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2017年も残すところ、あと2日となった。振り返って見ると、この1年におけるビジネス面での大きな変化の1つに、働き方改革などの影響によるフリーランスの増加傾向がある。クラウドソーシング大手ランサーズ株式会社によると、昨年と比べその人口は、1,064万人から1,122万人と58万人、約5%も伸び、人口の約17%を占めるまでに至っている。(2017/03/31 フリーランス実態調査2017より)

■見落としがちなこと
フリーランスの定義には、副業系(本業のスキマ時間を利用した限定的タイプ)、複業系(特定の1社ではなく、複数の企業と契約するタイプ)、そして独立系の3つに分かれる。このうち、副業系を除く、そのビジネスによって収入の多くを占めるケースにおいて特に注意しておきたい、かつ見落としがちなことが3つある。これらは言われてみればその通りなのだが、というものばかりだ。しかし、いざビジネスを開始すると忙しさの中で、わすれがちになるので注意したい。

1つめは、案件獲得の場面における競争の条件は基本的にフリーランスも法人も同じという点だ。顧客側から見たとき、現在抱えている問題を解決してくれるかどうかがが根源的ポイントであって、組織のあり方などは厳密には直接的関係性はない。大企業のほうが有利ではと思われるかもしれないが、このこともあくまで顧客の印象として、「その問題解決の可能性を表すイメージ」の高低に過ぎず、一部の排他的な取引要件を設置する先を除いて、思い込みにすぎないことが少なくない。

2つめは、受注内容のカテゴリーを不用意に増やしてしまうことだ。これは起業系の書籍などでもよく指摘されている通りだ。起業当初、収入の不安定さから、内容の精査がままならないまま、案件を受けてしまう。安定基盤の構築を目的とし、期間限定的に運営するのであれば問題の派生は考えにくいが、短期的目的の獲得である場合は特に注意したい。

3つめは、一時期はニュースなどでも話題になった受注単価の低さだ。ここにも1つめと同様に、ある種の思い込みが潜んでいる。高い単価の提示などしたら失注してしまうのではないか、といったことだ。無論、計算根拠が欠落し、不明瞭に高い価格を提示すればその通りになる。しかし、単なる金額の表層的な印象ではなく、本質的に解決要件的背景として符号するのであれば、価格はその主観性の強さから、それを含んだ提案全体の論証性が十分にあれば意外なほど理解を得られるケースが少なくない。

■予め用意しておきたいこと
上記のような課題をクリアするために、複業系もしくは独立系フリーランスとしてのスタートラインにつく際、準備すべきものとして「参入障壁」とそれに連関する「商品やサービスのパッケージ」がある。

参入障壁と聞くと大事のように聞こえるかもしれないが、要は自社が活動する「特定の事業ドメイン」を設定することにほかならない。例えば、WEBサイト製作であれば、単にホームページを製作する、でとどまるのではなく、「ランディングページ専門」といったように、市場を自社の都合に合わせ、仮想的に独自の視座で切り出すことである。

フリーランスにそのようなものが必要なのかと思われるかもしれないが、どのようなカテゴリーの市場で勝負するのであっても、1プレイヤーとして参加する限り、大企業であれ、フリーランスであれ、プレイヤーの属性を問わず決して欠くことのできない要素だ。どれほどの大企業であっても、必ず特定分野に絞りこまれ、それらの事業は個別に運営されている。他のカテゴリーへの展開は、別会社を立てるか、買収によって傘下に収めるのが一般的だ。

商品やサービスのパッケージ化は、切り出した仮想市場へ投入し、単価の明証化と案件の特性化を実現するために欠かせない。さきほど例として挙げたような「ランディングページ専門」のように、受注する案件の絞り込みと、それによる以降の経験曲線効果が狙いである。

■人を雇うのはできる限り後に
独自の事業ドメインやサービスのパッケージ化などの確立によって仕事が増加すると、少なからず、2つのことが頭をよぎりはじめる。法人化と雇用である。法人化は十分安定した売上が見込めるのであれば問題は少ない。必要条件の1つである経理処理は、会計事務所等を効率的に利活用すればよく、その費用も大きくはない。また、法人化によって有限責任への移行と税金面でのメリットが享受できる。

一方の雇用は、できる限り外部とのパートナーシップで置き換えることをお勧めしたい。言うまでもなく、人件費は固定費である。固定費とは、売上の有無に関わらず、発生する費用のことだ。会計が苦手な人向けに補足しておくと、人件費は家賃と同じ性質を持つと考えてもらって差し支えない。専ら家賃よりも高額になり、利益を圧迫する。

人件費は、会計ルール上、貸借対照表への計上はないが、その性質において、本来資産である。つまり、工場や建物、その他売上を創り出すための十分条件の1つである。翻って、本来目的が期待値に届かない状態にある、さらにはその反復性が所与されていないのであれば、できる限り避けたほうが望ましいことは言うまでもない。

政府が強く推し進める「働き方改革」や年金など将来の不安の広がりによって、フリーランスは来年以降もさらに増加するだろう。これは単なる働き方のあり方が変わるという意味にとどまらず、将来の参加プレイヤーにとっては、そのまま競争の激しさが増すことを意味する。

副業系のような月々の可処分所得を数万円程度増やすといった限定的活動であればさほどの問題はないが、もし本格的な収入の柱としてフリーランスの形態を選ぶのであれば、付帯される諸条件は日頃携わる一般的なビジネスと何ら差がない。働き方改革などの推進によって生まれる新たな可能性には、機会と同時に未限定なリスクが内在している。


【参考記事】
■新しいビジネスモデルを発想する「6つの視点」(酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://financial-note.com/six-view-point-new-business-model/
■不動産業に見る「ジャパネットたかた式」ビジネスモデル(酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://financial-note.com/japanet-style-in-real-estate-business/
■【出版不況】書店業界を救う手立てはないのだろうか (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47952603-20160229.html
■【就活で銀行を選ぶな!】 銀行のビジネスモデルが終焉を迎える日 (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47617542-20160125.html
■ワタミが劇的な復活を遂げる可能性が低い理由 (酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト)
http://sharescafe.net/47314916-20151224.html

酒井威津善 ビジネスモデルアナリスト フィナンシャル・ノート代表


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