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東京圏から地方の移住に対して最大300万円補助といった報道がありました。

政府は東京圏から地方への移住者に最大300万円を補助する新たな制度を検討する。内閣府が2019年度予算案の概算要求に盛り込む。地方創生推進交付金を活用し国と地方自治体で半額ずつまかなう。費用負担が足かせとなって移住をためらう若年層を後押しする狙い。人口の東京一極集中の抑制を目指す。
東京圏から移住に最大300万円補助 政府、一極集中是正へ新制度検討  日本経済新聞 2018/08/28


本報道からは、なぜ東京一極集中を是正しなければならないのか、その東京一極集中の是正が日本のためになるのか、といったことが分かりません。補助金を支給することが本当に移住を促すことにつながるのか?といったそもそも論も考える必要があるでしょう。

そしてそういったマクロな議論も重要ですが、本稿では移住して起業する個人にフォーカスを当てて、300万円補助は移住したうえでの起業の決め手となりうるか、補助金を当てにした起業はアリなのか考えていきます。

■地方で起業する人が増えれば地域経済は盛り上がる
現在、地方では高齢化と事業承継が進まないことで非常に多くの事業が休廃業に追い込まれています。

中小企業白書2017年版によると、2009年から2014年の期間で廃業した企業は113万社もあり、新規開業した事業者66万社を考慮しても、47万社も企業が減少しています。このように企業数は減少傾向を続けています。

こんな事情もありますので、移住したうえでの起業が増えれば、事業者数も増えますし、人口自体も増えますので地域経済は盛り上がると考えることが可能です。

■個人にとって良い選択なのかを冷静に考える必要がある
総論では創業が増えれば地域経済が盛り上がると言えますが、実際に起業する人にとっては地域が盛り上がることよりも、自分自身の事業が成功するか否かの方がはるかに重要です。

そのため、個人にとって地方に移住して起業するという選択肢にどれだけ合理性があるのかを考えていく必要があります。

■資金面は起業の決め手となりうるか
起業をするにあたって、資金面はどれぐらいの重みがあるのでしょうか。もし、初期の資金面が非常に大きな重みをもっているのであれば、移住して起業のため300万円の補助金を受給することが非常に成功確率の高い選択肢となりえます。

逆に、資金面の重みがそれほどでないのならば、他に必要な要素を満たすことの方が、補助金を受け取ることよりも重要となります。

このことは、国が起業家に対して行った調査である程度の答えが出ています。

中小企業白書2014年版によると、起業家が起業時に直面した課題として資金調達は、経営知識一般(財務・会計を含む)の習得、販売先の確保に次ぐ3位でした。

つまり資金調達は重要ですが、それよりも重要な要素があるというのが多くの起業家の回答だったということです。

このことから起業時に300万円の補助金を支給されるということは、確かに大きいですが、決め手にはならないと言えるでしょう。

■儲かる仕組みを作ることの方が大切
一般論的になりますが、起業をするときにはやはり経営一般について知っておくことが重要ですし、販路の開拓も重要です。

そして「地の利」という言葉もあるように、詳しく知っている地元ならば販路の開拓も比較的容易になりますし、経営について迷ったときに相談する人も比較的見つけやすいといったことが言えます。

逆に言うと、移住して新天地でいきなり起業を考えるというのは、地域の特性も分かりませんし、相談する人も周りにいないといった点でとてもリスクが大きくなります。

また補助金を受け取ると、補助金を活用した設備等はずっと持っていなければならないといった制約がつく場合もあり、経営の自由度が下がります。

そのため、移住し起業した後に分かったことを経営に反映しにくくなるといったリスクもあります。

■補助金が最後の一押しになるなら起業も良い選択肢
補助金が支給されるからと言って移住して起業するというのはリスクが大きい選択となります。

もちろん、起業の準備が整っていて最後の決め手として補助金を活用して移住するというのはとても手堅い戦略です。

そのため、補助金を当てにして起業するのではなく、しっかりと自身の人生設計を描いたうえでの選択としていただきたいと思います。

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岡崎よしひろ 中小企業診断士

【プロフィール】
全ての事業者に事業計画を。2009年に中小企業診断士登録後、地に足の着いた事業者支援に取り組む傍ら、まんがで気軽に経営用語というサイトを運営。朝型生活を実践する2児の父。

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