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来年秋には消費税率が8%から10%に上がろうとしています。前回の増税(5%→8%)の時には、消費が予想以上に落ち込み、あやうく景気が後退しかねないリスクがありました。景気は税収という金の卵を産む鶏ですから、性急な増税で景気を腰折れさせることだけは絶対に避けて欲しいと思います。慎重な判断が望まれます。

■税収は順調に増加中
税収は、景気の回復を反映して、順調に伸びています。図をご覧いただくと、名目GDPが少し増減しただけで、税収が大きく増減していることが読み取っていただけると思います。

目盛りは、名目GDPの10分の1が税収となるように設定してありますので、増減率が比較できるグラフとなっています。ちなみに、GDP デフレーターはそれほど動いていませんので、景気を示す指標として実質GDPの代わりに名目GDPを用いました。その方が名目と名目の比較でわかりやすいと判断したからです。

2014年度については、景気は芳しくありませんでしたが、税収は順調に伸びました。これは、消費税率が引き上げられたことによるものです。つまり、消費税率を引き上げても景気が腰折れしないと政府が判断するほど景気が強かったので、税収が伸びた、ということなのです。
0914_塚崎公義


■所得税は累進課税
所得税は原則として、所得が増えると適用される税率が上がります。所得が増えて税率が上がるので、掛け算としての税額は大きく増えることになります。

昨今上がっているのは税率の低い非正規労働者の時給であって、サラリーマンの年収はあまり増えていませんから、雇われている人々が払う所得税は、それほど増えていないかも知れませんが、個人事業主の利益が増えれば彼らの納める税額は増えるので、全体としての税収にも貢献しているはずです。

景気の好調を反映して、株価や地価も上昇していますので、株式や不動産の売却益からの所得税も税収に貢献しているでしょう。株式への配当も増えています。これらの多くは累進課税ではないようですが、所得が増えれば税収が増えることには違いありません。

■法人税も景気回復で増加
企業の利益は、売上が少し増えただけでも大きく増える性質があります。たとえば、空席が多く、従業員がヒマにしているレストランに新たな客が来店しても、費用は材料費しか増えないので、利益は大きく増えます。しかも、不況期は前年の利益率が低いので、増益率が高くなります。

数値例で見てみましょう。固定費が9万円の企業で、売上が20万円、変動費が10万円だとします。この企業の利益は売上から固定費と変動費を引いて、1万円です。

ちなみに固定費とは、正社員の給料のように、売上と無関係にかかる費用のことで、変動費とは材料費のように、売上に応じて増減する費用のことです。

この会社の売上が1割増えて22万円になると、変動費も1割増えて11万円になります。固定費は変わらないので、利益は22万円から9万円と11万円を引いて2万円です。

この会社は、売上が1割しか増えていないのに、利益が2倍になっています。支払う法人税も大幅に増えるはずです。

これは極端な数値例でしょうが、一般論として法人の利益は(上記の個人事業主も同様)、売上が少し増えると利益が大きく増える構造であることはご理解いただけると思います。

財務省の資料を見ると、実際の法人税収は、それほど増えていませんが、これは実効税率が引き下げられているためで、それが無ければ大幅に増えていたに違いありません。

■景気は拡大を続けるはず
景気は、自分では方向を変えません。景気が拡大している時には、そのまま拡大していく力が働きます。「売上が増えると企業は増産のために人を雇う。雇われた元失業者は、給料を受け取って物を買うので、企業の売上は更に増える」といった好循環(景気後退期は悪循環)が生じるからです。

現在の日本の景気は拡大中なので、増税せずに見守っていれば、海外の景気が急激に悪化して輸出が急減したりしない限り、景気は拡大を続け、税収も増加を続けると期待して良いでしょう。

そんな時に、財政再建を焦って性急な増税をして、万が一景気が後退を始めてしまったら大変です。税収は大きく落ち込み、景気対策の公共投資が必要になり、失業手当や生活保護の支払額も大幅に増加しかねません。

是非とも消費税の増税は慎重に検討して欲しいものです。少なくとも、今少し景気が良くなり、東京五輪が終わっても景気に悪影響が出なかったことが確認でき、米中経済戦争の日本経済への影響も見極めがつき、「消費税を引き上げても景気は後退せず、従って失業者も増えない」と確信できるようになるまで待っていただきたいと思います。

増税が1年や2年遅くなっても、大勢に影響はありません。一方で、性急な増税で景気を後退させてしまうことの影響は大きなものがあります。リスクとリターンを比較すれば、待つという判断が妥当だと思われます。

筆者としては、10年か20年か待ち、少子高齢化による労働力不足が一層深刻化し、「景気が良ければ超労働力不足、景気が悪くても失業は生じない」といった時代が来てから増税しても遅くはないと思っていますが、いかがでしょうか。

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塚崎公義 久留米大学商学部教授

【プロフィール】
日本興業銀行(現みずほ銀行)にて、主に経済関連の調査に従事した後、久留米大学に転職。趣味は、難しい事を平易に解説する文章を書く事。SCOL、Facebook、ブログ等への執筆のほか、著書も多数。

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