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海外へ財産を持ち出せば税務署は気づかないと信じている方には残念なお知らせです。海外に5,000万円を超える財産をお持ちの方は、平成25年分の確定申告から「国外財産調書」と「国外財産調書の合計表」を確定申告書に添付する必要があります。

昨今、団塊の世代が退職時期を迎えていますが、団塊の世代の退職金は2,000万円(野村證券ライフイベントからみる運用スタイル~退職~)を優に超えている状況です。金融機関は、この機会を逃すまいとNISAやREITを宣伝していますが、憧れの海外物件オーナーの夢を実現させたい方も少なくないはずです。半沢直樹の悪徳社長も海外に投資物件を所有するはずでしたし、関心の高さがうかがい知れます。そのような中、いよいよ税務署も監視の目を光らせはじめましたので、この制度について中身を見ていきます。

税務署も海外財産の把握に苦労している事実

グローバル化に伴い海外で活躍する日本人は増加の一途です。海外を知れば知るほど魅力的な不動産や金融商品に出会い、購入する機会が増えることでしょう。しかし、税務署のグローバル化はその速度についていけず、しかも、税務署員の人数もなかなか増やせません。

従来、海外の財産や所得を把握するためには2つの方法がありました。

租税条約に基づく情報交換 ②国外送金等調書制度

①は、日本は世界67の国・地域と租税条約を結んでおり、この条約に基づいて1年間あたり数十万件の情報交換をしています。②は、国外と100万円以上の送金・入金があった場合に、金融機関が税務署に報告する制度です。

上記①、②の制度では、いよいよ個人の海外資産を把握するのが難しくなったため、今回の改正で海外資産を保有している人に自己申告をお願いするにいたったわけです。しかし、自己申告ですから、その内容が正しいかどうかは本人だけが把握しています。(本人も正しいと信じて作った書類でも間違っているかもしれませんが。)

優遇措置と加重措置

税務署が書類の正確性を担保するために、優遇措置と加重措置を設けます。優遇措置は文字通りおまけをしてもらえ、加重措置は、罰則が加わるというものです。特に加重措置は、うその申告や重大な間違いのある書類が発覚したらただじゃおかないよという意味合いが強いのでしょう。

所得税と相続税(贈与税)が今回の国外財産調書制度の的です。所得税は本人のみぞ知るものなので、こちらは優遇措置も加重措置もあります。一方で相続税は、本人が亡くなった後に家族が知らない海外資産が出てきた時に、家族に罰則が加えられるのはかわいそうなので、優遇措置だけが決められました。いずれにしても、海外資産5,000万円超の資産家は、顧問税理士がすでにいらっしゃると思いますので間違いや漏れはないと思います。多少の手間はかかりますので、報酬も要求されることでしょう。

なお、優遇措置と加重措置の発動は、1年遅れの平成26年分の確定申告からとなります。

提出義務者

毎年12月31日に国外に5,000万円を超える財産を持っている人が対象です。ただし、この対象者が細かく規定されています。具体的には、国内に住所のある方(日本人、外国人を問いませんが、外国人については、さらに過去10年以内に国内に暮らしていた期間が5年を超える場合に限られています。)です。

提出義務者は、この制度により財産の金額やその財産の種類、不動産の場所等が丸裸になってしまいます。もともと合計所得が2,000万円を超える方は「財産債務の明細書」の添付が義務付けられていました。しかし、所得が2,000万円以下の方の財産は把握できなかったため、今回の制度導入によりばっちりと税務署に把握されてしまうことになりました。

なお、相続などによって5,000万円超の国外資産を保有している場合は、、所得税の確定申告義務のない方でも、国外財産調書の提出義務者となりますので、ご注意ください。

これからの対応

平成25年5月24日に国会で可決・成立したマイナンバー法案はご記憶に新しいと思います。このマイナンバーは、平成28年1月以降順次利用されます。上記でご説明した国外財産調書制度とともに、いよいよ国家による国民一人一人の情報管理が始まります。縦割り行政も情報共有という観点から改善が進むでしょう。

税金は所得を元に計算され、社会保険料や年金、高額療養費なども同様に所得を元に計算されるものです。これらの情報が一元化されることは私たちにとっても手続きが簡素化されるのでメリットがあります。年金や失業保険、子ども手当など手続きが遅れると損をする制度は、私たちが気づかないだけで世の中に数多くあります。

しかし、情報一元化が進むと、悪意のある人間にとって、いともたやすく個人の情報を盗んで犯罪に使うこともできてしまいます。これまで以上に私たちは個人情報について厳格に管理し、簡単に漏えいさせないという心構えを持たなければいけません。

マイナンバー法案については、また別の機会にお届けしてまいります。
余談ですが、ゆくゆくは税理士もいらなくなりますね。カードと人差し指で、納税が済んでしまいそうです。(税理士仲間で今のところ笑い話ですが。)

藤尾智之
藤尾真理子税理士事務所 税理士 ファイナンシャルプランナー

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