a0002_012009

日に日に世の中の進歩のスピードが高まっています。それと同時に世の中の不確実性が高まっており、未来がどうなるかを予測することが難しくなっています。

例えば、AIや暗号通貨などちょっと前には話題に上らなかったようなことがトピックになっており、仮にそちらが未来の経済で大きなウエイトを占めるのであれば、今からしっかりと取り組んでおかないと手遅れになる可能性があります。

また、不確実な未来に対応するため、様々な製品を開発したとしても、そのせっかく開発した製品の寿命自体が短くなる傾向が続いています。

この場合の製品の寿命とは、物理的に使えなくなるといったものではなく、売れなくなるといった意味ですが、製造基盤白書(ものづくり白書)2016年版によると、

製品ライフサイクルが10年前と比較してどのように変化しているかを尋ねると、「あまり変わらない」という回答が多い中、すべての業種において「長くなっている」より「短くなっている」企業の方が多い。特に、「電気機械」は34.7%、「化学工業」は30.2%が「短くなっている」としており、製品ライフサイクルの短縮化が進んでいる様子がうかがえる 製造基盤白書(ものづくり白書)2016年版

というように、10年前と比較してさらに製品寿命が短くなっているといわれています。

また、少子高齢社会であるため、労働力のひっ迫感が強くなっており、生産性を向上させないといけないといった生産性向上圧力も高い状態になっています。

■変化に対応するために
このような外部環境の大きな変化に対応するため、部門を横断した働き方や、一見すると本業と関係ないことをしなければならないと義務付ける企業があります。

丸紅は4月から全従業員を対象に勤務時間のうち15%で通常業務から離れ、新しい事業の考案など「社内副業」に取り組むよう義務付ける仕組みを始める。

中略

同様の取り組みはグーグルが導入済み。勤務時間の20%を本業以外に使うことを義務付け社員に新たな事業を立ち上げようとする意識を植え付けている。国内では三井物産が担当業務以外に一定の時間を使える仕組みを一部で導入している。
丸紅「社内副業」義務付け 勤務時間の15%、新事業促す 日本経済新聞 2018/3/31


日々の業務は確かに極めて重要ですが、それだけではイノベーションが生まれないといった危機感が生まれてきており、勤務時間の一定分を変化に対応するために投資するといった取り組みが広がっているのです。

外部環境の変化に対応するために社内副業を義務付け、環境変化に対応していくといった狙いを持っているのでしょう。

と、一見よさそうな考え方ですが、こういった取り組みが話題に上るということは、取り組み自体が珍しいことの裏返しであると考えられます。

しかし、本当にそんなことが可能なのでしょうか。もしうまくいくならば、すべての企業がやるだけの価値がある取り組みではないのでしょうか。

■実はすごいことを要求している
と、この取り組みについて、報道では

国内で勤務する丸紅単体の社員約2700人を対象とし、通常の業務に影響が出ないタイミングを上司と相談して決める。

通常業務はこれまで通り進める。社内の稟議(りんぎ)書や会議、資料の大幅な削減で業務を効率化して時間を確保するとしている。
丸紅「社内副業」義務付け 勤務時間の15%、新事業促す 日本経済新聞 2018/3/31

と詳しく報じています。

この内容から、勤務時間の15%分に当たる社内副業を『通常の業務に影響が出ないタイミングで』義務付けるということが報じられています。

このことから、実は社内副業を義務付けるだけでなく労働生産性を飛躍的に向上させるといっているのです。

どういう事か、簡単に計算してみましょう。

従来の成果、勤務時間をともに100とすると、従来の労働生産性は、
100÷100=1
で1となります。

しかし、記事によると通常業務はこれまで通り進めたうえで、勤務時間の15%を社内副業に充てなければならないわけですから、従来の通常勤務に使える勤務時間は85になります。しかし、成果は従来通り100上げるわけです。

すると、この場合の労働生産性は
100/85≒1.176
で1.176になります。

つまり、現状よりも17.6%の生産性向上を向上させないとこの目標は達成できないということが分かります。

■17.6%の生産性向上は非常にチャレンジングな目標である
この水準の目標がどのような水準の目標であるかを理解するために、我が国の実質労働生産性の増加率を調べてみました。

公益財団法日本生産性本部の調査によると1995年から2016年度までを平均すると我が国の実質労働生産性は年率0.8%の増加となっています。また、直近の2016年度だけでは年率0.5%の増加です。

このことから、我が国の平均と比較しても非常に高い目標を掲げていることが分かります。

報道では、社内の会議や資料の削減など業務の効率化による業務削減で時間を捻出するとありますが、それが簡単にできるぐらいなら「なぜ今までやらなかったんだ」といったといった指摘が株主からあるレベルの改善をするとの水準の改善を目指すといった事が言われているのです。

■精神論にならないようにしたい
将来を見据えて勤務時間の一部を社内副業に充て、新たな価値を生み出そうと考えるのは非常にいいことであるとは思います。

この種の新事業への投資は、専門のチームを編成する等、ある程度の人員を割いて対応するのが常です。しかし、従来の陣容のままで対応するというのが今回の取り組みの特筆すべき点です。

つまり、将来の投資としてコストをかけるのではなく、抜本的な生産性の改善でその人員分のパワーを生み出すとしているのです。

もちろん、大きなチャレンジをすることでしか見えてこない事もありますが、単に必要な犠牲を払わずに成果だけを生み出したいというだけでは、未来への投資ではなく単なる精神論になる危険性があります。

そのため、社内のプロセスなどを一部省略するといった単なる改善にとどまらず、そもそもの要否から検討するといった大改革を行って抜本的な生産性改善を果たす必要が出てくるのです。

この取り組みがうまくいき、社内業務の一つのロールモデルになれば、我が国企業の生産性が非常に高まることが期待されますので、注視していきたいと思います。

【参考記事】
■起業の選択肢として第三者の事業を引き継ぐの事が当たり前になれば、みんなが得をします
http://okazakikeiei.com/2018/02/27/seisan/
■連携が進まないと子供たちが困るなら、何とかして連携する方法を考えるのが大人の役目
http://okazakikeiei.com/2018/04/01/tokubetu/
■将来の稼ぐ力のために今すべきことは、今しないことを決めることです(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/52158511-20170929.html
■長時間労働を是正して生産性を向上させるためには社会の覚悟が問われます(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49480245-20160907.html
■経営者保証という見えない鎖を外すためのガイドラインを活用し、有限責任というタテマエをタテマエではなくそう(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40440438-20140821.html

岡崎よしひろ 中小企業診断士


この執筆者の記事一覧
このエントリーをはてなブックマークに追加



関連コンテンツ

シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。

執筆者プロフィール