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あと1月ほどで、本格的な就活シーズンとなる。経団連の指針によれば、大学3年生の3月1日から会社説明会、4年生の6月1日から面接などの選考活動を解禁とする日程だ。

■売り手市場でも・・・。

就職を希望する今春卒業予定の大学生の内定率(昨年12月1日現在)は前年同期比1ポイント増の86%となり、調査を始めた1996年以降で最高となったこ。景気の回復を背景に、12月現在の内定率は2011年度から7年連続の上昇となった。
読売新聞「今春卒業の大学生、内定率86%…7年連続上昇」2018/1/18

売り手市場と呼ばれる近年の就活だが、まさに一生を方向付ける一大イベントといっても過言ではない。就活生の子を持つ保護者としては、気が気でない心境だろう。

それでは、これから就活に臨むわが子に対して、保護者はどう振舞えばいいのであろうか。いわゆるお受験などで一蓮托生、奮闘した経験もお有りかもしれないが、そのノウハウをそのまま援用できるのであろうか。

キャリアコンサルタントとして結論から言えば、①口は出さない②金は出す等といった、非常にシンプルな対応に尽きる。以下、詳しく解説したい。

■口は出さない
㈱マイナビによる調査(「2017年度就職活動に対する保護者の意識調査」)によれば、子供の就職活動に対して、およそ8割の保護者が「関心がある」と回答した一方で、その環境についての知識を聞いたところ、6割近くの保護者が「知っている」と回答している。

上記の落差については、子供の就活に関心を持ちながらも、残念ながら保護者がその細部まで承知できていない現状を物語っている。前掲調査によれば、「就職活動で話題となる言葉で知っているもの」という設問に対し、「エントリーシート」こそ7割近い(69.6%)認知度があるものの、「オワハラ」「圧迫面接」「エントリー・プレエントリー」を知っている保護者は3割にも満たない(㈱マイナビ「2017年度就職活動に対する保護者の意識調査」2017/04)。

当然、保護者が就活を行ったころとはその事情は一変している。かつて人気の就職先であった銀行も、経営破綻や吸収合併等のニュースも新鮮味に欠けるほどだし、昨今の不景気を背景に絶大な人気を誇った公務員も、地方自治体によっては内定辞退が相次いでいるという。大手広告代理店での新入社員の自死など、たとえ「勝ち組」と呼ばれる就職先でも、わが子が幸福になれる保証などどこにもないのだ。

自分が現職の人事・採用担当者であれば話は別かもしれないが、基本的には、自分の認識(経験)と就活をめぐる現状には乖離があると考えた方が無難だろう。良かれと思って行ったアドバイスが、子供の勇気をくじき、モチベーションを下げる結果となっては悲しいことである。

■金は出す
サポーターズによる「就職活動に関する実態調査」の結果によれば、「就活にかかった費用」を聞くと、全国平均は16万1,215円だった(地域別にみると、「四国」が42万5,000円で最多)。「就活にかかった交通費」は、「5万円~10万円」(23.10%)が最多。「就活用品購入費」をみると、「3万円~5万円」(29.20%)が最も多くなった。「就活中の飲食費」を聞くと、最多は「1万円~3万円」だった(マイナビニュース「就活にかかった平均費用、いくら? 」2016/10/12) 。

就活に係る経費は属人的ではあるが、特に地方在住の就活生には重い出費になる。特に多忙な就活中は体力的にも時間的にもアルバイトが制限されることから、自助努力では賄いきれないこともあるだろう。

就活が始まる前から計画的に貯金をしておく、ということは理想であるが、子供の交通費やスーツ代など、金銭面での急な出費は想定しておいた方が無難なのだ。

■子供を信頼し、一歩引いてみる
ここまで読み進めて、「口は出すな、金は出せとは理不尽な話だ」という感想を持たれた人もいるだろう。保護者は子供の就活に関与できないのだろうか、と問われれば、そんなことはないのだ。

例えば子供が就活において具体のアドバイスを求めてきたとしたら、自身のキャリアを踏まえ、可能な限りのエビデンスを踏まえつつアドバイスをする等、真摯に対応すればよい。

ただし、子供が聞いてもいないことに過度に干渉したり、頼まれもしないのに評価的な態度で接することは厳に慎むべきだ。以下はカウンセリングの現場でも活用する技法であるが、①まずは評価的な態度でなく受容的に話を聞く(話を遮らない、批判しない、馬鹿にしない)②うなずき、あいずちなどを適度に入れ話しやすい雰囲気を作る③適度に質問(~についてどう思う?など)を入れ、考察を深める援助をする等が有用だ。

就活生を一番理解し、そのキャラクターを把握しているのは一義的には保護者であるはずだ。また、保護者は子供が最初に接する職業人でもある。一人の大人として接し、援助を求められた際には適切に対応する、無用な手助けは慎む。そうした基本的な姿勢が望まれるだろう。子供の意向や主体性を尊重しつつ、時には宿り木となるつもりで心身の健康を保持する役割を担いたい。

前掲「2017年度就職活動に対する保護者の意識調査」によれば、内々定獲得効果を高めるのは、親子の信頼関係であり、自分の就職活動のやり方を信じてくれていることが信頼関係構築につながっているという。

就活というまたとない機会に、できればお互いのキャリア観について意見を交わし、洞察を深めるきっかけとしたい。子供のポテンシャルを信頼し、一段高い視点から見守ることが、帆走者たる保護者としての仕事になるだろう。

【参考記事】
■「給料より休暇が大事」は「自分ファースト」なのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/21650519.html
■「男性の育休取得率100%」は良いことなのか。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://goto-kazuya.blog.jp/archives/23246014.html
■「新入社員が2日で辞めた」を防ぐ術は、NHK歌のお兄さん交代に学べ。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/51056896-20170412.html
■「就活に有利な資格ってありますか?」と問われたら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/50823928-20170310.html
■国会議員の皆さん。朝5時から国会前に並ばなくて良いので、しっかり睡眠を取っていい仕事してください。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/52366900-20171102.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


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