20131219らせん階段

足元の日本の株式市場は急落の様相を呈しています。
外部環境では、米国の量的金融緩和の縮小やそれに伴う新興国株・通貨の下落に加え、中国や米国経済の不透明感の高まりなどが売り材料となっています。また、4月の消費税引き上げによる国内景気の失速懸念に加え、一部では、ヘッジファンドや年金の解約に伴う需給の悪化も売りに拍車をかけていると言われています。

そうした中、アベノミクスへの期待やNISA開始により、日本株投資を始めた一部の個人投資家の間で、今回のような株価急落により、「トレードうつ」になる可能性が高まっていると見られています。

「トレードうつ」とは?


「トレードうつ」とは、臨床心理の分野とマーケットの投資の分野をつなげる概念で、筆者の造語であり、株式、為替、商品先物など価格変動商品の売買を通じて、うつ症状があらわれることと定義しています。「トレードうつ」の症状が出ると、投資の成果・パフォーマンスが落ち込んだり、心、体への症状からトレードを継続することができなくなったりしますので十分気をつける必要があります。

「トレードうつ」が生じる要因として、自分の精神許容範囲を超えた株式のポジションを抱えたり、マーケットが自分の想定外の動きとなり、現状をうまく受け止められず、変化への対応が分からなかったり、遅れたりすることで、人によっては命と同等、もしくはそれ以上に大事と考えるお金・資産が目減りし、ストレスを受けてしまうことが挙げられます。

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「トレードうつ」の症状は、心とともに体にもあらわれてきます。

以下の症状が複数でてきたら、あなたも「トレードうつ」かもと思って気をつけてください。もし、まわりにそのような方がいらっしゃれば、「トレードうつ」の可能性があります。

○なんとなく気分が晴れず、マーケットの情報を集めることや実際のトレードのやる気がおきない。

○トレードがうまくいかず、憂うつな気分を感じているときには、イライラ感が強くなり、まわりに当たり散らす。

○自分の予想と違うマーケットの動きに対して、おかしい、おかしい、絶対マーケットが間違っていると怒りを発したりする。

○新聞の株式欄やニュースを毎日見るのが好きだったのに、見てても全然おもしろくないし、逆にうっとうしさを感じる。また、読んでも読んでも頭に入ってこない時がある。

○トレード以外で外出する機会が少なくなり、自分の世界や家に引きこもるようになる。

○マーケットの動きや損失が気になって食欲が低下する。または、食べててもおいしく感じない。

○逆に、マーケットの動きや損失を紛らわすように過剰に食べてしまう。

○マーケットの動きや損失が気になり、なかなか夜、寝付けなかったり、夜中、突然、目が覚めて眠れなくなったり、朝早く目が覚めてしまい、取引時間で動いているNY株や為替をチェックし、思い悩んだりする。

○時に、株式の大暴落の夢を見て、うなされることがある。

○マーケットの動きや損失が気になり、悶々とし布団からなかなか出られない。

○睡眠をとりすぎて出勤時間やマーケットの取引時間に遅れることがある。

○日中、マーケットの取引時間や仕事中にも関わらず、眠くなって布団や机で寝てばかりいる。

○身体の動きが遅くなったり、口数が少なくなったり、声が小さくなったりする。

○焦燥感が強くなり、突然、椅子から飛び上がったり、机の物にあたったりする。

○イライラして貧乏ゆすりをしたり、身体を上下左右に落ち着きなく動かしたりする。

○パソコンの前でマーケットの動きを眺めているだけで、ひどく疲れたり、首や腰、肩がだるくなったり、凝ったりする。

○自分は下手で、トレードはむいてない、やればやるほど損失が膨らむのではと、自分を過度に責めたり、過去のトレード失敗例を何度も何度も思い出して悩んだりする。

○マーケットには悪材料しかなく、一生、下げ続けると、悲観的なものの見方しかできなくなる。

○マーケットの取引時間中に、注意が散漫になり、集中力が低下し、買おうとした銘柄、売ろうとした銘柄を俊敏にトレードすることができなくなる。

○気分が滅入り、つらくてたまらず、トレードで一か八かの賭けに出る。

○投資は二度としたくない、株のことは思い出したくもないと極端に考え、全株、何も方針なく、売ってしまう。


適切なトレードのためのメンタルマネジメント


このような「トレードうつ」を回避し、トレードで成果を出していくためには、適切なトレードのためのメンタル管理が必要です。

そのためには、己自身を知り、ストレスへの対応策としてのセルフケアの方法を身につけるとともに、トレードポジションの適切な管理手法を身につけることがとても大事だと考えます。

自分は、どのくらいのストレスに耐えられるのか、また、自分がストレスを受けた時にどのような反応をするのかを知り、自分にあったストレスを抑制、軽減、回避するためのセルフケアの方法を見つけることが大事です。

そして、一番のKEYですが、トレードポジションの適切な管理手法を身につけることが重要です。

自分のトータル資産はどのくらいで、精神的許容範囲のポジションはいくらぐらいなのか、今後のマーケットの動きをどのように想定し、そのポジションを組むことで、持っている資産はどのような動きになると予想しているのか、もし、マーケットが想定どおりに動かないとすると、どういった要因でそうなると考えるのか、その時は、組んでいるポジションはどのような損益になるのか、もし、マーケットが想定通りにいかなかったら、その後、どのようなトレードを行うのか(買うのか、売るのか、待つのか)、マーケットが思惑どおり動いたとして、保有ポジションで想定どおりの損益が上がっているのか、いないのか、違ったとしたらそれはなぜなのか、どう修正していくのか、を絶えず考え、リターン目標、ロスカット(損切り)も含め、投資行動の基本原則を持ち、日々、仮説、検証を繰り返しながら、マーケットの想定力を高めるとともに、変化への対応力を身につけていくことで、このような株価急落場面でも「トレードうつ」をうまく回避し、長期的なトレードの成果につながっていくのではないかと考えています。

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このような適切なメンタル管理を身につけることで、株価急落場面でも動揺せず、トレードを明るく、楽しく、長期的に実りのあるものにしてくれることでしょう。

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※上記のコメントは筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する会社または組織の見解ではございません。また個別銘柄の推奨、商品の投資勧誘を目的としたものではありませんのでご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

中村貴司 ファンドマネージャー

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