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政府は、所得が減少した世帯限定での30万円の給付を方針転換し、国民1人あたり10万円の一律給付を実施することとしました。

しかし筆者は、消費減税より全員への現金配布より、飲食店等に対する大胆かつ迅速な資金繰り支援策を最優先し、倒産を防止することが最優先だと考えます。その際には、幅広く融資をして条件を満たした先には返済を免除する、という方法が望ましいでしょう。

■消費減税や全員への現金配布では消費は増えない
今次新型コロナ不況は深刻ですから、景気対策を求める声が強いのは当然です。しかし、今の局面では減税や現金配布は消費の喚起にはつながらないのです。

通常の不況では「人々が金が無いから消費しない」ので、減税や現金配布等により消費を喚起することが可能ですが、今次不況は「人々が外出出来ないから消費出来ない」のであって、金を配っても仕方がないのです。

そんなことに予算を使うくらいなら、飲食店等の倒産防止に予算を使うべきです。企業が倒産してしまうと、従業員が失業し、設備機械等がスクラップ業者に買い叩かれるのみならず、企業のノウハウや信用といった物も雲散霧消してしまいます。これは、当事者にとってのみならず、日本経済にとって大きな損失です。

倒産を避けるための大胆な資金繰り支援策が必要です。本来であれば「融資に際してはしっかり借り手の返済能力を審査してから」といったことが必要になるのでしょうが、今回は緊急事態ですから、大胆な政策が講じられるべきでしょう。

筆者のアイデアを記しておきます。基本的には「条件を厳しく設定せずに幅広く融資をして、条件を満たした場合には返済を免除することで給付したのと同じ効果を期待する」という発想です。

具体案としては下記がベストだという意味ではなく、これくらい大胆なことを考える必要がある、ということだとご理解下さい。

■全員に対して税と社会保険料の納付期限を1年待つ
企業は、従業員の所得税等を源泉徴収し、それを政府に納めます。企業自身が負担する税等も政府に納めます。その納付期限を1年間延長することで、企業は政府から1年間の借金をしたことになり、資金繰りの助けになります。

これが優れているのは、何の手間もかからず直ちに資金繰り支援が出来ること、政府の財政赤字が膨らまないこと、等です。税金等は来年になれば2年分が入って来ますから、それまでの1年間を国債発行等によって資金繰りを付ければ良いだけです。

収入が減った企業に限る必要はありません。収入が減った企業に限定すると、申請と審査が必要となり、手間と時間がかかります。一方で、限定せずにすべての税と社会保険料が1年遅れで入って来たとしても、政府にとって困ることは何も無いからです。

■昨年の申告所得の半額までは無条件で融資する
「所得が減っているならば融資します」というのが筋ですが、所得が減ったことを証明する書類を提出させ、それを審査するのは、お互いにとって大変です。そうであれば、昨年の申告所得の半額までは無条件で融資する、という方が遥かに手間がかからず、迅速な資金繰り支援になります。

昨年の申告所得は、脱税で過少申告している企業(自営業者を含む、以下同様)はあるとしても、過大申告している企業は無いと信じて良いでしょうから、その半額を融資することで不正に融資を得る企業は無いはずです。

金利を3%程度に設定すれば、資金繰りに困っている企業は借りるでしょうし、困っていない企業は借りないでしょうから、売り上げが減少しているか否かを調べる必要は乏しいでしょう。

もちろん、資金を借りても倒産してしまう企業はあるでしょうから、貸出金の一部は回収不能になるでしょうが、本当に必要な人を助けるために頑張って、その一部が失敗に終わったとしても、それは決して無駄な金の使い方とは言えないでしょう。

■銀行に中小企業向けの融資を促す
銀行には、中小企業向けの融資の残高を維持するように要請しましょう。「今後2年間融資残高を維持してくれたら、その取引先がその後に倒産した際に銀行の損失の一定割合を政府が補填する」といったインセンティブを与えても良いでしょう。

2年後に倒産が増えて政府の支出が増えるかもしれませんが、不況の2年間を企業が生き延びてくれたことで雇用が守られ、収束宣言後の速やかな景気回復が可能になったのだと考えれば、それは有効な税金の使い方だと言えるでしょう。

更に言えば、銀行が融資残高を増やしてくれたら、それを申告してもらい、その企業が倒産した時には銀行の損失の比較的大きな割合を政府が補填する、というインセンティブも良いかもしれませんね。

■飲食店等は「犠牲者」だから救うべき
今次不況は、政府の難しい決断の結果です。「自粛要請をせずに新型コロナが蔓延するのを黙って見ている」「自粛要請をして飲食店等が苦しむのを我慢してもらう」という選択肢の後者を政府が選択した結果の不況だからです。

筆者個人としては、自粛要請によって罹患するリスクが減りましたが、一方で飲食店は苦境に立たされています。そうだとすれば、筆者は一人の国民として、「消費税の減税も現金の給付も不要だから、その分で飲食店等を助けてあげてほしい」と考える次第です。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等とは関係ありません。

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塚崎公義 経済評論家

【プロフィール】
1981年、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に経済関連の調査に従事した後、2005年に久留米大学に転職。現在は久留米大学商学部教授であるが、本稿は勤務先とは無関係に個人として執筆したものであるため、肩書きは経済評論家と記す。
趣味は、難しい事を平易に解説する文章を書く事。SCOL、Facebook、ブログ等への執筆のほか、著書も多数。

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