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この春大学1年生は、大学生活に期待と不安を持って入学したでしょうが、久留米大学商学部の就職支援責任者である筆者は、今から就職活動に備えよう、というメッセージを新入生に贈ります。

■大学生は大人だから自由と責任がある
入学おめでとう。大学生と高校生の最も大きな違いは、大人として扱われるという事だ。これまでは、勉強しないと怒られた。「勉強しない自由」が無かったのだ。その代わり、ほとんどの高校生は無事に卒業できたはずだ。これからは違う。大学生には講義をサボる自由がある。もっとも、その結果として単位を落として卒業できなくても、それは自己責任だ。

幼稚園児が赤信号を渡ろうとしたら、大人が止めるだろう。もしも渡って怪我をしたら、それは止めなかった大人の責任だ。しかし、大学生が赤信号を渡ろうとしても、誰も止めないだろう。そして事故に遭えば「バカだ」と言われるだけだろう。

以下のアドバイスについても同様である。諸君には筆者のアドバイスを守らない自由はあるが、それによって就活に失敗した時の責任も自分にある。

余談であるが、筆者のアドバイスを鵜呑みにするのではなく、正しいのか否かを自分で判断する事も、大人としては当然である。心されたい。

■4年生の前期は忙しいから、勉強等は前倒し
4年生の前期は、就活で忙しい。もちろん講義に出席したりアルバイトをしたりする自由はあるが、そんな事では就活に専念しているライバルに勝てないだろう。したがって、大学最初の3年間で4年分の勉強をして単位を取り終える事が強く望まれる。

今ひとつ、アルバイトをして金を貯める事も重要である。「就活に何円必要ですか?」という質問を受ける事があるが、就活自体に必要な金額は、普通はそれほど多く無い。しかし、「半年間アルバイトをしなくても飢え死にしない」だけの貯金がないと、就活に専念すべき時にアルバイトをせざるを得なくなってしまう。最低でも3年間で50万円は貯めよう。期末試験の時期を除いて、毎月2万円ずつ貯める計算だ。

■充実した学生生活を送ろう
就職試験で最もよく聞かれる質問は「学生時代に力を入れた事は何か」である。大学での勉強面とそれ以外に分けて答えさせる場合が多い。その答えを用意するため、諸活動に励む必要がある。「特に何もせず、コンビニのバイト以外はゲームをしていました」では、大減点だからである。

「体育会系の運動部で練習に打ち込みました。それにより、気力と体力と忍耐力が強くなりました」が最強であろうが、就活のために運動部に加入するというのも普通の人には辛いだろうから、他の選択肢も検討しよう。

「思い切りアルバイトをして資金を貯め、世界一周旅行に行きました。日本では常識だと思っていた事が世界では常識ではない、という事に気づく事ができました。それからは、当然だと思っている事も本当にそうだろうかと疑ってみる習慣が付き、様々な発見をする事ができました。」というのは如何であろうか。

目標に向かって真剣にアルバイトをする努力、パック旅行ではなく自分で世界を一周する行動力をアピールすると共に「ライバルたちの経験していない事を経験し、多くの物を得た」と主張できるので、高得点であろう。

無難なところでは、「ボランティア活動に打ち込みました。様々な活動を通じて、困っている方の望んでいる事と支援する側が思い込んでいる事のズレを如何に埋めていくのかが重要だと痛感し、相互理解に尽力しました。活動を通じて様々な方々と協力する作業も多かったので、コミュニケーション能力は付いたと思います。」といった物でも良い。何をしたのか、それによってどのように成長できたのか、がアピールできる事なら、何でもトライしてみるべきである。

■情報交換できる友人を数多く作ろう
情報は重要である。「どの先生が単位認定に厳しいか」という情報は、学生にとって最重要であろう。しかし、大学のホームページには掲載されていない「非公式情報」なので、先輩に聞くしかない。自分で先輩を知らなければ、先輩からの情報を持っていそうな友人に聞くしかない。そうした事が聞ける友人を数多く持つ事が、学生生活にとっても就活にとっても重要である。

「あの企業は、こうした質問をする」「あの企業は男女差別が激しいから女子学生は受けない方が良い」といった情報を持っているのといないのでは、全く結果が異なるであろう。

気を付けるべき事は、情報は無料ではない、という事である。いつも友人から情報を得ているばかりだと、友人が君と付き合うメリットを感じないだろう。ギブアンドテイクができる方が、友人関係は長持ちする。就活に必要なのは「一緒にゲームしていて楽しい仲間」ではなく「有益な情報を交換しあえる仲間」なのである。そのためには、自分も他人に感謝される情報を数多く持っておく事である。

友人が大勢いれば、A君から教授による単位認定の厳しさの情報を得てB君に伝え、B君から美味しいレストランの情報を得てA君に伝える、といった事が可能となる。そうなれば、自分は無料で教授とレストランの情報が得られ、しかもA君にもB君にも感謝されるのである。

■大人と話す機会を持とう
大学生としては、学生の友人を数多く作る事が非常に重要であるが、就職活動を考えた場合には、大人と話す機会を数多く持つ事も重要である。面接の時に学生言葉が出てしまわないように、という事もあるが、大人との会話は世の中という物を知る機会だからである。

ゲーム好きな大人とゲームを楽しむだけでは意味が無い。可能ならば話の内容は、仕事の事やニュースの事が望ましい。サラリーマンたちとの間で「最近、こういうニュースを見て、こんな感想や疑問を持ったのですが、どうなのでしょうか」といった会話ができれば最高である。父親でも親戚でも友人の父親でも社会人野球チームのメンバーでも、そうした話に付き合ってくれそうな大人を探す事だ。

「サラリーマンとして働く」という事が、アルバイトとして働くのと如何に異なっているのか、という事をイメージした上で就活に臨めれば、就活はスムーズであろう。最低限、サラリーマン社会を描いたドラマを見よう。小説を読めば更に良い。ミスをして叱られている新入社員や、叱っている上司の立場に自分を置いて、どんな気持ちか考えてみよう。それが、サラリーマンになった時の君の気持ちだ。

■経済に興味を持とう
経済の動きに興味を持とう。いきなり経済関係の新聞記事を読んでもよくわからないかも知れないが、わからなくても毎日眺めていると、少しずつわかるようになってくる。

毎日眺めるための工夫としては、「株式投資信託」を銀行で1万円だけ買う事である。株価が上がれば儲かり、下がれば損をする。損をしても最大1万円だから、小遣いの範囲での遊びなのだが、毎日株価を見たくなり、自然とスマホで経済ニュースをチェックするようになるだろう。そのための1万円を惜しむべきではない。まして、損をすると決まったわけでもないのだから。

諸君が就職活動をするのは3年後であるが、今後の3年間をどう過ごすかで、就職活動の結果は大きく左右されるであろう。冒頭の言葉を繰り返しておく。頑張らない自由を君たちは持っているが、それによって就職活動に失敗しても、それは自己責任である。

頑張りたまえ。健闘を祈る。

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塚崎公義 久留米大学商学部教授

【プロフィール】
日本興業銀行(現みずほ銀行)にて、主に経済関連の調査に従事した後、久留米大学に転職。趣味は、難しい事を平易に解説する文章を書く事。SCOL、Facebook、ブログ等への執筆のほか、著書も多数。

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