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いよいよ12月が近くなりました。仕事も最後の締めで忙しくなる時期ですが、今年103万円を超えそうなパート勤務の主婦はここにきて就業調整することになるのでしょうか?

■来年から103万円の壁がなくなる
現在、年間の収入を103万円以下に労働調整すれば、税金がかからなくなるという主婦の労働調整目的であるといった「103万円」の壁があります。子育て、親の介護、自分自身が病気になった時など、正社員として働くことが難しい人に合った働き方でしょう。

この103万円というのはお給料にかかる所得税がかからないというものですが、一般的に住民税は100万円を超えると課税されますが、社会保険にも加入するまでには至らないため、収入に対する様々な負担もないことがメリットだといえます。

■来年から働いても150万円まで所得税がかからないってホント?
来年、平成30年から配偶者控除が変わり、150万円以下であれば、パート収入での税金もゼロ、夫の配偶者の控除もできるということになりました。この対象となる範囲は夫の収入が1220万円以下の妻に限定するものです。夫の給料が1120万円以下の場合は従来通りの配偶者控除が受けられ、夫の給料が高くなれば高くなるほどその控除できる金額が減っていくという仕組みです。

この給料収入の150万円という水準は、安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である1,000円の時給で1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回るものです。

これだけを聞いたのであれば、「税金が得になるならもっと働こう」と思うかもしれません。

■税金はなくなっても社会保険加入の負担が大きい
しかし、次に問題になるのが「社会保険加入」になる壁です。

社会保険は、本来年収とは関係なく、勤務先で一定の日数や時間数等を満たしていれば会社の社会保険(健康保険や厚生年金など)に加入する必要が出てきますが、130万円を超えると扶養から外れなければならないため、「130万円の壁」と言われています。

社会保険に加入すると、会社と保険料は折半になりますが、その負担額は税金よりはるかに高くなります。例えば東京都在住の30代の女性が年間132万円(月額11万円)の収入があった場合、年間の社会保険の負担額は190,140円(月額15,845円)です。将来受け取ることができる年金が増えることはメリットですが、夫の扶養であれば、健康保険を使うこともできるため、せっかく働いても手取りが少なくなってしまうのが一番の痛手なのではないでしょうか。

労働調整をせずに働いてもらうためには、単に税金だけの問題ではありません。103万円の壁がなくなっても社会保険料の徴収がすぐに始まるため、せっかく税金の枠が広がったとしても、その恩恵を受けることなく、その効果がすっかり削り取られてしまいます。一億総活躍を目指す働き方改革は、こんな形で頓挫してしまうのでしょうか?このような配偶者控除の見直しでは、相変わらずパート労働者はパート労働者の域を超えずに労働調整をすることになってしまうのではないでしょうか。

■所得税改革は始まったばかり
様々な働き方がある現代に、現行の所得税のシステムがあっていないと問題視されて、これからの個人に対する所得税改革として配偶者控除の見直しになりました。

配偶者控除の見直しはこのような個人の所得税改革のトップバッターであり、これからも所得税の改革は続いていくものです。

しかし、所得税より負担が重い社会保険料の徴収形態も考慮に入れなければ、ただの「社会保険料の徴収」の金額をあげたいだけになってしまいます。さらに社会保険加入は個人負担分と会社の負担分があるため、政府の歳入としては単純にも2倍となるわけですが、それは単に「税金で損して社会保険で得をとれ」という方法を見込んでいるのでしょうか。

■世界の女性のためもいいのですが、国内の女性のこともお忘れなく
11月3日、アメリカ合衆国トランプ大統領の長女のイヴァンカさんが来日し、安倍首相は、彼女が設立に関わった、女性起業家を支援する世界銀行グループの基金に5千万ドル(約57億円)を拠出すると表明しました。

世界各国の男女平等の度合いを示した2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」は、144か国中過去最低の114位。世界にアピールも重要ですが、国内女性の支援もお願いしたいところです。

女性の働き方については、今後のさらなる改革が必要となることでしょう。

【参考文献】
■保育料がタダになったらもう一人子供を産みますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52351940-20171031.html
■契約者と保険負担者が別の「名義保険」に税務署は目を光らせている。(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52137631-20170925.html
■これで補助金詐欺を見抜ける?学校法人のお金のチェックは一体どうやっているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51979742-20170831.html
■なぜ「身寄りのない土地」が今増え続けているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51795315-20170731.html
■タダで簿記の指導をしてもらえる!税務署の無料記帳指導を知っていますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51569189-20170626.html

浅野千晴 税理士

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