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2018年7月23日から27日にかけて全国で官民一体のキャンペーンとしてテレワーク週間が行われました。

職場に出勤せずインターネットを使い自宅や共有オフィスで仕事をする「テレワーク」の促進週間が23日、始まった。2020(平成32)年の東京五輪・パラリンピックに向け、交通機関の混雑を緩和する狙いがある。23日時点で1500の企業・団体、延べ29万人が促進週間に参加する予定で、政府は2千団体の参加を目指す。
自宅で仕事、混雑緩和…テレワーク促進週間始まる 五輪向け2千団体目標 産経WEST 2018/07/23


テレワークを実施することで、通勤時間を省き子育てなどに充てる時間を確保できるとも言われています。

総務省の取りまとめている『平成28年社会生活基本調査』では平日の通勤・通学の平均時間は1時間19分となっているので、この通勤時間を省くことができれば、子育てのみならず生活に余裕ができると考えられます。

このような素晴らしい可能性をもつ制度であり、交通機関の混雑緩和効果も見込めるにもかかわらずあまり見聞きしないのはなぜなのでしょうか。

また、実際にテレワークを推進するためには何が必要なのでしょうか。本稿ではその点を考えていきたいと思います。

■議論の前提に違和感がある
総務省の調査では、17年時点でテレワークを導入済みか導入予定の企業は全体の18.2%。特に従業員300人未満の企業は10.2%にとどまる。導入企業でも半数以上は、制度を利用している従業員の割合が5%未満。
テレワーク週間30万人参加 中小企業への浸透課題 日本経済新聞 2018/07/28


報道によるとかなりの企業がテレワークを導入しているか、導入を検討している印象を受けます。

ただし、この数字には違和感があることを申し添えておきます。中小企業基本法上の定義では国内に大企業が1.1万社、中小企業は380.9万社、合計381万社あり、全体企業の18.2%がテレワークを導入済みか導入予定ということですので、その数は69.5万社にのぼります。

他方、中小企業の場合その比率が10.2%にとどまるということから、38.9万社がテレワーク導入済みか導入検討中ということです。

すると、大企業が1.1万社しかないのにもかかわらず、そのうち30万社程度がテレワーク導入済みか導入検討中でないと数字が合いません。

このような基本的な数値データがあやふやであるということから、政府はテレワーク推進に本気になって取り組んでおらず、掛け声だけである可能性が示唆されます。

※もっとも、厳密には資本金要件と従業員数要件があり、卸売業やサービス業は従業員数100人以下、小売業は従業員数50人以下を中小企業としているのでその辺で数字のつじつまが合うのかもしれません。

■身近にテレワークしている人はいますか?
報道通りの比率の場合、身近でテレワークをしている人がいてもおかしくないはずですが、実際にテレワークを実施している事例を聞いたことがない人も多いはずです。

2014年経済センサスによると我が国の総従業者数は約4,013万人となり、そのうちの18.2%の人が働く企業がテレワークを導入済みか導入予定の企業となりますので、730万人程度が何らかの形でテレワークを導入済みか導入予定の企業に勤めていると言えます。

仮に制度を導入している企業でもその半数以上は、制度を利用している従業員の割合が5%未満とのことです。

多く見積もって730万人の内5%がテレワークを利用していると仮定し計算すると、我が国の36.5万人程度がテレワークを利用したことがあると推定できます。

実際にテレワーク制度を利用している人が36.5万人ぐらいと推定すると、我が国の総従業員数の0.9%程度となるので、身近にテレワークをしている人がほとんどいないといった感想がでるのも無理からぬことなのです。

■テレワークが推進されない理由は
それでは、このように効果があるとされているテレワークが推進されていない理由は何なのでしょうか。

現状、テレワークが推進されない理由の一つとして仕組みの未整備があると考えられます。仕組みとは遠隔地を安全に結ぶネットワークなどのインフラ部分もありますが、それよりもテレワークでどのような業務を行うかが定義されていないとうまく活用できないということが挙げられます。

例えば夏休みの宿題のように、やることが決まっているならば、オフィスにいる同僚等と調整をして業務を行うことが可能です。

しかし、何をやるか厳密に決まっていない場合、テレワークの成果をどう評価するかを客観的に明らかにすることができませんし、客観的でない成果指標で運用するのは一般的に望ましくないとされます。

特に中小企業においては、誰が何をするか業務が明確に定義されているケースは大企業等と比較すると少なく、少ない人員で現場を回すために従業員同士が助け合うといった美しい習慣や、繁閑の差を吸収するためにいろいろな仕事を一人で行う多能工化といった様々な工夫が行われています。

しかし、そこに甘えて仕事が定義されていないとテレワークなどを推進することが難しくなります。

このことは、総務省が平成22年にまとめた『テレワークの動向と生産性に関する調査研究報告書』に挙げられている、テレワークを導入しない理由の1位が「テレワークに適した仕事がないから」(69.0%)であったことからも裏付けられます。

このことは、テレワークに適した仕事が存在しないのではなく、業務を定義していないからテレワークに適した仕事として認識できないと考えることができます。

したがってテレワークの推進をするために仕事を定義していくといった組織面の地道な仕組み作りこそが、テレワークを体験してもらうといった分かりやすい方策よりも重要であると考えられるのです。

また、政府がテレワーク促進週間を打ち出すことも広報面では重要ですが、本当に推進するためには組織面の地道な仕組み作りが重要である旨を周知し、その仕組みづくりを支援していくことが重要だと考えます。

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岡崎よしひろ 中小企業診断士

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