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育ての親が戸籍上の親になることができる特別養子縁組という制度があります。特別養子縁組制度は子供のために軸足を置いてできた制度で、戸籍の記載がほぼ実親子と同様になるという制度です。

国はこの特別養子縁組の年間1000件以上の成立を目指すと謳っておりますが、なかなか目標の達成までたどり着いていません。その背景には、民間と行政の連携が図りにくいといった問題があるようです。

本稿では、なぜ連携が図りにくいのか、その対応策はあるのかといった観点で考えていきたいと思います。

■特別養子縁組制度とは
通常の養子制度の場合、子供は実の親と養親の二組の親を戸籍上持つことになり、戸籍にもその旨が記載されます。しかし、特別養子縁組の場合は実の親との親子関係がなくなり、養親だけが戸籍上の親となるといったものです。

もっとも、戸籍がどうのこうのという感覚はいまいちピンとこない人が多いと思います。普段戸籍を意識して生活する人は少ないと思われますので。

何かいい説明がないかと探していたら、厚生労働省が出している特別養子縁組制度のリーフレットに『自分の子どもとしてあなたの家庭に迎え入れる制度です』とあり、裏面に『「特別養子縁組」が成立すると、お子さんと実父母との法的な親族関係が終了し、お子さんと養親との間で実親子と同様の親族関係が生じます。』とありました。

このリーフレットは非常にわかりやすく考え方を伝えていると思われます。

ただ、このリーフレットに書かれている『お子さんと実父母との法的な親族関係が終了し』という部分は裏を返せば、実父母とは法的な親族関係がなくなるということです。そのため、この特別養子縁組制度を利用するためには実父母の同意が必要になります。

但し、

実父母がその意思を表示できない場合又は、実父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。 特別養子縁組制度について 厚生労働省HP

といったように、必ずしも同意がなくても特別養子縁組制度を利用することもできる道が用意されています。

■目標を掲げて行動しているが
厚労省などは、特別養子縁組の成立件数を5年以内に2015年の544件から倍増させ、年間1000件以上の成立を目指す。報告書案は目標実現のための具体策として、特別養子縁組の対象年齢(現在は原則6歳未満)の引き上げや、児童相談所と民間機関が連携して養父母、養子を支援することなどを挙げた。
特別養子縁組、5年以内に倍増 虐待児への支援で新目標 厚労省 日本経済新聞 2017/7/31


冒頭でも掲げた通り、報道によると国は年間1,000件の特別養子縁組の成立を目指しているとのことです。

もちろん、子供の幸せが一番なので、数値目標を掲げる事が適切かどうかは議論があると考えられますが、目標のないところに改善はあり得ません。そのため、ひとまず本稿ではこの目標の達成をするために何が必要かを考えていきたいと思います。

■民間機関との連携はどうして必要か
前述の記事では児童相談所と民間機関が連携して養父母、養子を支援するとありますが、民間機関と児童相談所の連携が進むとなぜ、目標達成に近づくのでしょうか?

このことは、より広く養親と養子のマッチングの可能性が増えるといった点から理解することができます。

現状の問題点としては広くマッチングを行うことが困難であり、その結果最善の候補者を選定できないことや、特別養子縁組の不成立につながっているといったことが、厚生労働省の討論会で挙げられています。

・ 特別養子縁組が成立した事案のうち、特別養子縁組成立までに養親候補者に打診する際に生じた困難の中に、希望する養親候補者が1組しかおらず複数の養親候補者から最善の候補者を選ぶことができなかったこと、里親に適合する者がいなかったとの意見があった。
・ 特別養子縁組を検討したものの成立には至らなかった事案において、成立までに生じた困難のうち、養親候補者が不存在だったため特別養子縁組を断念した事案が、2年間で 51 件(23.5%)あった。
第15回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会 厚生労働省


ここで議論されたように、養親の候補者が少ないことが子供にとって不利に働いていることが示唆されていいるのです。そして、養親の候補者を増やすために、民間機関と児童相談所の連携を図ることが重要であると考えられます。

■連携するための課題は
ただし、連携するにしてもいくつかの問題があるようです。

「児相が個人情報などを理由に養親候補者の情報を共有しない」(4団体)「児相の職員が短期間で異動してしまう」(6団体)養子あっせん 児相・民間進まぬ連携 読売新聞2018/3/29


報道にある通り、個人情報保護が理由となって情報共有が難しい、児童相談所の職員が短期間で異動してしまうなど課題が多いとされています。

もちろん、個人情報の保護は重要ですが、個人情報を保護しつつ情報の共有を図る仕組みを構築することができれば連携にあたっての一つのハードルを越えることができると考えられます。

■個人に頼るのではなく仕組みを作る
また、児童相談所の職員が短期間で異動するので連携が難しいといった課題については、それを前提条件として受け入れたうえで、連携を図る方法を構築する必要があると考えます。

行政の組織はどの組織でも人事異動はつきものです。もちろん長い目で見たときにそれがいいのかどうかは議論すればいいと思いますが、当面の課題に対応するためにはそれは所与のものとして考える必要があります。

この場合は、人事異動で担当者がいなくなると実際に何が困るのかを明らかにし、その問題が発生しないような仕組み、少なくとも問題を軽減できる仕組みを構築するといった方向性になるでしょう。

また、前掲の資料では能力のある職員の確保が課題であるとされていました。

特別養子縁組成立前後の支援について児童相談所と民間あっせん団体が連携・協働することも考えられる。また、全国で児童相談所及び民間あっせん団体が高い質の支援を行えるようにするため、十分な専門性と経験を有する職員を確保できるようにすることが適当である。
第15回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会 厚生労働省


この十分な専門性と経験を有する職員を確保できるようにするという考え方は確かにその通りだと思われますが、逆に確保できなかったとしても組織として動くようにする必要があります。

人が入れ替わるのが組織ですから、逆に十分な専門性や経験を有しない職員が確保できなかったらどうするかという視点も持つ必要があるのです。

例えば、十分な専門性や経験を有していない職員が担当しても、しっかりとした連携ができる体制を構築することを仕組みとして作り、仮に十分な専門性や経験を有した職員が担当した場合はプラスアルファの対応ができると考える必要があると考えられます。

いずれにしても、大切なのは子供たちのために何ができるかです。課題があるならば、それを解決するための方法を考えていく必要があるでしょう。

【参考記事】
■起業の選択肢として第三者の事業を引き継ぐの事が当たり前になれば、みんなが得をします
http://okazakikeiei.com/2018/02/27/seisan/
■ありふれた商品を相場の数十倍、数百倍で売る方法から考える切り口を代える大切さ
http://okazakikeiei.com/2018/02/27/seisan/
■「あたしおかあさんだから」騒動について、子育て中のおとうさんが考えてみた。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/52979645-20180216.html
■長時間労働を是正して生産性を向上させるためには社会の覚悟が問われます(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49480245-20160907.html
■経営者保証という見えない鎖を外すためのガイドラインを活用し、有限責任というタテマエをタテマエではなくそう(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40440438-20140821.html

岡崎よしひろ 中小企業診断士


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