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2019年9月9日、強い台風15号が関東地方に上陸した。千葉県市原市では、ゴルフ練習場の鉄製のネット支柱が複数本倒れ、周辺の住宅家屋が倒壊し重傷者が出るなど大きな被害が出た。大きく報じられたことからご存じの方も多いだろう(参照・すさまじい音、外見て「あぜん」 ゴルフ練習場の柱倒壊 朝日新聞 2019/09/09)。

ゴルフ練習場側の代理人からは、天災による倒壊については賠償しないという趣旨の発言があり、物議をかもしている。

台風15号の被害に続き、12日には19号による多大な被害が出ている。台風被害は毎年のように起こっており他人ごとではない。防災に対する備えはメディアでも多く取り上げられているが、今回は法律的な側面から台風被害への備えについて考えてみたい。

■「ゴルフ練習場に責任はない」は本当か?
ゴルフ場の問題は、天災によるものだから賠償の責任がないという主張であるが、これは正しいのだろうか。

ゴルフ練習場の支柱が隣家に倒れこむということは滅多にないことだが、例えば、台風の影響で自宅の瓦が飛んでしまい、隣の敷地に止めてあった車にあたり損害が出たとしたら……。このようなケースならば身近に起こりうる問題だ。

■天災被害であっても賠償責任が発生する可能性は十分ある
結論からいうと台風という天災被害であっても、責任が発生する可能性はある、ということになる。自然災害による被害=責任は無い、とはならない。

日本は毎年のように台風被害に見舞われているのだから、それを想定して建築物を造るべきと考えられる。言い方を変えると一般的に予想される台風被害には耐えうるものであるべきということになる。

あたり一面の建物が倒壊するといった通常では考えられない被害であれば別だが、一般的な台風でも今回のように設備が倒れてしまうような耐久度の低い建物であった場合には賠償責任を負う可能性がある。

また、建築後に建物のメンテナンスをしっかりやっていたかという点もポイントになる。先ほど瓦が飛んだケースを紹介したが、例えば瓦がずれているのにそれを放置していたところ、瓦が隣の敷地の車にあたってしまったとすれば賠償責任が生じる可能性は十分にあり得る。

ゴルフ練習場の件でいえば、建物に構造的な問題がなかったか、また日ごろの修繕・管理は適切に行われてきたかといった点も含め、慎重に検討されなければならない。つまりはケースバイケースだ。

■なぜ住宅密集地にゴルフ練習場があるのか?
そもそもなぜあのような住宅密集地にゴルフ練習場があるのか、といった疑問もあるだろう。

どのような地域にどのような建築物の設置が可能かということは、都市計画法や建築基準法といった法律で定まっている。

地域ごとに建築可能な建築物の種類や用途などの規制がかかっていて、例えば建築可能な高さ制限として高さは10メートル(または12メートル)までという規制がなされるところもある(第一種低層住居専用地域という)。様々な種類の建築物が乱立していると地域の環境が保たれないための工夫がなされているわけだ。

今回の事故の起きたゴルフ場は、もちろん問題なく作られたものだと思われるが、主に住宅専用となっている地域では、ゴルフ練習場など大規模な建物の建築がそもそも規制されている場所もある。

地域の指定は行政によってなされる。利便性を追求するか、そこに住む住民の安全性や住環境を追求するかということは、場合によっては相反する。

台風などの自然災害が年々増加している今日、将来このような被害を生み出さないために地域の設計はどうあるべきか? これは新しい課題となっていくだろう。

■保険契約の勧め
行政による指定が即座に変わることはない。仮に変更があっても既存の建物についてはすぐに取り壊しを命じられるものでもないので、安全な住環境の整備には長い長い年月を要する。

ではどのように備えるかということになるが、保険契約の活用をお勧めしたい。

施設賠償保険というものがある。これは建築物自体や管理方法に問題があり、台風などのきっかけで他人に損害を与えたときに支払われる保険だ。冒頭で触れたゴルフ練習場の件でいえば、保険契約に加入していたとすれば、ゴルフ練習場の建物や管理方法などに問題があった場合には被害を受けた家屋の所有者などに賠償されることになる。

ゴルフ練習場側の主張のように台風による不可抗力の被害ということであれば、ゴルフ練習場が施設賠償保険に加入していたとしても、適用はないことになる。この場合、被害を受けた家屋の所有者が台風被害などに適用される保険に加入していれば、保険による被害賠償を受けることができる。

今回の件では、ゴルフ練習場の建物や管理方法に問題があったかどうかによって、ゴルフ場と住民、どちらの保険が適用となるか変わってくる、ということになる。ゴルフ練習場側としては保険契約に加入していたとすれば、自身の過失の有無については、自身の見解のみならず、保険会社の判断も重要となってくるはずだ。

どちらの保険の適用になるかはさておき、自然災害では自分が被害者にもなれば、加害者になってしまうこともあり得る。法律的な側面での備えとして、保険の加入を検討し、現在加入している保険の商品については内容をよく確認しておくなどの対策が必要だろう。

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及川修平 司法書士

【プロフィール】
福岡市内に事務所を構える司法書士。住宅に関するトラブル相談を中心にこれまで専門家の支援を受けにくかった少額の事件に取り組む。そのほか地域で暮らす高齢者の支援も積極的に行っている。

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