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平成29年度の確定申告が今月15日からスタートします。

今年の申告からは、医療費控除として「医療費控除の明細書」を記入すると医療費の領収証をつけなくてもよくなったことと、セルフメディケーション税制といって薬局で指定の薬を購入しての医療費控除の選択ができるようになった点です。

■確定申告での医療費の申告は3人に1人
確定申告で医療費控除をしている人は国税庁で公表されている「申告所得税標本調査結果」によると、平成26年度28.7%,平成27年度29.1%と全申告者の約3割ほどです。実に3人に1人が医療費を申告しているわけですから、かなりの人が医療費控除を目的とした確定申告行っているのでしょう。今までも毎年医療費の袋の中に領収証やレシートをたくさん詰めて申告をしている人も多いのではないでしょうか?

今回の申告からは、明細書を書けば領収証を税務署に提出する必要がなくなりました。さらに健康保険組合などから定期的に送られてくる「医療費のお知らせ」を添付すれば明細の記入も省略できるようになりました。

「医療費の明細書」の用紙は、病院ごと、医療費の区分ごとに医療費を集計しなければならないため、以前の医療費の袋の表面に明細を記入するという点では手間は同じで、何の変化もありません。これに対して「医療費のお知らせ」の通知は、そのまま添付すれば何も書く必要がないのであれば、手間が省けて楽になったと思うかもしれません。

■医療費のお知らせの通知が使えないワケとは
しかし、実はどの明細書でも医療費控除に使えるというわけではありません。

明細書には①保険に入っている人の名前②受診した日③受信した人の名前④病院や薬局の名前⑤支払った金額⑥保険の団体名の6つが書かれていなくてはならないのです。申告時には、健康保険団体からの通知をみて、この6項目が入っていなければ、原則に戻って領収証を明細書に書き写して作成しなくてはなりません。

この明細書はよく見ると不完全なものが多いことに気が付くのかもしれません。例えば、通常3割しか負担していないのにも関わらず、国での負担も丸ごとすべて反映され、あたかもすべての医療費を負担しているように見える明細や、子供の医療費はまったく負担していないのに支払ったように見える明細などがあるからです。

また、各月発行でなく、2,3か月に一度など定期的に発行している明細では、12月の医療費の明細が確定申告に間に合わない場合も出てきます。例えば11,12月に受信した明細が3か月後の3月末に届くケースなどせっかくの明細書が使えないということになります。

さらに、高齢者の場合収入に応じて医療費の負担額が1割と3割がありますが、その負担額がわからない、収入が多くなった年の翌年に1割から3割になったタイミングが負担額として書き込まれていないと正確な医療費の負担額が分からないため、明細書を使うことができません。

■証明書なのに自分で書き足しての証明とは何なのか
実際に、医療費の明細書の発行を促進している厚生労働省から確定申告にも使えるように各健康保険組合への協力を呼び掛けているものの、従来の書式からの移行にまだ間に合わない健康保険組合もあるようです。

そもそもこの医療費の通知は、健康保険組合の加入者に医療にどれだけかかり、窓口で払うだけでなく国の負担も大きいことを認識してもらうために発行しているものです。もともと税金の申告用として生まれたものでなく、あとづけで明細書を利用することになったため、すぐに移行できないのは仕方がないのかもしれません。

この場合には、医療費の明細書に書き込んで正しい金額にすれば明細書を使うことができるのですが、「そのまま使えないから、自分で訂正して書き直して使ってね。」という証明書はそもそも証明になるのかと疑問を感じざるを得ません。添付書類はそのまま添付するから意味のあることなのではないでしょうか。

■従来の申告書通りでも3年間は申告できます
通常、税金は法律改正が決まって、その法律が実施されるまで1,2年かかることが多いものです。法律が決まってから実施に至るまで間に、様々な具体的な事柄を国税庁が決める期間があるのです。

今回の医療費の明細書は不完全なまま確定申告に突入してしまったわけですが、今年の確定申告を含めて3年間は従来の作業と同様に医療費のレシートを袋につめて医療費を提出してもよいことになっています。

セルフメディケーション税制を含め、ますます混乱が多くなりそうな年になりそうですが、医療費という身近な申告だからこそ誰もが簡単にできるようなものにしていく課題がありそうです。

【参考文献】
■オフィスに通わない働き方の「テレワーク」は自営業?それともサラリーマン? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52698692-20171228.html
■来年からの配偶者控除改正。パート労働者の扶養控除が変わっても労働調整はなくならない。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52507713-20171125.html
■保育料がタダになったらもう一人子供を産みますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52351940-20171031.html
■契約者と保険負担者が別の「名義保険」に税務署は目を光らせている。(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52137631-20170925.html
■これで補助金詐欺を見抜ける?学校法人のお金のチェックは一体どうやっているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51979742-20170831.html

浅野千晴 税理士

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