせる風土を作ろう(福谷恭治 商売力養成コンサルタント)
http://www.impact-m.net/?p=1770
■「マックなら、大丈夫。」外食大手やコンビニが採用キャンペーンを実施せざるを得ない事情(福谷恭治 商売力養成コンサルタント)
http://sharescafe.net/52129015-20170926.html
■働き方改革で人手不足倒産は防げない(福谷恭治 商売力養成コンサルタント)
http://sharescafe.net/51700271-20170718.html
■経験者を優遇採用する企業に、良い人材が集まらない理由(福谷恭治 商売力養成コンサルタント)
http://sharescafe.net/51541417-20170622.html

福谷恭治 商売力養成コンサルタント インパクトマーケティング代表


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