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悲喜こもごもの結果となった先の衆議院選挙。厳しい選挙戦を勝ち抜いた国会議員が初登院した、というニュースが目に入った。朝5時から国会前に姿を現した新人議員もいるという。

■初登院は朝の5時!

誰もが気負い立つ初めての職場。それが国会となればなおさらだ。「私は5時くらいにやって参りました。新米なものですから、先輩方にごあいさつができたらいいなと少しだけ早く来ようと」
テレビ朝日系(ANN)「初登院の新人議員は「朝5時から」 特別国会が開幕」2017/11/01

新人がやる気をアピールして開門の数時間前から待機、目的が先輩議員へのあいさつというこの行動に、筆者は強い違和感を抱いた。

■5時に来なくてもよいので前夜はしっかり寝て欲しい
第一に、一国民として率直に述べれば、「初登院前日はしっかり睡眠や休養をとり、当日にしっかり職責を果たして欲しい」ということだ。

この議員は朝5時前後に登院したと言うことだが、朝の身支度や朝食等から逆算すれば、どんなに遅くとも3~4時には起床しなければいけないはずだ。

当該議員が前夜何時に床についたかは本人に聞くしか無いわけだが、一般的に初登院前夜ということであれば興奮してすぐには眠られないだろう。睡眠の質は否応なく悪くなる。加えて上記の起床時間から考えても、きわめて少ない時間の睡眠であったと思われる。

ワシントン州立大学の研究チームによっておこなわれた睡眠の実験によれば、「夜しっかり寝るグループ、数時間だけ寝るグループ、そして一睡もしない徹夜グループ。この3グループを比べた結果、なんと数時間しか寝ないのは、徹夜するのと変わらないということがわかった」という(ギズモード・ジャパン「6時間以下の睡眠は徹夜するのと同じだった」2017/01/02)。

上記の実験は2週間程度継続した経過を踏まえてのものだが、睡眠不足がパフォーマンスに悪影響を与えることを示唆している。

■朝5時に来ると、関係者も朝5時までに出勤しますよ
第二に、本人は頑張っているだけなのかも知れないが、周りを巻き込んでいるという認識が必要だと言うことだ。

我々国民の代表である議員の身に何かあっては大変なことだ。当然、深夜・総長に議員が登院するということであれば、国会側は相応の警備体制を敷くことになるだろう。

また、取材しコメントを得ようと、時間にあわせてマスコミ各社も来院するはずだ。期せずして、きわめて早朝からの勤務を強いられる人間が続出するのである。

もちろん、マスコミが取材をするから早朝に登院するという側面もあるだろうが、応援してくれる国民の労働時間強化につながってしまうとすれば不本意なことだ。

■生産性を下げる深夜・早朝登院
第三には、この行為が「新人なんだから出勤時間の3時間前には会社にいる」「先輩に努力をPRするためにとにかく早く出社する」という、きわめて精神論的な言動を想起させるといことだ。

期せずして、大手マスコミ・広告代理店で新人や若手社員の過労自殺が社会問題となっているが、その背景には「新人なのだから身体を張ってなんぼ」というマインドが見え隠れしているとは言えまいか。国民の代表たる国会議員自らがそのような志向で自身の努力をPRするとすれば、苦労して働いている若者やこれから社会に出ようとしている学生に誤ったメッセージを発信することにもなりかねないのだ。

定時に登院し、本人が信念を持ってなすべきことをなす。その結果でもって、我々国民の審判を仰ぐ、というシンプルな形で良いのではないだろうか。

そのためにも、繰り返すが初登院前夜はしっかり寝て、パワー全開で本来の時間に登院して欲しいと願うのだ。無意味なアピールではなく、客観的な成果を示すというビジネスパーソンとして当然の行動を切に求めたい。支持者も、深夜早朝に出勤させたくて一票を投じたわけではあるまい。

■睡眠をとって健康で働いて欲しい。
気になって過去の記事を調べてみたが、深夜・早朝の初登院というのは慣習化しているようだ。

慣習を脱するのは勇気のいることであるが、「働き方改革」「脱長時間労働」と唱えるならば、信念を持って深夜早朝の登院をやめるべきではないだろうか。国会議員の皆さんには、是非心身ともに健康で職務にあたり、我々国民の期待に応える政治を展開して欲しい。

【参考記事】
■「給料より休暇が大事」は「自分ファースト」なのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/21650519.html
■「男性の育休取得率100%」は良いことなのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/23246014.html
■「新入社員が2日で辞めた」を防ぐ術は、NHK歌のお兄さん交代に学べ。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/51056896-20170412.html
■「就活に有利な資格ってありますか?」と問われたら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/50823928-20170310.html
■電通新入社員自殺、「死ぬくらいなら辞めればよかった」が絶対に誤りである理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/ キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49739049-20161010.html
後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


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