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1月18日に浜松市で発生した集団食中毒事件について、地元で発生したこともあり経過を追いかけていました。

「これまで以上に徹底する」こととは?

報道によれば、ノロウイルスが検出されたのはトイレのスリッパと女性従業員4名から。この状況証拠からもトイレでウイルスが女性従業員の手か作業服に着いた可能性が高いでしょう。

ところがこの製造工場ではハンドソープはもちろんのこと、手をかざすだけで水が出る蛇口、殺菌作用のあるジェットタオル、トイレから出る際には手に雑菌が付いていると扉が開かないセンサーまで設置されており、通常では工場の中にウイルスが入り込むことは考えにくい状況です。

報道のインタビューの中で会社の取締役の方が「これまで以上に衛生管理を徹底することを誓う」ということをお話されておりました。

私はこの言葉を聞いて二つの疑問を思わずにいられませんでした。
一つは、未だウイルスの感染経路が特定できていない時点でどのような衛生管理の改善をするのか一般の消費者には伝わっていないこと。
もう一つは、万全を期していたはずの衛生設備から想定外の事故が発生し、その件についての調査・分析を徹底して行う、という言葉が聞かれなかったことです。

これはこの会社に限らず、一般の会社においてもミスや事故が発生した際には「これまで以上に細心の注意を払って」「これまで以上に従業員への指導を徹底する」といったコメントが聞かれます。果たしてこのような漠然とした対応で同じ過ちを二度と繰り返さないようにできるのでしょうか。

想定外を想定してみる

今回の集団食中毒の事件について、報道での状況証拠を元に考えられる”想定外”な例を一つ挙げてみます。

まず、女性従業員がトイレで用を足し、ハンドソープで念入りに手をこすり水で洗い流しジェットタオルで手を乾かした。さあトイレから出ようと思ったらスリッパが散らかっていたので片手でスリッパを揃えて片づけた。片手の指三本を使っただけなので大丈夫だろうと手の再洗浄をせず、トイレから出る際にはスリッパを触っていない方の手をセンサーにかざしトイレの扉を開け作業場に戻っていった。

このような状況であれば、いとも簡単にウイルスが付着したままトイレから出ることができます。また従業員の人たちも、自分が善意でやったつもりのことが原因とわかればなおさら真実を語ることは少ないでしょう。

以上の例はあくまでも私が考えた想定外ですので、真実は別にあるかもしれません。このように、会社が万全の体制を整えて衛生管理を行っていたつもりでも、簡単に抜け穴ができてしまいます。

再発防止は徹底した原因追究と問題解決能力

では会社はどうしたらこのような想定外のミス・事故を防ぐことができるのでしょうか?単純に「より一層の注意を」という思考ではダメです。単なるトップダウンの指示だけでもダメです。

まずは徹底した原因の追及。この時にミスをした人にペナルティを与えては本当の原因は分かりません。会社は原因を追究することに専念します。

次に原因が判明したら、会社全体でこのミスを二度と繰り返さないようにするにはどうしたら良いか話し合うこと。従業員も納得する解決策を作り、会社全体でルールを守ろうという意識を持たせることです。

加えて、作業室の入口に殺菌シャワー室を設置する、作業服は会社がまとめてクリーニングするなど、従業員が衛生管理を意識しない状況でも衛生状態が保たれる環境の整備も同時に行う必要があります。

このように、問題が発生した際には「原因究明→防止策の検討→防止策の告知・指導・実施」と体系立てて考えることが必要です。

※この記事を執筆中に、食品工場内で農薬混入事件の犯人が逮捕されたニュースが入ってきました。この記事の事件は「過失」ですが、「故意」の場合についても後の記事で考えてみたいと思います。

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