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マスクを大量に購入して高値で転売する人がいるようで、不愉快ですね。でも、転売を禁止すると困った事が起きるので、悔しいですが禁止はしない方が良いのです。その理由を考えてみましょう。

■経済を見るには暖かい心と冷たい頭脳が必要
経済を見るには、暖かい心と冷たい頭脳が必要です。「他人がマスク不足で困っている時に、高値で転売して儲けようなどと考える輩はケシカラン」と考える人は多いでしょうし、筆者もまったくそう思います。それは暖かい心の領域です。

しかし、本稿では敢えて暖かい心を封印して冷たい頭脳にフル回転してもらいましょう。そうすると「不愉快な転売屋ではあるが、禁止すると困った事が起きるので、禁止すべきではない」という事が見えてくるのです。

暖かい心を持った読者は、本稿を読んで不愉快になるかも知れませんが、そこは冷たい頭脳を鍛える訓練だと思って、読者も一緒に暖かい心を封印してお付き合いいただければ幸いです。

■本当に欲しい人が買えなくなるかも
人口が100人で、各自が毎日1枚マスクを買うとします。店には200枚のマスクがありますから、人々は毎日平和に暮らしていました。

ある時、新型肺炎が流行しはじめたので、人々は不安になり「10日分のマスクを買っておこう」と考えるようになりました。20人が買った時に店の在庫がなくなります。

そうなると、残りの80人はマスクが買えなくて困るわけです。新型肺炎の流行が加速してしまうかも知れませんし、持病でマスクが必要な人がマスクが入手できなくて困るかも知れません。

さて、人々が「マスクが10円ならば、10枚買いたいが、20円ならば2枚で良い」と考えているとします。

転売が禁止されていれば、何事も起きないでしょうが、転売が禁止されていなければ、10枚持っている人が転売屋としてマスクを20円で転売するようになり、全員がマスクを手にする事が出来るようになるでしょう。

持病の人にとっては「マスクが無い」という最悪の状態から、転売屋のおかげで、「高い金さえ払えばマスクが手に入る」という「最悪ではない状態」に「改善した」という事になるわけですね。

全員がマスクをする事で流行が抑えられるのであれば、それは日本国にとっても素晴らしい事ですね。悔しいけれど、転売屋がいたから事態が改善したと認めざるをえません。

■外国にマスクが流れて行ってしまうかも
経済はグローバル化しています。日本だけが転売禁止法を作ったとしても、外国で転売禁止法が制定されていなければ、外国の転売屋が日本にマスクを仕入れに来るかも知れません。

そうなると、最悪の場合には「すべてのマスクが外国に売られてしまって、日本人は誰もマスクを持っている人がいない」といった事が起きかねません。

更に言えば、仮にマスクが外国からの輸入品である場合には、そもそも日本にマスクが輸入されないでしょう。外国の転売屋が外国のメーカーから高値で仕入れてしまうからです。

そんな事なら、日本の転売屋に転売を認めて、とにかく日本人がマスクを手に出来るようにしてもらう方が遥かにマシです。悔しいですが。

■転売屋にもインセンティブが必要
1枚10円のマスクを千円で転売するような行為は、さすがに禁止しても良いのかも知れませんが「1枚10円で売れ」というのでは、転売屋のインセンティブがありませんから、転売を禁止したのと同じ事になってしまいます。

1枚11円でも、転売する人は出てこないでしょう。転売屋はリスクを覚悟して儲けを狙っているわけですから、リスクに見合った利益見込みが無ければ商売を始めませんから。

転売屋のリスクとしては、新型肺炎が一気に沈静化してマスクの売れ行きが激減し、手持ちのマスクが不良在庫となってしまう可能性があります。あるいは、マスクメーカーが大増産してマスク不足が解消してしまうかも知れません。

そうしたリスクを覚悟してでも儲けを狙う転売屋が登場するためには、1枚20円くらいまでは認めないと難しいでしょうね。

余談ですが、本来であれば1枚1000円で売る転売を禁止する必要は無いはずです。なぜなら、買い手は多くの転売屋の中から一番安い所に注文を出すので、1枚1000円の転売屋には客が来ないはずだからです。

情報弱者が買う事を見越して高値で販売している転売屋がいるとしたら、読者が情報弱者にならないように気をつける事と、友人知人に情報を提供して情報弱者にならずに済むようにしてあげる事を心がけましょう。暖かい心で人助けをするのです。やっと暖かい心の登場ですね(笑)。

最後になりましたが、亡くなった方のご冥福をお祈りするとともに、罹患された方々の回復をお祈りし、医療関係者などの尽力に感謝します。

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塚崎公義 大学教授

※本稿は筆者の個人的な意見であり、筆者の属する組織等々とは関係ありません。

【プロフィール】
1981年、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に経済関連の調査に従事した後、2005年に久留米大学に転職。趣味は、難しい事を平易に解説する文章を書く事。SCOL、Facebook、ブログ等への執筆のほか、著書も多数。

※2020/03/16 記事の内容とタイトルを一部変更しました。

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