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現在、人手不足が叫ばれています。生産年齢人口の減少等の要因により、有効求人倍率も高止まりを続けており、人を雇用することは非常に大変な時代となっています。対応策として生産性向上を掲げる企業や組織が増えているのも周知のとおりです。

この働き手不足に対応するためか、政府は留学生の就職業種緩和に動き出しました。

法務省は外国人留学生の就労拡大に向け、新たな制度を創設する。日本の大学または大学院の卒業後、年収300万円以上で日本語を使う職場で働く場合に限り、業種や分野を制限せずに外国人の在留を認める。これまでは大学の専門分野に関連した就労しか認めていなかった。来春にも新制度を導入し、留学生の就労拡大につなげる。
~中略~
留学生が大学卒業後に就労を希望する場合「技術・人文知識・国際業務」など入管法に定める就労資格に変更すれば今も可能だが、学んだ分野と業務に関連性が必要で、選択肢が限られていた。
留学生の就職 条件緩和 年収300万円で業種問わず 2018/09/06 日本経済新聞


せっかく留学してくれた優秀な外国人材をそのまま帰国させるのではなく、日本で働いてもらう方向で検討しているようです。

本稿では外国人留学生の就職受け入れの是非については議論せず、外国人留学生の就職受け入れが中小企業の経営環境にどのような影響を与えるかに絞って議論していきます。

■従来必要とされてきた要件
従来外国人が日本で働こうとしたときには、非常に厳格な要件をクリアーする必要がありました。

法務省入国管理局のパンフレットには、『技術・人文知識・国際業務』の該当例として、『機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等』が挙げられています。記事にもあるとおり、基本的には大学で学んだ分野との関連性が問われていました。これを、分野の制限を取り払う方向へ条件緩和をするということです。

■外国人留学生の受け入れは中小企業にとって朗報か
では、留学生が自らの専門領域に限らず就職できるようになれば、日本全体の人手不足は緩和するでしょうか。確かに、新たな働き手が増えるわけですから多少は緩和されると考えられます。しかし有効求人倍率が緩和されたとしても、企業にとっては肝心の人材を採用できなければ意味がありません。

人手不足で苦しんでいる中小企業にとってこの制度は朗報となりうるでしょうか。残念ながら、私はそうはならないと考えます。

■中小企業が受け入れ態勢を構築するのは難しい
一般論として中小企業が外国人留学生の受け入れ態勢を構築するのは難しいと考えられます。その理由は、文化的背景を共有している日本人の採用であっても、中小企業は大企業と比較して人材の定着に苦労しているためです。

厚生労働省の調査によると、多くの中小企業が該当する規模と考えられる従業員数5人から29人の規模で50.2%が3年以内に離職しています。この数字は、せっかく採用したとしても中小企業においては、2人に1人は3年以内に離職しているということを示しています(厚生労働省の新規学卒者の離職状況調査 平成26年3月卒の大卒就職者)。

一方、従業員数1,000人以上の規模ではその数字は24.3%です。本調査では一貫して企業規模が大きくなるほど離職率が低くなるといった傾向が読み取れます。このように、現在でも大企業と比較して従業員の定着に苦労している企業が多いのが中小企業です。この状況下で、文化的背景の異なる外国人留学生の就職を受け入れ、しっかりと定着してもらうための仕組みを構築できるかというと、非常に大きなハードルがあると考えられます。

■職場環境を整える経営資源は平等ではない
従来は、文化的な背景をあまり考慮しなくとも人材の採用活動を行えたという面で、中小企業も大企業も前提条件は平等でした。

しかし今後は、多様な文化的背景を考慮した職場環境を整えたうえで、採用活動を行うことが求められるようになります。

何も対策を打たなければ、優秀な外国人留学生は職場環境が整った大企業が採用することになると考えられます。

逆に、そのような職場環境を整えることが難しい中小企業においては、依然として人材採用の厳しさが続くということを意味します。

そしてこのことは、従来よりも大企業は人材採用が楽になり、中小企業は採用が厳しくなるといったことを意味します。

■採用活動にもマーケティング的発想が必要となる
では中小企業はどうすればよいのでしょうか。

一般に元気のいい中小企業は、すべての人に対して一様に商品やサービスを提供することを最初から考えていません。

そうではなく、ある特定のマーケットに狙いを絞って自社の商品やサービスを提供していく方向で企業の戦略を立てています。そしてこのような考え方から、大企業と直接競合することなく、独自の地位を築いていくことが可能となっているのです。人材の採用にもそのような考え方が必要になってきたと認識し、行動する必要が出てきたと考えられます。

具体的には、限られた経営資源ですべての外国人留学生をターゲットにするのは難しいと認識して、ある程度採用する外国人留学生の出身国に狙いを定めるなど、誰を採用するかについて考えていく必要があります。

もちろん多様な人材に門戸を開き公正な選考活動を行うことは大前提です。しかしながら、無限に経営資源があるならばいざ知らず、外国人留学生全体を受け入れるための体制づくりには非常に困難を抱えることが予想されます。

そのため、どのような文化的背景を持った人を採用したいのかを明確にしていくというマーケティング的発想が必要となるのです。

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岡崎よしひろ 中小企業診断士

【プロフィール】
全ての事業者に事業計画を。2009年に中小企業診断士登録後、地に足の着いた事業者支援に取り組む傍ら、まんがで気軽に経営用語というサイトを運営。朝型生活を実践する2児の父。

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