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干し柿などのオーナー制度で知られる株式会社ケフィア事業振興会(以下、ケフィア)が、1000億円を超す巨額の負債を抱え破産手続きに入った。債権者の多くはケフィアの通販事業の会員で、特に高齢者の被害が目立つという。

オーナー制度の実態は、販売する商品を一定期間後に売値より高く買い戻すことを約束する「買戻特約付売買契約」を利用したポンジ・スキームだ。本稿ではなぜここまでケフィアが信用され多額の資金集めが可能になったのか、その歴史を紐解いて考えてみたい。

■ケフィアのポンジ・スキーム
ポンジ・スキームとは、既存の出資の配当や払戻しのために新たな出資を繰り返し募る、自転車操業のような詐欺や詐欺まがいの仕組みをいう。収益に見合わない高配当をうたうのが特徴で、既存出資者への支払いに必要な額の新規出資を確保できなくなれば破綻するしかない。事業そのものがフェイクであることも多い。

消費者庁によれば、半年後の満期時に売値より10%程度高く買い戻すのが典型的なパターンだったようだ。これは年利20%で半年満期の金融商品に投資するのと同じだが、オーナー制度の場合、商品売買取引であるため金融商品のような厳しい規制はない。金融商品と比べて不正しやすいのは言わずもがなだろう。

年利20%といえば、法律で定められた貸付金の上限金利だ。どんなにハイリスクな貸出先であっても、これを超過して貸せば刑事罰の対象となる。詐欺でなかったとしても、元本が毀損する確率が相応に高いからこその年利20%である。

ただ、ケフィアのポンジ・スキームがそこまでの高利になったのは比較的最近だったようだ。実はケフィアのオーナー制度とは、この会社が20年近く前から形を変えつつ続けてきたポンジ・スキームの、最終第3形態なのである。

■ポンジ・スキーム第1形態
ケフィアのポンジ・スキームの始まりは、2000年3月のケフィアグループ社債共同購入会(以下、ファンド)の設立だろう。ケフィアグループ各企業が発行する社債の購入を目的としたこのファンドは、グラフの通り、解散までの10年間で実に総額232億円もの大金を集めることに成功した。

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この時期にケフィアが多くの関連企業を作ったのは、様々な事業に食指を伸ばしたからではなく、ファンドの投資対象である社債を仕込むためだったのだろうと筆者は推測する。新たな社債を発行するために実体のない新規事業を起ち上げるのはありがちな詐欺商法のやり口だが、それを各事業に特化した別々の会社で行うことで、ケフィア会員のような一般の人には、事業遂行の本気度の証と映ったのかもしれない。

ファンドへの出資の条件は年利3%。さほど高利ではないにもかかわらず、ファンドの解散までに累計30.6億円の純損失が計上されている。関連会社の社債を購入するだけのファンドにそれほど費用がかかるはずはなく、損失の大部分は社債の不履行によるものと考えて良いだろう。それが実際に事業で失敗したためなのかは不明だ。多額の損失を出しながらもこの頃はまだ国民生活センターへの苦情はほとんどなく(参照 ケフィア事業振興会 国民生活センターに相談が急増 東京商工リサーチ 2018/07/05)、新たなポンジ・スキームによって損失補填されていた可能性もありそうだ。

順調だった社債による資金集めをケフィアが諦めたきっかけは、2007年9月に施行された金融商品取引法だろう。それまでやりたい放題だったファンドを使った資金集めに、第二種金融商品取引業と投資運用業の登録という、ケフィアにとってはハードルの高い新たな規制が課せられたのだ。

こうしてケフィアのポンジ・スキームは、第1形態から第2形態へと変容を遂げることとなる。

■ポンジ・スキーム第2形態
厳密に言えば、ファンドで出資金を募っていた頃のケフィアは、現在のケフィアとは別会社である。同社の沿革によれば、ケフィアの創業は1992年(※ファンドの有価証券届出書には1985年設立と記載)だ。これが旧ケフィアである。一方、会社概要で設立年とされる2009年に生まれたのが、現在のケフィアの前身である株式会社ケフィアカルチャーだ。2010年に両社が合併し、ケフィアカルチャーを存続企業とした上で社名を旧ケフィアと同名に変更したのだ。この吸収合併によって一切の権利義務は新会社に引き継がれたが、法人登記簿上はここで綺麗にお化粧されたわけである。

合併と前後して、東京・秋葉原駅近くに新社屋ケフィア・ビルが建設されたのだが、このビルには5000名を超す個人からの借入金の担保が設定された記録が残っており、これら借入金の期限は2015年4月であったという(参照 ケフィア事業振興会 会員向け支払いが遅延、数万人に影響か 東京商工リサーチ 2018/06/15)。これは2010年4月頃に「ケフィアビルパートナー」として募集された5年満期の借入金の条件と合致する。当時の募集内容を見ると、10万円単位の申込みで年利3%、30万円単位なら3.1%の利息が確約されており、かつてファンド出資で約束していた利回りとほぼ同水準であった。

担保設定が適切に行われていることから、ケフィアビルパートナーとして集められたこれらの借入金は実際に本社ビルの建設資金として使われたと見るべきだろう。この建築プロジェクトの成功により、ケフィアは本社ビルだけではなく、新たな集金ツールをも手にしたのである。この後しばらく会員からの資金調達は、グループ企業による借入金の形で募集されていたようだ。以下は、その例である。

・ケフィアインターナショナル借入金(年利3.25%~3.5%)
・かぶちゃんランド借入金(年利3.25%~3.5%)
・かぶちゃんフードサービス借入金(年利3.25%~3.5%)
・ケフィアファッション借入金(年利3.25%~3.5%)
・かぶちゃん農園インターナショナルパートナー(年利3.25%~3.75%)
・かぶちゃんEV事業パートナー(年利6%~6.8%)
(一部参照 飲む前に読む 健康食品サプリのウソ・ホント 週刊ダイヤモンド特集BOOKS ダイヤモンド社 2013/06/18)

ポンジ・スキーム第2形態は、グループ企業による借入金であった。

■個人からの借入が行き詰るのは時間の問題だった
これらの借入金に設定された金利は、当初は概ね3%台半ばであったが、2017年3月頃に募集されたEV事業パートナーでは年利6%以上と高かった。おそらくこの頃には既に、借入金による自転車操業を維持することが難しくなっていたのではないか。

貸金業法では、個人であれ法人であれ特定の相手に反復してお金を貸すのであれば、資金の出し手は必ず貸金業者でなければならないという決まりがある。当然、貸金業者としての登録が必要で、資格も要る。一般の個人にはかなり敷居が高い。どうしても繰り返しケフィアに貸したくて堪らない人がいたとしても、一つの企業がその人から合法的に借り入れられるのは、たった一度限りなのだ。ケフィアが多くのグループ企業を使って借入金の募集を行っていたのは、このためだ。

加速度的に資金を集めなくては維持できないポンジ・スキームとしては、回を追うごとに募集対象者が減る借入金という形をいつまでも続けるのは合理的ではない。規制の少ないオーナー制度に比重を移すことになったのは、ケフィアにとって自然の流れだ。

オーナー制度による売上は、2017年7月期には約900億円に上ったという(参照 ケフィア事業振興会 会員向け支払いが遅延、数万人に影響か 東京商工リサーチ 2018/06/15)。ありえない水準の高利回りを約束する怪しい投資話にもかかわらず爆発的に資金が集まってしまったのは、ファンドへの出資やグループ企業への貸付で、過去に美味しい思いをした会員が大勢いたためだろう(実際にはそう思わされていただけなのだが……)。

長年に渡り醸成された成功体験は、過剰なまでの自信や安心に姿を変え、会員本人たちが気づかぬままに理性的な判断力を奪っていたのである。

人は誰でも、自分がうまくやった過去の実績を疑いたくない気持ちを持っているものだ。それが当たり前であろう。だが、そうした成功体験こそが大きな罠となっているのが、本当は美味しくない「美味しい投資話」なのだ。

いつかあなたが誰か信頼する人などから投資話を聞いて、「これは美味しい」「きっと大丈夫」と思ったとしよう。そこには必ず、あなたの気づいていないリスクや罠が隠れているはずだ。

必ず、である。

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本田康博 証券アナリスト・馬主

【プロフィール】
現役JRA馬主の証券アナリスト。米系金融グループの統計・データ分析スペシャリストとして、投資の評価やリスク推計を担う。日本初の住宅ローン担保証券等、組成した案件の受賞歴多数。京都大学MBA首席。

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