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9月3日、株式会社ケフィア事業振興会(以下、ケフィア)が破産手続きの開始を告知した。グループ3社と合わせて負債総額は1053億円にのぼると報じられている。

干し柿や焼き芋、ヨーグルト等の食品の製造販売に関する事業を行い、半年後には10%程度の利息を得られると説明して契約者から多額の資金を集めていたという。すでに昨年末頃から配当の支払いが滞り、8月31日には消費者庁が注意を呼び掛けていた。

破産手続きに入った事で契約者が大損することはほぼ確定してしまったが、今回のトラブルはまるで「投資サギの教科書」のように見える。

■立て続けに発生する投資サギ。
昨年末から年明けにかけて、健康食品のロイヤルフーズ、健康機器のジャパンライフ、かぼちゃの馬車(スマートデイズ)と、大型の投資サギや投資のトラブルが相次いでいる。

今年6月の時点で、すでにケフィアの事業に問題があったことや支払いが滞っていることは東京商工リサーチが報じている。多数の苦情が寄せられながら消費者庁がすぐに対応できなかった理由の一つに、ケフィアが「オーナー制度」と呼びながら実際には「投資」ではなく、金銭の貸付や売買契約を装うなど、複雑な取引形態にしていたことも理由のようだ。

2013年7月期には65億円だったケフィアの売り上げは、たった5年の間に急激に増え、2017年7月期には1004億円に達した。売り上げのうち通販事業が100億円、残り900億円はオーナー制度等によるものだという(参照・ケフィア事業振興会 会員向け支払いが遅延、数万人に影響か 東京商工リサーチ 2018/06/15)。

筆者は3月から4月にかけて東洋経済オンラインで投資サギに関する3本の記事で、投資サギや投資のトラブルを避ける簡単な方法を書いた。ケフィアでは分かりやすいほどそれらの条件を満たしている。以下の5つがそのポイントだ。

・金融機関以外での投資である。
・元本保証を掲げる。
・事業の利益に対して利回りが異常に高い。
・手間のかかる個人を対象にしている。
・実際に配当を支払って信用させる(ポンジ・スキーム)。


以下、それぞれのポイントについて解説をしてみたい。

■金融機関で投資サギは発生しない。
投資サギはその時々の時代に合わせて様々なものが投資対象となる。最近では仮想通貨に関わる投資サギも度々報じられた。投資サギとして非常に有名な豊田商事事件も、事件発生当時流行していた金への投資をうたうものだった。

多種多様な投資サギを見ると共通点が全く無いように見えるが、一貫しているのは金融機関での投資ではない点だ。行員がお金を持ち逃げした、営業マンの商品説明に不備があった、といったトラブルは時折発生するが、金融機関で買った株や投資信託の実態が全くありませんでしたという事は無い。

銀行・証券・生保と、強引な販売が問題になるケース等も度々あるが、株や投資信託、保険などの金融商品はトラブルが起きないように何重にもチェック体制が整っている。

例えば株であれば、上場審査を行う証券取引所、監査を行う監査法人、株を売る証券会社、そして金融庁に証券取引等監視委員会と、監視やチェックの目がいくつもある。

それでも粉飾決算などはゼロにはならないが、未上場企業の事業にお金を投じるような、チェック体制がゼロの状況と安全性や信頼性は全く状況が異なる。上場企業であれば投資家の出したお金を経営者が持ち逃げするような事は出来ないが、未上場企業ならば簡単に出来てしまう。

今回のトラブルを報じるニュースでは、破産と聞いてケフィア本社前に来ていた契約者が「お客様をバカにしている」と発言している映像もあった(“干し柿オーナーで高利息”支払い滞り… 日テレNEWS24 2018/09/03)。前述の通り、契約上は投資なのか融資なのか不明だが、少なくとも事業にお金を投じている以上、客の立場ではない。「客」というワード一つとっても、契約者は金融機関での取引と同じつもりでいたのではないか?という事が分かる。

■年利20%が確実に儲かる投資はあるか?
ケフィアのオーナー制度で元本保証は明確にうたわれていないようだが、被害対策弁護団は後日利息を足して元本を支払うとしている点が、元本や利益を保証してお金を集める事を禁じる出資法に違反している疑いがあると指摘する。刑事告訴も検討しているという。

投資サギでは頻繁に耳にする「出資法違反」だが、これは多くの人が元本保証という言葉に弱い事を意味する。実際には元本保証は投資サギの目印と言って良い。銀行等を除いて元本保証をうたうことは違法行為である上に、事業への出資で元本保証などありえないからだ。

利回りが異常に高い点についても、ケフィアでは半年で10%程度の利息・利回りを約束していたようだが、これがありえない高水準であることは多少でも投資の知識がある人ならば一瞬で分かる。

株式投資では、投じた資金に対する利益率をROE、リターン・オン・エクイティという。ケフィアのオーナー制度が半年で10%の利息、単純計算で年間20%の利息を約束するのであれば、最低でもケフィアは20%以上のROEが必要になる。これは日本の上場企業のROEが10%未満であることを考えても異常な高さだ。

食品事業の加工・販売でここまで高いROEを実現するのは並大抵のことではない。仮にROE10%以下の企業が配当を20%も払っていたら、発生した利益を超える資金が流出し、いつかは資金が枯渇する。

そんな難しい話は素人には分からない、というのであればそれは甘えだ。数百万円から数千万円も事業にお金を投じるのであれば、それは立派な「仕事」であり、起業と同じレベルのリスクになる。それだけの資金があれば実際に飲食店を作って起業することも可能だ。もし友人や親族で知識ゼロ、包丁も握ったことがありません、という人がラーメン屋で開業すると言ったら誰でも思いとどまるように忠告するだろう。

起業も投資も最終的には自己責任になる。仮に投資サギであっても、全ての被害を誰かが補てんしてくれるわけではない事を考えれば当然のことだ。

※オーナー制度の利息・利回りは初年度が8%、3年目以降が10%など、半年で約10%とは異なる数値の報道もある。

■和牛商法の安愚楽牧場に似ているケフィア。
そして、カネ余りと言われる現在の状況で企業の資金調達は容易になっている。貸し出し金利も非常に低い。したがって上手く行っている事業で資金が必要な時に、わざわざ手間のかかる個人を相手に数万円~数十万円単位の小口で、しかも高い利回りを約束して資金を集める必要性は全くない。

当初は実際に配当や利息を払って信用させるのも、ポンジ・スキームと言って典型的な投資サギのやり口だ。利回りが20%ならば、手元資金が無くなるまで単純計算で5年は破綻しないですむ。実際には事業をやっているように見せるためのコストや、社員に支払う給料もあるため最初に集めた資金だけで5年は維持できないが、ケフィアは猛烈な勢いで集金力を高めていた。

東京商工リサーチの取材にケフィアの担当者は上記の通り、2017年にはオーナー制度等で900億円も集めたという。2017年7月期に集めた900億円は20%の配当を払ってもまだ多額の資金が手元にあるはずで、残りは全て干し柿等の製造をするために設備投資を行ったのか。もしそうでなければ、ここ5年で集めた資金は昨年11月に止まるまで支払われていた配当以外にどこに消えたのだろうか?

もし筆者の元に客として訪れた相談者から「半年で10%の利回りを得られるという、安全に儲かる投資話をどう思うか?」と相談されたら、5秒も考えずにサギだからやめましょうと答えるだろう。定期預金の金利が年利0.1%もつかないご時世に、安全に、あるいはリスクがゼロなのに半年で10%は冗談のレベルということだ。

ケフィアの事例は当初からサギの意図があったのか、途中から自転車操業的にサギに突入していったのかまだ不透明な状況で、これは和牛商法で4000億円超という投資サギ史上最大の負債を抱えて破綻した安愚楽牧場(あぐらぼくじょう)に近いものを感じる。安愚楽牧場も多い時で国内で飼育される牛の1割に関わっており事業の実態はあった。

■豊田商事事件で戻ってきたお金はたったの1割。
冒頭で契約者が大損をすることはほぼ確定したと書いた。実際に損をした人には腹が立つ話だと思うが、1980年代に当時最大の投資サギ事件となった豊田商事事件でも結果的に被害者に戻ってきたお金は1割に過ぎない。

豊田商事事件では、のちに整理回収機構の社長を務めて「平成の鬼平」と呼ばれた弁護士の中坊公平氏が中心となり、日本全国を駆けずり回って暴力団に殺されかねない危険を冒しながら、文字通り命を削るように資金を回収した。そこまでやっても100億円程度、被害額の1割程度しか被害者にお金は返せなかった。

契約者の被害額を仮にケフィアの負債総額と同じ1000億円と見積もって、現在のケフィアに負債の1割、100億円も手元資金があれば支払いは滞ることはなく、まだ破産宣告には至らなかったと思われる。被害対策弁護団が早急に破産宣告を申請した理由も、被害が拡大することを防ぐため、それに加えてケフィアが保有する資産を保全して少しでも多くの配当を債権者(被害者)に戻すためだろう。

蛇足となるが、投資サギの被害が発生するたびにFPとして何とも言えない無力感を覚えてしまう。現在報じられている被害額は、消費者庁が把握しているだけで340億円、被害者数で2万人超となっている。破産宣告時の負債総額は1053億円、債権者数は3万人超だ。

各種報道でも、数百万円の資金をつぎ込んだ、親子で1500万円も払った、毎月5万円を積み立てるようにお金を投じていた、といった被害者の話も多数報じられている。前述の通りお金を投じている立場でありながら自身を客と勘違いしている人もいる。

相談をしてもらえれば5秒で「冗談のレベルの投資サギ」と分かるような話で1000億も集まるのかと唖然としてしまうが、数百万とか数千万と言ったお金を投じる際に、相談相手としてFPが選択肢に上がらない状況はFPの信用度の低さを端的に示しているともいえるだろう。世間のFPのイメージは保険の営業マンくらいだと思うが、FPのおかげでサギのトラブルが減った、と言われる位になればそのイメージや信用度は飛躍的にアップすることは間違いない。

巨額の被害に発展してしまったが、早期の解決を期待したい。

※本稿の執筆にあたって、ケフィアのトラブルについて最も取材で先行している東京商工リサーチの記事を多数参照・参考にさせて頂いた。

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中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー、シェアーズカフェ・オンライン編集長

【プロフィール】
保険を売らず有料相談を提供するFP。住宅を中心に保険・投資・家計をトータルにアドバイス。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長

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