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感染症は放置すると加速度的に悪化するから、初期の段階で徹底的に抑え込むべきだと言われています。しかし、不況に関しても全く同じなので、自粛延長の検討には、感染症と景気とのバランスが重要なのです。

■感染爆発を恐れて早期抑え込みを主張する人は多い
感染症は放置していると、患者が1人から2人、4人、8人……という具合に増えていく可能性があるので、少人数のうちに徹底的に抑え込む事が必要だと言われています。

さらには感染者数が増えて医療機関のキャパシティを超えると悲惨な事になるから、それは絶対に避けねばならないとも言われています。

そこまでは筆者も同意します。しかし「そのためには外出自粛を徹底する必要がある」「景気悪化も気になるが、景気の話はコロナ収束後まで待て」と言われると、同意しかねます。

それは、不況も感染症と同様に加速度的に悪化し、あるレベルを超えると金融危機が発生して悲惨な事になるからです。

政府には、感染症の専門家に加えて、経済関係の人の話もよく聞いて、バランスのとれた判断をしていただきたいと思います。緊急事態宣言を続ける場合でも、自粛のレベルを大胆に緩和していただきたいですね。

■倒産は加速度的に増加する
実際、現在は多数の飲食店が苦境に立たされて、すでに倒産したりお店を畳んだりする事例も多数出ています。

外出が自粛となって飲食店等の収入が激減しても、最初の数日で倒産する店は殆どないでしょう。普通の店はある程度の蓄えを持っているからです。

しかし、自粛が長引くと次第に耐えられない店が出てきて、倒産が増えていきます。1ヶ月程度なら持ちこたえていた店が、2ヶ月となると耐えられなくなるケースは多いはずです。

最初は「食材の仕入れ代金は後払い」を許されていた飲食店が、自粛期間が長引くと「仕入れ代金は即金払い」に条件変更されてしまう場合もあるでしょう。食材納入業者としては、不安になるので当然のことです。

そうなると食材の仕入れができなくて倒産する店が出てくるはずです。閉店している店も、いざ店を再開しようと思った時に食材が仕入れられなくて再開できずに結局倒産するかも知れません。

食材納入業者だけではありません。銀行も、最初は暖かい目で見守っていても、自粛が長引くと借り手の返済能力に疑問を持つようになり、厳しい対応をし始めるかも知れません。

連鎖倒産も多発しかねません。飲食店が倒産すれば食材納入業者の売り上げが消えてしまいますし、テナント料が払えなければ貸しビル業者が銀行借入を返済できなくなってしまうかも知れませんから。

収入減が消費を減らして景気を悪化させる悪循環も深刻です。外出自粛措置を受けて多くの飲食店等が店を閉めていますから、アルバイトは収入を断たれています。倒産すれば正社員も失業して収入を断たれます。

収入がなければ消費をしません。そうなると消費が減って倒産等が増え、失業が増えて労働者の収入が減って消費がさらに減る、といった悪循環に陥りかねません。

「外出できないから消費ができない」という人が大勢いるときに「所得がないから消費ができない」という人が加われば、一層景気が悪化して失業が増加するでしょう。

「外出できないから消費ができない」という部分については、新型コロナの収束宣言が出れば元に戻るでしょうが、収入減による消費の落ち込みはコロナが収束しても戻らず、悪循環を続けることになりかねないのです。

飲食店は数が多いので景気への影響が大きいですが、連鎖倒産や悪循環という観点で悪影響が一層明確になるのは観光地でしょうね。観光産業で倒産が相次ぐと、地域のビジネスがすべてアウトになってしまうでしょうから。

■恐ろしいのは、金融危機
恐ろしいのは、金融危機が発生することです。倒産が一定以上のレベルになると、銀行の決算が赤字に転落し、更に倒産が増えると金融危機に発展しかねないのです。

銀行には自己資本比率規制という規制が課されています。簡単に言えば「銀行は自己資本の12.5倍までしか貸出をしてはならない」という規制です。したがって、借り手の倒産によって銀行が赤字になると、自己資本が減るので「貸して良い金額」が減ってしまうのです。

その結果、銀行が「貸し渋り」を余儀なくされることになります。それにより、倒産する企業が一層増えて、景気が一層悪化し、銀行の自己資本が一層減少して更なる貸し渋り等を余儀なくされるといった悪循環に陥りかねません。

万が一にも倒産する銀行が出たりすると大変です。銀行の倒産は一般企業の倒産とは比較にならないほど甚大な悪影響を日本経済に及ぼしますから。さすがに政府日銀が銀行の倒産は防いでくれると期待していますが。

「金融は経済の血液」と言われています。通常時は特に意識されていませんが、いざ金融危機が発生すると、心臓に問題が生じて血液の循環が悪くなった人体のように、様々な問題が生じかねないのです。

■支援措置が完璧たりえない現実を見るべし
自粛派の中には「経済対策は補助金等々の支援で行えば良いのだから、景気派は自粛の邪魔をするな」という人も多いようです。

たしかに、政府による中小企業等への支援措置が完璧であれば、倒産も失業も防ぐことができ、政府が感染症対策として全力の外出自粛を要請したとしても、何の問題もないはずです。

しかしそれは机上の理屈であって、現実を見るべきだと思います。政府の支援策は多様で、広報宣伝も十分とは言えないので、本当に困っている人に情報が行き渡っているかは疑問です。

しかも「面倒な申請書を書かせた上で、本当に支援が必要な企業か否かを確認する」という作業に手間と時間がかかります。その間に倒産する事例も多いでしょう。

ちなみに筆者としては、手間もコストもかけずに多くの人の資金繰りを支援するために「すべての税と社会保険料の納付期限を1年延長する」という支援策を推していますが、超少数説のようです(笑)。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係ありません。また本稿は、厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承下さい。

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塚崎公義 経済評論家

【プロフィール】
1981年、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に経済関連の調査に従事した後、2005年に久留米大学に転職。現在は久留米大学商学部教授であるが、本稿は勤務先とは無関係に個人として執筆したものであるため、肩書きは経済評論家と記す。
趣味は、難しい事を平易に解説する文章を書く事。SCOL、Facebook、ブログ等への執筆のほか、著書も多数。

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